三菱 eKスペース 新型《写真撮影 雪岡直樹》

◆とにかく、やたら滅多ら広い

このところ、コロナ禍で日本政府に対する風当たりが強い。それに庶民が苦しんでいる時に、起訴された国会議員にボーナスが支給されるとか…。本来ならもう少し、庶民に気持ちを察して欲しいものだと思った。そんなことを思い出したのは、この『eKスペース』の試乗後のことである。

何せやたら滅多ら広い。室内高は1400mmあって、スライドドアの開口スペースは650mmある。この650mmはちょっと狭い家屋の室内ドアの寸法に匹敵でする。リアシートのレッグスペースは数値こそ出ていないが、写真を見る限り女性が座ってそのつま先からフロントシートに至るスペースに靴がもう一足入るほどのスペースが余っている。


このスペース、恐らく今国会議員さんの多くが移動用のクルマとして使っているトヨタ『アルファード』のスペースと同等かそれ以上だ。単純に広さだけを求めているのなら、アルファードからこのeKスペースのようなクルマに乗り換えて、庶民の気持ちに寄り添う態度を示していただいても良いのではないかと思った次第である。

今回試乗したのはGという中間グレードのモデルで、絶賛売り出し中のマイパイロットはオプション設定(試乗車には付いていた)で、ナビやマイパイロットのカメラによって得られる安全装備の類はすべてオプションとなる。さらに試乗車に付いていたディーラーオプションのETC2.0やドライブレコーダーなどをすべて含んだオプション価格は何と68万9898円となって、車両本体価格154万2200円の45%弱に及ぶ。

勿論プレミアムのフロアマットなんかいらないかもしれないし、ETCも2.0じゃなくてよい。シートはセパレートじゃなくてもよくて、ハンズフリーのオートスライドドアも要らないとなると結構削れる。それでもビルトインのUSBポートまでオプション設定だったとは、少々驚いた。



◆絶品の乗り心地と、相反する操作性

車高はノーマルのeKワゴンよりも140mmほど高い。それが運動性能にも変化をもたらしているのか、ステアリングを転舵した際のロール感はノーマルeKワゴンより遥かに大きいと感じた。それと、フロントサスペンションの味付けが良くも悪くもこのクルマの特徴というか、車両性格をよく表していた。

とにかくフロントサスペンションが柔らかい。ステアリングに意図的に素早い転舵を与えてやると、前述の通り車体はグラっとかなり大袈裟に傾く。これがロール剛性の乏しさを印象付けるのだが、一方でその乗り心地は絶品だ。極端な話、路面は常にまっ平。路面のアンジュレーションなどもものともせず、小さな突起や凹みなどは完全にスルー。ドライバーにそれを感じさせないレベルまで極小化している。だから、乗り心地重視派(実は僕もそうなのだが)にとっては素晴らしいと褒めちぎれるはずなのだが、実はそれほど単純な話ではない。


絶品の乗り心地は、同時にステアリングに伝わるロードインフォメーションも影響している。要するに手応えが無いわけだ。この味付けがこの手のスーパーハイト系NAモデルに乗るであろう主たる購買層では受けるのかもしれないが、自動車としての安全性、つまり危険回避の操作をした場合はもう少し粘ってくれた方が安全な気もする。

高速道路の試乗では巡航している限り不満はない。しかし、80km/h程度で流れていて前車を追い越そうとする場合はどうしてもフル加速をする必要があり、乏しい加速感は必然的に追い越しに手間取る。CVTのうなりも増幅されてしまって、やはり高速性能はイマイチと言わざるを得なかった。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファーデプト代表取締役も務める。

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