レクサスのEVコンセプト『LF-Z』《Photo by Lexus International》

自動車メーカーは定期的に、自社の中長期的な戦略やロードマップやプロダクトストラテジーを発表する。その目的は投資家へのアピールだったりライバルメーカーへの牽制だったり顧客に対するブランドへの信頼強化だったりする。

ほんの数年前までは「SUV」がひとつのキーワードになっていて、SUVラインナップの拡充や市場占有率の拡大といった内容に溢れていた。ところが去年辺りからSUVが別の言葉に置き換えられるようになった。「EV」と「電動化」である。

◆日本メーカーは大丈夫か?レクサスの将来ビジョン その中身とは

フォルクスワーゲンは「2030年までに欧州で販売するモデルの70%を電気自動車にする」、ジャガーは「2025年からEVブランド化」、ボルボは「2030年までにEVブランド化」、GMは「2035年までにすべての新車をゼロエミッション化」などと表明、BMWは「EVに特化した“i”というサブブランドの再構築」を発表し、メルセデスベンツはサブブランドの“EQ”への商品展開を積極的に始めている。彼らは、それが本当に実現できるのかどうかはともかく、大風呂敷を広げて大々的にプレゼンすることに長けている。

ひるがえって日本の自動車メーカーは良くも悪くも真面目で慎重だから、実現できるかどうかわからないことは発表しない(できない)ので、そういう欧州メーカーのアクティブなニュースを次々と見せられる日本人は、だから「日本車は電動化で遅れている」「日本メーカーは大丈夫か?」とちょっと不安になってしまうのだろう。

そんな折り、いよいよというかようやくというか、レクサスが「ブランド変革に向けた取り組み」と称して将来のビジョンを発表した。2025年までのプロダクトポートフォリオ、EVのコンセプトカー、そしてプロダクトの企画と開発を加速させるべく開設する新しい事業拠点についてである。

◆レクサスの変革 ターニングポイントは2025年と2050年

レクサスのスタートは1998年、そして2005年には『RX400h』を発売し、ここがレクサスの電動化への起点だった。現在は世界約90の国と地域で9車種のハイブリッド車やEVを販売、2020年末時点での累計販売台数は約193万台に達している。2025年までに10以上の「EV」「PHV」「ハイブリッド」などの電動車を含む約20車種のニューモデルや改良モデルを投入し、これらの車種は世界各国や地域のニーズに応じて適時、適材適所に展開されていく予定である。

また同じく2025年には全車種に電動車を設定、販売比率がガソリンエンジン車よりも電動車が上回るような戦略にもなっているそうだ。さらに2050年には、すべての車種の材料/部品/車両製造、物流、走行、廃棄、リサイクルの各段階を含めたライフサイクル全体でのカーボンニュートラル実現へ向けた準備を進めていくという。

いっぽうで、個人的にも興味深いのは「クルマを操る楽しさを提供し続けるスポーツモデル」「新しいショーファーの在り方」「これまでにない新ジャンルのモデル」などの可能性を探りつつ、市場の期待を超える新しい価値の提供もしていくというアナウンスである。電動化によってクルマがつまらなくなるというイメージを払拭するようなモデルが登場するならこれはなかなか面白い。

その一例がこの度お披露目となった『LF-Z』なのかもしれない。このクルマは「2025年までに実現を見据えた走りやデザイン、先進技術を織り込んだブランドの変革を象徴するEVコンセプトカー」だそうで、まったく新しいEV専用のプラットフォームを有している。

全長4880mm、全幅1960mm、全高1600mm、ホイールベース2950mmで車重は2100kg。90kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し航続距離は600km(WLTP値)。モーターは前後にそれぞれひとつずつ配置され前輪と後輪を駆動。最高出力400kW(544ps)、最大トルク700Nmというシステムパワーを発生し、最高速は200km/h、0-100km/hは3.0秒の動力性能を発揮する想定となっている。

スタイリングや装備に目新しさはあまり感じられないものの、「DIRECT4」と呼ばれる可変駆動形式(状況に応じてFF/FR/AWDを切り替える)の4輪制御技術やステアバイワイヤの採用などは、レクサスの乗り味にどのような変化をもたらすのかがとても気になる。

◆2024年3月、レクサスのあらたな事業拠点が誕生する

愛知県は「豊田・岡崎地区研究開発施設用地造成事業」というものを進めていて、これが2019年4月から一部の施設の運用が開始されている「Toyota Technical Center Shimoyama(TTCS)」である。レクサスは2024年3月にあらたな事業拠点をここに構えるという。

LEXUS棟と呼ばれる建屋は1階がガレージ、2階がオフィス、3階がデザインエリアとなり、クルマ作りのさまざまを1箇所に集中させることにより、情報共有や開発のスピードアップを図る狙いがある。すでに使用されている全長約5.3kmのカントリー路や現在造成中の高速周回路などテストコースも併設されるので、"走らせては直す"を繰り返すことでクルマと人を鍛えていくそうだ。

当然のことながらTTCSはレクサス専用の施設ではなく、トヨタやGRの車両開発にも使われる。今回はレクサスに関するロードマップの発表だったが、レクサスのブランドバリューを明確化するということは、今後トヨタやGRのブランド変革も進むものと予想される。

メルセデス・ベンツが「メルセデス」「AMG」「EQ」を、BMWが「BMW」「M」「i」を展開しているように、おそらくトヨタも「トヨタ」「GR」「レクサス」の3本柱の構築を狙っているに違いない。

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