「仕事量が増える中で要員や設備が追いついておらず、慢性的に高い負荷が続いていた。決められた時間内に作業を仕上げることを最優先してしまった」
トヨタ自動車の直営ディーラー、トヨタモビリティ東京の関島誠一社長は不正車検が発覚し理由について、このように説明した。
検査不正が行われていたのはトヨタモビリティ東京が運営する店舗「レクサス高輪」。過去のデータで調べられる範囲では2019年6月から21年3月にかけ、検査台数の約3分の1で不正があったという。排ガスの成分やスピードメーターの精度の検査をしていなかったほか、ヘッドライトの明るさやフロントタイヤの角度の検査では、基準に満たない数値を適合するよう書き換えたそうだ。
トヨタ自動車の株主総会翌日の6月17日、国土交通省の監査で発覚。検査員4人が不正を認めたそうだ。
レクサスと言えば、トヨタの最高級車ブランド。1989年米国で産声を上げて、2005年からは国内市場にも投入された。レクサス高輪は旗艦店の第1号で、当時世界の一流ホテルのリッツカールトンの接客マナーなどを取り入れて、高級ホテルのロビーのような贅を尽くした店内で、営業マンが跪いて接客をするなど「最高のおもてなし」の顧客満足度をアピールしてきた。豊田章男社長もレクサスの改革には強い関心を寄せており、2013年には社長自らチーフブランディングオフィサーに就任したほどである。
トヨタには全国で258販社、約4600のサービス拠点を構えているが、レクサス高輪は、その模範となるべく代表的な店舗。その店で仕事量が増えたとはいえ、人員を増やすことや検査設備への投資を抑えて、しかも現場の不正を見抜けなかったのか、それとも店舗ぐるみの不正行為だったのかは定かではないが、親会社のトヨタや販社の経営責任を問われるのは必至だろう。
ちなみに、きょうの各紙もレクサス高輪の車検不正を報じているが、朝日が「スピード優先、作業省く」とのタイトルで経済面のトップと社会面に書き分けていたが、日経など他紙は社会面や経済面に地味な掲載となっている。3月には系列の独立資本のネッツトヨタ愛知でも不正が表面化したばかりだった。
それにしても、日産自動車やスバル、三菱自動車、スズキなどでも出荷前検査不正や燃費データの改ざんなどが相次いで発覚した中で、顧客の「安全・安心」をモットーにトヨタはある意味で蚊帳の外で静観していた“優等生”のはずだったのだが……。
2021年7月21日付
●ホンダ鈴鹿工場停止へ、コロナ影響か、部品調達滞る、来月5日間 (読売・2面)
●レクサス店車検不正、高輪565台検査未実施など (読売・7面)
●五輪交通規制生活しわ寄せ、配送・患者搬送に遅れ (朝日・2面)
●五輪開会式「欠席」相次ぐ、スポンサー企業・経団連会長も (朝日・6面)
●トヨタCM中止の余波警戒、スポンサー企業、宣伝戦略影響(産経・3面)
「安全・安心」のトヨタ、ブランド失墜---レクサス旗艦店で車検不正[新聞ウォッチ]
2021年07月21日(水) 08時57分
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