ホンダ フィット 新型(プロトタイプ)《写真 ホンダ》

◆ラテン的な明るさがある

スポーティさを強調していた3代目からがらりと趣をかえて、ペットを連想させるような愛嬌のあるルックスとなった4代目『フィット』。ドライバーズシートに乗り込んでみればピラーの工夫によって得られた抜群に開けた視界に気分も明るくなる。

以前はフォルクスワーゲン『ポロ』を参考としてみていたが、今回はフランス車のシトロエン『C3』にも目を向けたという。なるほど言われてみればラテン的な明るさがあるし、まるで金魚鉢のなかにはいったかのような前席の雰囲気は『C4スペースツアラー』(元ピカソ)のようでもある。シート座面のクッションがたっぷりとしていて座り心地がいいのもしかりだ。


◆すぐに実感できるサスペンションの動き

プラットフォームは基本的にはキャリーオーバーながらボディやサスペンションは徹底的に磨き上げられている。テーマとなったのはサスペンションの低フリクション化。従来モデルは動きの渋さや硬さをどうしても取り切れなかったが、サスペンション取り付け部などを始め各部の剛性向上や取り付け角度の見直し、スタビリンクやブッシュなどの細部も含め、サスペンションを動きやすくしたのだ。

その効果は乗ればすぐに実感できる。サスペンションはしなやかにストロークし、動きに渋さや雑味、引っかかり感がない。


音・振動の少なさも新型の特徴の一つだ。内外装から受けるイメージ通りに優しい乗り味なので、キビキビ感はないものの、ワインディングロードを元気に走らせてみるとステアリング操作に対してノーズが素直に反応し、舵角を増していけばきちんと追従。非日常的な走りをしてみても動きに連続性があってコントローラブルだ。穏やかではあるものの、基本性能が引き上げられたことが実感できる。

◆心地いいパワートレイン「e:HEV」

もっとも大きな変化はハイブリッド・システムが従来の1モータータイプから2モータータイプとなったことだろう。すでに『インサイト』など多くの車種で採用されているi-MMDだが、このフィットからは「e:HEV」と呼ばれることになった。

基本的にはエンジンは発電に徹してモーターで駆動するタイプなのでシリーズハイブリッドに近いが、高速域ではエンジンが直接駆動するモードも持っている。低回転から大きなトルクを発生するモーターでの駆動だから加速はスムーズかつ力強い。


それは他のモデルでも知っていたので予想できていたが、驚いたのはモーター駆動なのに加速時にはエンジンの回転数の上がり下がりや音などが、絶妙に加減速に合っていて自然な感覚をもたらしていることだ。ちょっと早めぐらいの加速から、ATなど有段ギア車のようにシフトアップしていくようなエンジン制御がなされていて気持ちがいい。加速力や静粛性などでも優れているが、それ以上にフィーリングやドライバビリティが磨き上げられてた。

あらゆる面で心地いいことをテーマとした4代目フィットだが、パワートレーンでもそれを徹底しているのだ。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

石井昌道|モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストに。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイクレースなどモータースポーツへの参戦も豊富。ドライビングテクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

ホンダ フィット 新型(プロトタイプ)《写真 ホンダ》 ホンダ フィット 新型(プロトタイプ)《写真 ホンダ》 ホンダ フィット 新型(プロトタイプ)《写真 ホンダ》 ホンダ フィット 新型(プロトタイプ)《撮影 宮崎壮人》 ホンダ フィット 新型「HOME」(東京モーターショー2019)《撮影 愛甲武司》 ホンダ フィット 新型「HOME」(東京モーターショー2019)《撮影 愛甲武司》 ホンダ フィット 新型(プロトタイプ)《写真 ホンダ》 ホンダ フィット 新型(プロトタイプ)《写真 ホンダ》 ホンダ フィット 新型(プロトタイプ)《写真 ホンダ》 ホンダ フィット 新型(プロトタイプ)《写真 ホンダ》 ホンダ フィット 新型(プロトタイプ)《写真 ホンダ》 ホンダ フィット 新型(右)と従来型(左)《撮影 宮崎壮人》