アウディ S3スポーツバック 新型《写真撮影 中野英幸》

アウディ『S3スポーツバック』は2リットル直列4気筒直噴ガソリンターボチャージドエンジンを搭載し、最大出力は310ps、最大トルクは400Nmの非常にハイパワーな仕様となっており、尚且つ「クワトロシステム(四輪駆動)」を搭載しているスポーティーなモデルだ。

さらに別格のハイパワーモデル『RS3』の登場も予定されているが、現時点で手に入る中で一番スポーティーなモデルがS3スポーツバックとなっている。

◆3気筒はもちろん4気筒とも違うエンジンサウンド


2リットル直列4気筒直噴ガソリンターボチャージドエンジンに、7速Sトロニックのツインクラッチトランスミッションが連結されていて、クワトロシステムとなっている。『A3』の1リットル(999cc)仕様と違いマイルドハイブリッド化されていないので、ガソリンエンジン(ICE)仕様ということになる。

エンジンは、最大トルクが幅広いレンジで発揮されていることからドライバビリティーが非常に優れている。

走り始めると、すぐに車速が上がり加速感がスムーズで力強くどこまでも伸びていくような高性能な走行フィールを与えてくれる。かといって、FF車(前輪駆動)のようにトルクステアが出たり駆動輪が空転してしまうような事はなく、クワトロシステムの良さがきっちりと生かされ、有り余るパワーを充分路面に伝えることができている。


電子制御で積極的にヨーコントロールするような装置は付いていないが、片側のブレーキを掴み安定性やライントレース性を高めたりというような制御が盛り込まれている。

加速した際にエンジンサウンドが3気筒と全く違う音なのはもちろんだが、かといって4気筒ともまた違うような音色だった。サウンドが作り込まれていて、良い音をドライバーに聞かせるような上手い工夫がされている。振動ももちろん少なく、まろやかな回転フィールになっていると言える。

◆ドライブセレクトで大きく変わる味


エアコンスイッチの下、助手席側の「drive select」スイッチ、またはセンターディスプレイの中の「車両」というアイコンを選択すると、オートドライブセレクト画面が現れ「エフィシエンシー」「コンフォート」「オート」「ダイナミック」「インディビデュアル」の5つのモードを選択できるようになっていた。

普段乗りでは常に最適な制御をしてくれる万能な「オート」に設定しておくのが良いだろう。「ダイナミック」を選択すると、センターディスプレイにサーキットをイメージしたようなイラスト画面が現れてエンジンサウンドも変わる。おそらくエンジン特性、マップ制御、トランスミッションの変速制御、排気音の制御や音質と音色の変更等がされているのだろう。RSモデルの5気筒エンジンのような、迫力があり音色も非常に良いものに切り替わった。


「コンフォート」を選択すると、早めにシフトアップをしてサスペンションも「ダンピングコントロール」により路面の凹凸を吸収するしなやかなダンパーに変更され、逆に「ダイナミック」を選択すると、ダンパーが硬くなった乗り心地となる。

タイヤはブリヂストンの「19インチ S005」というメーカー指定のものが装着されていた。シリーズの中では最もインチの大きなタイヤホイールの設定となっている。

最小回転半数は5.1mとなっていて、1リットル仕様のFFモデルと全く同じだ。4気筒になり、タイヤサイズがアップしても取り回し性が非常に良いという事を数値が証明している。

◆燃料タンク容量はA3より大きく56リットル


内装面は、1リットル仕様のA3(A3スポーツバック/A3スポーツバック advanced/A3スポーツバック S-line)とは質感が違う。例えばステッチをあしらい高級感を出しているダッシュボードパネルや、アルカンターラでダイヤモンドステッチが施されているサポート性の良い電動パワーシートの装備、レザーにピンホールの装飾が施されたスポーティー性のある高級なステアリングホイールが採用されていたりする。

リアシートの広さは1リットル仕様モデルと変わっていない。ハイパワーになったから足元が狭くなってしまうというような事もなく、広い空間が保たれていた。

燃料タンクは、1リットル仕様モデルは47リットル入るものを採用しているのに対し、S3スポーツバックでは56リットルのタンク容量を確保している。クワトロシステムでリアのデファレンシャルやプロペラシャフトもあり条件はきついはずで、それなら1リットル仕様モデルにも56リットル容量の燃料タンクが装着できるはず。逆に2リットルでクワトロモデルとなっても燃料タンクが小さくなってしまうネガティブ要素はない。

◆イメージ通りの強力な走りが最大の特徴であり、魅力


今回の試乗車は「ファーストエディション」というパッケージオプションが付いていて、価格は711万円だった。

車体重量は1560kgあり、オプションのサンルーフを装着するとさらに約20〜30kg重くなるので全体としては約1600kgほどの重量になる。

S3スポーツバックはスタイリング的に洗練されていて、セダンシリーズとは一線を隠すデザイン性が魅力だ。さらに細部のディテールがリファインされていて、スポーティな佇まいと存在感を示す。その外観の発するイメージ通りの強力な走りがS3スポーツバックの最大の特徴であり、魅力なのだ。



■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

中谷明彦|レース&テストドライバー/自動車関連コンサルタント
大学在学中よりレーサー/モータージャーナリストとして活動。1988年全日本F3選手権覇者となるなど国内外で活躍。1997年よりドライビング理論研究会「中谷塾」を開設、2009年より東京大学と自動車新技術の共同研究に取組む。自動車関連の開発、イベント運営など様々な分野でのコンサルタントも行っている。

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