ヤマハ ボルト《写真撮影 雪岡直樹》

個人的な話で恐縮だが、現在の私の愛車(4輪)はV8エンジンを搭載したトヨタの『タンドラ』というフルサイズのピックアップトラック。日本では正規販売されておらず、その主要販売国はアメリカである。

アメリカといえばピックアップトラックが自動車の販売台数ナンバー1という特殊なお国柄。そんな地でトヨタは古くからピックアップトラックを作っていたし、その知名度も高かったのであるけれど、 フルサイズのV8エンジンモデルはアメリカのビッグ3に遠慮してなのか、長いこと作られていなかった。

そんな状況で投入されたタンドラは、生粋のアメ車ファンにとってなかなか認めにくい車なのかもしれない。とはいえ、個人的にどうかといえば、これが正直全然気にならない。実際本国での販売台数は、ビッグ3に対しては少ないもののなかなか健闘しており、そういった偏見が少ないように見受けられる。

違和感を覚えたのは一部のマニアックなライダーだけかもしれない
一方、バイクに関しては永らく、タンドラ的マシン… アメリカンの、特にVツインマシンを日本メーカーが作るということに、僕はなんだか違和感を覚えていたし、ボルトの発表時にもそう思った記憶がある。しかし、そう考えているのは一部のマニアックなライダーだけであって、その多くが「そんなの関係ねぇ!」と、考えているのではないか? と、自分の車が置かれている状況をみて考え直した次第だ。

そう考えると、ボルトの印象が大きく変わってくるから不思議だ。信頼性であるとか、細かい部分での操作性の高さなどはやはり国産モデルのほうが上であろうというメリットもある。車格は大きすぎることはないが、なかなかに立派で存在感をしっかり放っている。

軽量とはいえないものの、足つき性は良好なためプレッシャーは少ない。この重量感は決して嫌な類のものではなく、むしろ好ましいもの。これは各部の操作感、例えばブレーキやクラッチレバーの握り具合やアクセル開閉時の手応えも同様で、扱いにくくなるほどではないものの、軽すぎない質感というか、手応えとしてそれが存在する。

走る楽しさをしっかり作り込んできた日本製アメリカン
エンジンは空冷のVツイン。細かい構造は本家とは異なるものの、これぞアメリカンの象徴的エンジン型式である。 そしてそれは鼓動感もしっかりあり、その上でなかなかにパワフルだ。 街中で信号からの発進時ももたつくことなく、非常にトルクフル。 日本製らしく、シャープにフリクションなく吹け上がっていくといったものではなく、もっとワイルドな雰囲気で、過去にヤマハが作ってきたアメリカンモデルに対しても、らしさは上を行っている。

空冷エンジンという、環境規制等でのクリアも難しくなってきている中で、しっかりとパワフルさや味わいを演出しているのは評価出来るところだろう。ハンドリングも軽すぎず、シャープすぎない適度な重さを有しており、手応えをしっかり感じさせる。アメリカンモデルで時折感じる前後のホイールがバラバラに動いてしまうような車体剛性の低さもなく、一般的な速度であればかっちり感は損なわれることなく、狙ったラインをトレースすることが出来る。バンク角は少ないながらも、低い速度でも操っている実感を得やすく、直線オンリーでなく楽しむことが出来るだろう。スタイリングだけでなく、走る楽しさもしっかり作り込んできたところも評価出来る点である。

アフターマーケットを盛り上げて独自の世界を作り出してほしい
1点、ボルトにとって非常に残念なのはマシンを取り巻くアフターマーケット製品の少なさ。ハーレーはそれこそメーカーとともにそれを取り巻くパーツメーカーによってその存在価値をさらに高めている。ボルト登場時にちょっと盛り上がりかけたその世界の広がりが停滞しているように感じられてしまうのだが、その手を緩めないで欲しいのだ。 ボルト独自の世界を作ることが出来たとき、このマシンの評価はより正当化されると思うのである。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★
ハンドリング:★★★
扱いやすさ:★★★
快適性:★★★
オススメ度:★★★

鈴木大五郎|モーターサイクルジャーナリスト
AMAスーパーバイクや鈴鹿8耐参戦など、レース畑のバックボーンをもつモーターサイクルジャーナリスト。1998年よりテスター業を開始し、これまで数百台に渡るマシンをテスト。現在はBMWモトラッドの公認インストラクターをはじめ、様々なメーカーやイベントでスクールを行なう。スポーツライディングの基礎の習得を目指すBKライディングスクール、ダートトラックの技術をベースにスキルアップを目指すBKスライディングスクールを主宰。

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