ホンダ フォルツァ《写真撮影 中野英幸》

◆若者のビグスクから、ビジネスマンの足へ

かつてヤマハ『マジェスティ」と、250ccビッグスクーター市場で激しい覇権争いを演じたホンダ『フォルツァ』。最新型はすっかり洗練されて、“大人向け”といった印象に様変わりしている。

特にスクーター初となる「Honda セレクタブル トルクコントロール(HSTC)」の搭載は見逃せない。ビッグスクーターはスタイル優先だったが、先進的な電子制御を搭載し、走りのポテンシャルを格段に向上しているのだ。

スタイル優先とあえて書いたが、かつてのビグスクはより低く長い“ロー&ロング”のスタイルがキモであった。最新モデルでは機敏に扱えるサイズ感を表現した“AGILE & CLASSY”が、スタイリングのテーマとして掲げられている。走りの良さが一目で分かるよう“台形”でバランスさせ、上質感もたっぷりと漂わす。

若者の間で流行ったビグスクも、今やターゲットは都会のビジネスマンへと移り変わったのだ。


長距離移動も安心を感じさせる、頼りがいのあるフロントマスク。ヘッドライトやポジションランプを含む全灯LED式とし、俊敏さと高い質感が演出された。昔はボリューミーだったリアまわりも、ダイナミックに後方へ抜けるデザインとして軽快感を表現。メーターはアナログ2連式を採用し、機能美を感じさせる。インナーパーツも含め、先進的で高品質なデザインとした。

◆空力性能向上でハイスピードレンジも快適!


街乗り重視だった一昔前のビグスクと比較すると、ライディング性能が飛躍的に向上していることが乗るとわかる。CAE解析によって各部のパイプ径や肉厚、材質を選定し、接合位置を最適化した軽量・高剛性フレームに、フロント15/リア14インチの足まわりをセット。街中から郊外まで、軽快に安心して走れるハンドリングを実現している。ホイールベースは先代モデルから35mm短縮され、車両重量も約5%軽量化。フレーム単体では約20%の軽量化を達成した。

高速道路も快適なのは、空力性能を追求したエアロダイナミクスが大きく貢献している。電動式可動スクリーンをハイポジションに設定すると、気流が乗り手の頭上を通過するよう整流し、走行時の風切り音も低減。風の巻き込みを抑制し、疲労感を少なくした。


水冷SOHC4バルブ単気筒エンジンは発進加速が鋭く、実用域となる6000rpmまでフラットにつながるトルク特性。低中速域での扱いやすさが際立つとともに、タンデムでも余裕の動力性能を発揮する。

低フリクション技術をエンジン各部に採用しつつ、ピストン運動で発生するフリクションをさらに低減するオフセットシリンダーによって、WMTCモード値33.3km/リットルという優れた燃費性能を実現。また、快適性を高めるためエンジンの静粛性を追求し、従来はニードルベアリングを使用していたミッション中間軸の保持を新たにボールベアリングにするなど、より静かで滑らかな走行となった。

マフラーは最新の排出ガス規制に対応しながらも、各部の薄肉化により従来比約15%の軽量化を達成。ダイナミックに跳ね上がったリアボディの流れに沿った軽快なデザインもいい。



◆スマートで安全な都会の移動に

コンパクトな車体ながらも効率的なレイアウトで、燃料タンク容量11リットルを確保。開発チームは片道30kmで5日間の通勤を想定し、1週間の走行に必要十分な航続距離とした。

低いほど良しとされていたシート高は780mmで、走りとのバランスを考え最適化。スリムなシートで、足を地面に出しやすくしている。シート下トランクもフルフェイスヘルメットが2個が収まり、容量は充分と言っていい。


スクーター初の「Honda セレクタブル トルク コントロール(HSTC)」は、スリップしやすい路面での安心感を与えてくれる。前後ホイールの車輪速センサーにより後輪のスリップ率が算出され、状況に応じて燃料噴射にてエンジントルクを制御し、駆動輪のスリップを制御。システムが作動すると、メーター内のHSTCインジケーターの点滅によって知らせてくれる。ON/OFFの選択は、左ハンドル手元のHSTCスイッチでおこなう。

キーレス化され、乗り降りもスマート。かつて見たビグスクに乗る若者より、都会を駆け回るビジネスマンがたしかによく似合う。密を避けてバイクでさっそうと移動。原付2種スクーターが販売好調と聞くが、1ランク上の移動手段と言えそうだ。



■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★★★
足着き:★★★★
オススメ度:★★★★

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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