BMW R18B《写真撮影 中野英幸》

◆カスタム界の変異種“バガー”にBMWが着手!

BMW流のBAGGER STYLE(バガースタイル)は、じつに優雅だ。ワイルドだが、流麗なフォルムの中にエレガンスがある。

バガーはその名の通りバッグが装着されるモデルを示し、大排気量エンジンを積む大陸横断ツアラーをよりスタイリッシュに仕上げ、走りも際立たせる新種のカスタム。いや、変異種と言った方がいいかもしれない。

大きな荷物を積んで、ゆったりとクルージングするためのグランドツアラーがベース。どちらかといえばベテラン向け、そうオジサマたちが長旅をするための相棒だったはずだが、エンジンをハイパフォーマンス化し、足まわりも徹底強化。


若者たちはワインディングやハイウェイを豪快に駆け抜け、ストリートでも注目を集めるようペイントやオーディオにも凝る。シンプルなスタイルを求め、誇らしげに貼られた装飾パーツやエンブレムは取り払い、ロングライドを快適にするウインドシールドもバッサリ短くカットしてしまう。

スピードを競うこととは無縁だった大陸横断ツアラーが、ハイセンスにカスタムされ、走りにもこだわるというギャップ萌えが、若者たちのハートをつかむ。本場アメリカでは「King of the Baggers」という、バガーだけで競うガチンコレースもおこなわれるほどで、いまもっとも熱心線を浴びるカスタムジャンルのひとつとなっている。

◆マーシャルなどライバルと互角以上の装備


クルーザーセグメントに進出するため、BMW史上最大となる1801ccのボクサーツインエンジンを開発し、『R18シリーズ』を投入したBMW。ビンテージムードの『R18クラシック』やグランドツアラーの『R18トランスコンチネンタル』をラインナップしたが、もっとも攻略したいジャンルが、このバガーだろう。『R18B』と、モデル名の末尾に“B”を付け、BAGGERであることを強調した。

このセグメントで人気を博すのは、言わずとしれたハーレーダビッドソンだが、なかでもバガースタイルのストリートグライドやロードグライドはとりわけ人気が高い。この牙城を崩すために『R18B』は生まれた。

ショートウインドスクリーン、マーシャル製のオーディオ、流麗なフォルム、最高出力91ps/最大トルク158Nmと強力なエンジン、充実した足まわり、ライバルと互角以上の装備内容である。

◆愛しさ感じるトルクリアクション


実車を目の当たりにすると、ドイツ・フランクフルトでの国際試乗会で乗った本国仕様の『R18B』とは、若干の違いが見つかった。日本仕様ではフットボードが前後に標準装備され、より足もとを快適にしている。エンジンの最高出力など、ほかに相違点は見当たらない。

エンジンに火が入ると、水平対向2気筒エンジンは相変わらずブルンっと大きく揺れる。縦置きフラットツインならではの挙動は伝統であり、らしさであり、乗り手に強烈なインパクトを与えられる。R18シリーズでは、これをあえて強めに押し出した。ハーレーがそうであるように、強烈な個性こそ魅力と感じるのが、このセグメントを好むユーザーなのだ。

身長175cmの筆者(青木タカオ)は地面に両足がしっかりと届き、踏ん張りが効くから取るに足りないが、小柄なライダーならば不意をつかれないよう身構える必要があるかもしれない。トルクリアクションはそれほどに大きい。もしオーナーとなれば、愛おしさを感じるに違いない。



◆力強いがジェントルで扱いやすいエンジン

2000〜4000rpmで常に150Nmものトルクを発生させる強力なエンジンだが、手強さはなくスロットル操作に従順で扱いやすい。ライディングモードは「Rain(レイン)」「Roll(ロール)」「Rock(ロック)」の3種が設定され、ロックにすればもっともパワフルだが、それでも荒ぶることはなく、潤沢なトルクを手の内でコントロールできる。

Vツインのような荒々しさはなく、ジェントルにエンジンは回っていく。回転の上昇とともにパワーが湧き出し、右手のスロットル操作に対しても、レスポンスはシャープでダイレクトだ。速度が上がってからのダッシュも力強く、高速道路でもキビキビと軽快に走ってくれる。


大型フェアリングや10.25インチものカラーTFTディスプレイがセットされているのに、ハンドリングを鈍重にしていないのは、専用のステアリング・ジオメトリーを採用したことによるところが大きい。フロントフォークをステムシャフト(操舵軸)よりライダー側に逆(ネガティブ)オフセットし、キャスター角をより寝かせてトレール量を稼いだ。低速時も切れ込みが少なく、軽い操作感を実現するとともに、安定志向の落ち着いたハンドリングとしている。

◆アメリカでも支持される理由がある


R18シリーズの最大の市場となるのは北米だ。アメリカンクルーザーと呼ばれるほどに、ハーレーダビッドソンが高いシェアを獲得している。その支持は熱狂的と言われるなか、ジャーマン流クルーザーが果たしてどのようにして受け入れられるかだが、全米からクルーザー乗りが集結するイベント「スタージスラリー」(米国サウスダコタ州2021年8月)でBMWは『R18B』を初披露。敵陣の真ん中に乗り込んで、アメリカのファンに猛アピールした。

ドイツ製品が精巧で、より高品質であることをアメリカに住む多くの人は知っている。移民大国であることは有名だが、全人口の約6分の1に当たる4600万人がドイツ系で、アイルランドやイングランド系をこえて意外にももっとも多い。また、全米平均より年収が高く、ドイツ系に成功者が多いことも知られている。

となれば、BMWにも勝機は充分にあり、好き嫌いだけで門前払いされてしまうなんてことにはならないかもしれない。そして、アメリカで人気が出れば、日本でもその影響を少なからず受けていくだろう。

手っ取り早いのはバガーレースで、ハーレーやインディアンを相手に勝ってしまうことだが、そう容易いことではない。「King of the Baggers」に『R18B』が参戦し、台風の目になれば、セールスも自ずと成功するはずだ。大きな可能性を感じるし、期待したい!



■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★★★
足着き:★★★★
オススメ度:★★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18B《写真撮影 中野英幸》 BMW R18シリーズ《写真撮影 中野英幸》 BMW R18Bと青木タカオ氏《写真撮影 中野英幸》