カワサキ Ninja650《写真撮影 ダン・アオキ》

16歳の誕生日とともに原付免許を取り、紆余曲折を経て、アラフィフで2輪に再々入門。そんな浦島ライダーが最新バイクをチェックしていきます。今回は、カワサキのミドルクラスに“若手”スタッフと乗ってみました。

◆「Ninja650 KRT Edition」をレビュー


「250ccモデルに4気筒が復活!」と、2020年のバイク好きの話題を独占した感のあるカワサキ『Ninja ZX-25R』。めでたいことです。が、その価格82万5000円からと聞いて、「650、買えるじゃん!?」と思った人がいるかもしれません。

Ninjaシリーズの中堅、Ninja650は、649cc並列2気筒エンジンを搭載して、88万円から。もちろん大型二輪免許が必要ですが、単純比較では、両者の差はわずか5万5000円。これは改めてチェックしてみたいところです。注目のマルチクォーター試乗に先立ち(!?)、『レスポンス』編集部のカマタ青年と、カワサキのミドルツインに乗ってみました。

今回お借りしたのは、レースマシンのカラーリングを模した「Ninja650 KRT Edition」。90万2000円。650は2020年モデルから顔つきが変わり、他のNinja一族と合わせた逆スラントのノーズとなりました。ヘッドランプがLED化され、カラー液晶のメーターも変更されています。ABSは当然として、ETC2.0標準装備が地味にウレシイ。

◆ユーザーに優しいNinjaシリーズ


ユーザーに優しいNinjaシリーズだけに、650のシート高は790mmと、足付きに不安はなし。フルカウルにセパレートハンドルと一見アグレッシブな外観だけれど、セパハンは根本からグッと持ち上げられているので、グリップ位置は意外と高い。ライダー上半身の前傾は穏やかで、スポーティながらリラックスできるポジション。さすがは長年ツアラーを手がけてきたカワサキのミドルクラスです。

実車を前にしたカマタ青年は、新しいフェイスにやや懐疑的。「650なのに、250や400と同じルックスというのはどうなんでしょう?」。うーん、たしかに。せっかくの大型二輪なのだから、普通二輪とは「もっとハッキリ差別化してほしい」と感じるユーザーもいることでしょう。

Ninja250と400のような姉妹車というわけではないけれど、パッと見、路上で違いがわかりにくい。メーカーとしては、Ninjaファミリーのイメージを統一してシリーズ全体の存在感を高めたいところですが、一方、個々のモデルの区別がつきにくくなる弊害もある。痛し痒しの、諸刃の剣です。

◆穏やかにスポーティ


Ninja650のシートに跨って走り始めると、穏やかにスポーティで、いいバイクですね。尖ったところがないキャラを「趣味性が低い」と取ることもできるけれど、本気で使い倒したい人には、きっとこのバランスのよさが好ましい。

「一見、レーシィなスタイルですが、ポジションはキツくない。ロングツーリングに行きたくなります」とカマタ青年。「総体的に扱いやすいですね。Uターンがラク。ハンドルが軽い。エンジンは低回転域から力強く感じました」

Ninja650のパラレルツインは、649ccの排気量から、68ps/8000rpmの最高出力と、63Nm/6700rpmの最大トルクを発生。6速のギアボックスは、フェイスリフト前からアシスト&スリッパークラッチを備えています。クラッチ操作が軽くなるし、ちょっと「スポーツしたい」ときには、シフトダウン時の若干の回転差を許容してくれるから、スポーティなツーリングバイクたるNinja650には、まさにピッタリの装備。

スティールのトレリスフレームに吊るされる並列2気筒は、カワサキのミドルクラスがNinja650として日本に導入される前から、海外で用いられてきたユニット。改良を重ね、最新の排ガス規制「EURO5」にも対応しています。デッドスムーズでない、パルス感とともにトルクが湧き出る頼もしいエンジンで、街なかでは3000rpmも回しておけば実用十分。乗り手をせかさない実直さが、またバイクの性格に似合います。

◆Ninja650の持つ万能性は、諸刃の剣


足まわりは柔らかめで、優しい乗り心地。ことさら回さないでも力強い動力系と併せ、ツーリング時の疲労を抑えてくれる。そのうえ、乗り手がヤル気を出したときには、わかりやすい挙動でカーブを楽しませる“ちょうどいい”設定です。

改めて「いいバイクだなァ」と感心して、カマタ青年に、「個人的に欲しい?」と能のない質問を投げかけると、「もうすこしツーリングならツーリング、スポーツならスポーツに振り切っていればいいのですが……」と言葉を濁す。アララ。

ここに日本市場の難しさがありますね。メインマーケットたる欧州では、Ninja650は実用性重視のミドルクラスですが、東洋の島国では、大型二輪は趣味性と直結する。Ninja650の持つ万能性は、これまた諸刃の剣なのでした。

カワサキ Ninja650《写真撮影 ダン・アオキ》 カワサキ Ninja650《写真撮影 ダン・アオキ》 カワサキ Ninja650《写真撮影 ダン・アオキ》 カワサキ Ninja650《写真撮影 ダン・アオキ》 カワサキ Ninja650《写真撮影 ダン・アオキ》 カワサキ Ninja650《写真撮影 ダン・アオキ》 カワサキ Ninja650《写真撮影 ダン・アオキ》 カワサキ Ninja650《写真撮影 ダン・アオキ》 カワサキ Ninja650《写真撮影 ダン・アオキ》 カワサキ Ninja650《写真撮影 ダン・アオキ》 カワサキ Ninja650《写真撮影 ダン・アオキ》 カワサキ Ninja650《写真撮影 ダン・アオキ》