プジョー 5008 GT BlueHDi《写真撮影 渡邊伊緒菜》

プジョーのSUVシリーズの中ではハイエンドにカテゴライズされている『5008 GT BlueHDi』に試乗した。

同社のSUVシリーズでは『3008』の販売が非常に好調で55%ほどのシェアがあるとの事だが、5008も約45%と高いシェアを誇っており、2台柱となって今のプジョーを支えているという。

◆国産車同等のディーゼル燃費性能

5008の外見的な特徴は、最近のプジョーのデザイントレンドに則りファッション性が高く、市街地ユースでお洒落にマッチするデザインとなっている。ラジエーターグリルやヘッドランプ周り、ボディサイド、ルーフなど細かなところにまで凝った作り込みをしている。

エンジンは2リットル直4のディーゼルターボエンジンで、トランスミッションにはアイシン製の8速オートマチックを搭載。日本ではディーゼル燃料(軽油)の価格が安いこともあってディーゼル車が選ばれる比率が非常に高い。プジョーもディーゼルエンジン搭載車を日本のマーケットに投入したことによって大きくシェアを伸ばすことができたといえるだろう。


ディーゼルエンジンなので燃費に優れていて、WLTCモードで16.6km、市街地モードで13.8km。日常的には13.8〜15km/リットルくらいが実用燃費になると思われる。高速道路モードでは18.4kmということで国産の2リットルディーゼルエンジン車と同等の燃費性能となっている。

ドライブモードは「ノーマル」「エコ」「スポーツ」が選択でき、「スポーツ」にすると液晶メーターパネルにタコメーターが表示される。またプジョーが誇るアドバンスドグリップコントロールで「ノーマル」「サンド」「マッド」「スノー」と路面に応じたトラクション性能を選択可能だ。

車両重量が約1700kgあり、7人乗ると総重量としては2トンを超えてくる。ディーゼルターボエンジンで2000回転という低回転域から400Nmという最大トルクが引き出せるこの車の場合は電動モーターほどではないにしても非常に優れたドライバビリティーがあると言える。

燃料タンクは56リットル入るので、総航続距離は満タンで約800kmほどを日常的に走行できるだろう。

◆高級感あるインテリア、操作性も良し


コクピットのインパネデザインはやはりプジョーのトレンドに則っていて、全体的にソフトパッドで覆われ高級感と質感が高い仕上がりになっている。スイッチまわりも物理的なスイッチがメタリック塗装されていて見栄えも良く、また操作性もいいようにレイアウトされている。

プジョー独特の変形楕円ハンドルは小径のものが採用されていて、ステアリングの上からメーターを覗くタイプだ。『208』や『2008』などの小型車だとドライビングポジションによっては非常に見にくいメーター配置なのだが、5008ぐらいの大きさの車になると全体的に配置関係にスペースがとられているのでステアリングの上からでも見ることができる。

特にシート位置を高めにアジャストして運転する方にとってはこのメーター配置だと見やすいが、僕のようにシートポジションを下げてスポーティーなドライビングポジションを取ろうとするとステアリング上部が干渉して見にくかったりするため、どちらかというとビギナーや女性向けのメーター配置といえなくもない。

フロントシートにはシートヒーターがついていて運転席側は電動アジャストシートが採用されている。シート生地がバックスキンとレザーの合皮でステッチが編み込まれているので、高級感があって見栄えも良い。シートのサイドサポートも良い形状で、座面はやや固めで座り心地としてもサポート性も含めて悪くない。ドアやダッシュボードの一部の内装材にバックスキン調でグレーの個性的な配色がしてあり手触り的にも非常に良い。

5008は、3008の1サイズ大きな車になっている。特徴としては3列シート7人乗りになっているというところであり、3列目は折りたたみ式で通常はラゲッジスペースとして活用でき、非常に簡単な操作で3列シートにすることができる。



◆お買い得感ある輸入車と言える

今回試乗したモデルは、車両本体価格500万円〜となっていて、パノラミックサンルーフ、ナビゲーションシステムのオプションを装備した548万円のものだった。輸入車の中では高いとは言えなく、どちらかと言うとお買い得感が強いだろう。

ADAS(先進運転支援システム)も大分充実してきたようで、アクティブセーフティブレーキ(被害軽減ブレーキ)やストップ&ゴー機能付アクティブクルーズコントロール等も装備され、最先端の装備面を誇れるようになっている。

アイスバーンや悪路でも、ドライバーはブレーキペダルから足を離し車が制御しながら微低速で滑りやすい路面を降りてくることができる、SUVらしい「ヒルディセントコントロール」機能も備えている。

◆プジョーの美点が生かされた前輪駆動のSUV


運転した感想を述べると、FF(前輪駆動)なのでリアの接地感は若干足りないが、前輪の駆動力コントロールを細く行うことでSUVとしての走破性を確保している。最低地上高が175mmあるので、悪路でも車体の底を打つことなく走破できるだろう。

ただ、そこを過信して極悪路的なところに踏み込んでしまうと脱出不可能になってしまう。二輪駆動としての限界があることを忘れてはいけない。日常生活で、かつ市街地優先で走行し、たまに雪道等を走るといったような使い勝手の範囲だったらトラクション性能は十分に機能するだろう。

ステアリングは電動パワーステアリングでセンター付近の手応えが少し曖昧に感じられた。本来四輪駆動であれば、がっちりとした直進安定性が得られるのだが、フランス車の常で少しダルで曖昧な感覚を残している。ただハンドルを切り込んでいった時のライントレース性は正確で、ドイツ車並みのライントレース性を備えているので不安なくコーナリングすることができる。

乗り心地自体も決して固くなく、2トン近くある総重量を支えるサスペンション/バネを採用しているのだが、決してゴツゴツとした跳ねる感覚ではなく、比較的しなやかに路面を捉えることができていると言える。フランス車、特にプジョーの美点が生かされているのだ。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

中谷明彦|レース&テストドライバー/自動車関連コンサルタント
大学在学中よりレーサー/モータージャーナリストとして活動。1988年全日本F3選手権覇者となるなど国内外で活躍。1997年よりドライビング理論研究会「中谷塾」を開設、2009年より東京大学と自動車新技術の共同研究に取組む。自動車関連の開発、イベント運営など様々な分野でのコンサルタントも行っている。

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