
ドゥカティ=Lツインなどと思っていたらもう古い。それだけではなく、ドゥカティ=トレリスフレームも同様。なにしろ、この『ストリートファイターV4(およびV4S)』は、ネーミングからわかるようにV4エンジンを搭載しているのだ。
◆パニガーレV4をベースとしたネイキッドマシン「ストリートファイターV4」
これはモトGPマシン直系。そして市販車ベースで争われるスーパーバイク選手権での戦闘機、『パニガーレV4』をベースとしている。そして、ベースとしているのはエンジンだけではない。ストリートファイターはドゥカティフラッグシップのパッケージングをベースとしたネイキッドマシンとして登場。アグレッシブなのはスタイリングのみならず、その走りも同様。それはベースとなったマシンと比較しても過激なものとなっていた。
V4エンジンを搭載して復活したストリートファイターは、当時のマシンと比較しても圧倒的にパワフル。かなりのじゃじゃ馬になっているのでは?と想像された。
◆アクセルを回せば一直線に吹き上がる怒涛の加速
エンジンを始動すると、なかなかに迫力あるサウンドが緊張感をより高める。しかし、その予測は良い意味で裏切られた。まず、意外な乗り心地の良さに驚かされる。シートの座り心地は悪くなく、サスペンションの突き上げ感も少ない。トルクは十分で低回転域ではツインっぽさも感じさせる。そしてむしろパワフル過ぎない低回転域はLツインよりも扱いやすいほどでもある。
そこからはフラットにと言って良いのか、一直線に吹け上がる怒涛の加速が待っている。フロント周りに装着されたウィングは飾りではなく、しっかりダウンフォースを発生するとのこと。しかし、それが実際に効果を発揮しているのか判断できないほど加速力が上回っていて、本当に離陸しそうなパワフルさである。
◆100馬力リミット設定でフレンドリーな乗り心地
そこで使えるのがライディングモードなのであるが、そのなかに隠れモードとして100馬力リミット設定が存在する。いくら自制心がある人であっても、このパワフルさをコントロールするのはなかなかに難しい。そんななかでの100馬力リミット設定は、いきなりハードルが低くなってフレンドリーさを感じるのである。
しかも、使い切らないでコントロールするよりも、使い切って走らせるほうが面白いと感じる場面は少なくないだろう。もちろん、慣れてきたらフルパワーを開放…恐ろしいほどのパワフルさで、ちょっとこれはストリートで使い切れるようなパワーではないのであるけれども、そんなモンスター具合を味わえるのもこのマシンの魅力となっている。
◆行き過ぎたハンドリングは影を潜めて懐の深いマシンに仕上がった
ハンドリングは軽快でクイックながら、行き過ぎた鋭さは影を潜めている。伝統的トレリスフレームではなく、パニガーレ由来のフロントフレームはむしろしなやかであり、恐れていたシビアさは感じられない。
オーリンズ製は動きのしなやかさはもちろんのこと、設定自体がハード過ぎず。また、これも電子制御によるセミアクティブサスペンションによって、最適化されるのもマシンの印象を大きく変えることを可能としている。
いつでもアグレッシブな気にさせた過去のストリートファイターと違い、じつに懐の深いマシンに仕上がっていたのだ。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
ハンドリング:★★★★
扱いやすさ:★★★
快適性:★★★
オススメ度:★★★★
鈴木大五郎|モーターサイクルジャーナリスト
AMAスーパーバイクや鈴鹿8耐参戦など、レース畑のバックボーンをもつモーターサイクルジャーナリスト。1998年よりテスター業を開始し、これまで数百台に渡るマシンをテスト。現在はBMWモトラッドの公認インストラクターをはじめ、様々なメーカーやイベントでスクールを行なう。スポーツライディングの基礎の習得を目指すBKライディングスクール、ダートトラックの技術をベースにスキルアップを目指すBKスライディングスクールを主宰。




















