海外で人気のスポーツバイク、ヤマハMT-07(左)とMT-09(右)《写真撮影 宮崎壮人》

ヤマハ発動機の日高祥博社長(“高”ははしごだか)は14日、静岡・磐田市にある本社で報道各社のグループインタビューに応じ、政府が2035年までにガソリン車を廃止することを目指す方針を受け、ヤマハのバイクの全電動化は「技術的には可能」との見解を示した。一方で「それを顧客が欲しいかは別問題」とした。

「電動化は技術的にできないわけではない。だが、ユーザー視点を無視するわけにはいかない」

ヤマハのバイクは、グローバルで見れば趣味性が高く比較的高価格帯のプレミアムバイクとして人気を博している。速さやパワーなど走る楽しさを兼ね備えたプレミアムセグメントを電動化(EV化)することは技術的には可能だが、バッテリーを搭載することで車体が重くなり、さらに価格帯も200〜300万円台に上がるとことは避けられないという。これではユーザーにとって「ハードルが高い」(日高社長)。

現実的な電動化の解としては「原付のような日々の領域。電動の趣味材というのはお客さんにとってまだなかなかハードルが高い。コミューターの領域ならば、毎日1回充電すればその日のうちの通勤・通学には十分。趣味材のような大きなものでなければ、コストも下げられる」と話す。

ヤマハは2018年12月に、「ヤマハ発動機グループ環境計画2050」として、バイクやその他製品使用時のCO2排出量、生産や物流におけるCO2排出量を2050年までに2010年比で50%削減を目指すことを発表している。しかしヨーロッパをはじめ世界各国でモビリティのCO2および排ガス規制は年々厳しくなっており、2030年をめどとしたガソリン車の販売廃止に向けたビジョンはグローバルスタンダードと化しつつあることから、計画の前倒しが迫られる可能性がある。

「間違いなく規制(の強化)は早まる。これまではヨーロッパを見ながらだったが、世界で同じ時間軸で対応していかなければならない。来年(2021年)の早い段階で見直す。相当、見直し、前倒しをしていかなければ」と日高社長は危機感を示した。

ヤマハ発動機の日高祥博社長(“高”ははしごだか)《写真撮影 宮崎壮人》 生産終了となったヤマハセロー (左)と、今年発売したテネレ700《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハのスポーツバイク(ヤマハコミュニケーションプラザ)《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハの電動スクーター、E-Vino(イービーノ)《写真撮影 宮崎壮人》