トヨタ自動車のジェームス・カフナー執行役員は5月12日に行った2021年3月期連結決算の会見の第2部で、同社のカーボンニュートラルについて説明。「トヨタの技術革新の歴史はカーボンニュートラルへの歩みだった」と強調した。
というのも、トヨタは30年以上にわたりCO2排出量を削減し、カーボンニュートラルを実現するための技術革新と投資を行ってきたからだ。例えば、1996年に初の電気自動車(EV)となる『RAV4 EV』を開発して市場投入した。ただ、このEVは航続距離の短さや充電インフラ不足などの理由で、一般ユーザーには受け入れられなかった。
そして97年、ガソリンエンジンとモーターを搭載した、世界初の量産型ハイブリッド車(HV)の『プリウス』を発売。しかも、知名度向上と環境を考慮して、赤字覚悟の価格で販売した。おかげでプリウスはベストセラーカーになり、その後、次々にHVを他の車種にも展開していった。
ところが、そのHVをトヨタは「電動車両」と強調せず、「HV」とだけ言い続けてきた結果、一般のユーザーなどからは「トヨタはクルマの電動化に遅れている」と見られることが多くなってしまった。そのため、トヨタの記者会見では「EVなどの電動車両で他社に後れをとっているのではないか」といった質問がよく飛んでいた。
これには、いち早くHVを世の中に出し、電動車両に力を入れてきたトヨタにとっては納得がいかないことだった。そこで、事あるごとにトヨタ車の電動化について説明会を開催し、「トヨタは電動車両に後れていなく、むしろ業界をリードしている」と強調。しかし、一度ついたイメージはなかなか払拭できないものだ。
今回の説明会では「HV」を初めて「HEV」と表記。合わせて電気自動車を「EV」から「BEV」、プラグインハイブリッド車を「PHV」から「PHEV」、燃料電池車を「FCV」から「FCEV」へと変更した。“EV”とついていれば、電動車両と認識してくれる人が増えるということなのだろう。
トヨタは現在、グローバルでHEV、BEV、PHEV、FCEVの電動車両を55モデル販売し、年間販売台数は200万台を超えている。カフナー執行役員によれば、この20年以上の期間で、累計約1億4000万トンのCO2排出量を削減した計算になるという。今後も電動車両のラインナップをさらに充実させる計画で、例えばBEVについては、2025年までに先日発表した『bZ』シリーズの7モデルを含む15モデルをグローバルに投入する。
また、現在世界中で走っている14億台以上のエンジン車についても、カーボンニュートラル実現のための研究開発を行っている。その1つの解決策が水素燃料で、クリーン燃料としてエンジン車にも使えるという。
「自動車業界におけるカーボンニュートラルとは、自動車の『製造』『輸送』『走行』『充電・給油』『廃棄・リサイクル』など、そのライフサイクルの全てのプロセスにおいて、CO2排出量を実質ゼロにすることだ」とカフナー執行役員は強調していた。
「トヨタの技術革新の歴史はカーボンニュートラルへの歩みだった」…ジェームス・カフナー執行役員
2021年05月13日(木) 10時45分
関連ニュース
- 金融庁、トヨタ自動車子会社の「トヨタモビリティ東京」にも立ち入り検査[新聞ウォッチ] (10月23日 08時49分)
- トヨタ自動車、水素で走る燃料電池バスに、六価クロムなどの環境負荷物質を使用[新聞ウォッチ] (10月01日 07時45分)
- トヨタ自動車が型式指定申請について不適切な事案…カローラフィールダーなど7車種 (06月03日 15時20分)
- 自動車業界にカーボンニュートラル燃料導入・普及へ…出光興産、ENEOS、トヨタ自動車、三菱重工が共同で取り組み (05月28日 14時07分)