BMW X6 新型のベンタブラック《photo by BMW》

BMWは8月28日、9月にドイツで開催されるフランクフルトモーターショー2019(Frankfurt Motor Show)において、新型『X6』(BMW X6)のワンオフモデル、「ベンタブラック」(Vantablack)を初公開すると発表した。

ベンタブラックとは、英国に本拠を置くサリーナノシステムズが、2014年に開発した特殊な塗装だ。ベンタブラックで塗装された表面を見ると、人間の目は3次元感覚を失い、物体は2次元に見える。これは、脳がこのブラックを穴と認識してしまうためという。

◆航空宇宙向けコーティングとして開発

ベンタブラックの「ベンタ」という名称は、カーボンチューブの集合体、「Vertically Aligned Nano Tube Array」を表している。これらのカーボンナノチューブは、長さが14〜50マイクロメートル、直径が20ナノメートルで、人間の髪の毛のおよそ5000分の1の細さだ。 新型X6の車体では、1平方センチメートルあたり、およそ10億のカーボンナノチューブ含まれる。そのため、ボディ表面に当たる光は反射せず、ほぼ吸収され、熱に変換されるという。

◆反射率1%の仕様で新型X6を塗装

この技術はもともと、航空宇宙向けのコーティング用に開発された。ベンタブラックは耐熱性に優れており、アルミなどのコーティングに適している。ベンタブラックは最大で99.965%の光を吸収するため、反射率は0.2%と低い。

このため、新型BMW X6では、建築および科学用に開発されたベンタブラックの「VBx2」と呼ばれる仕様で塗装された。この塗装は噴霧が可能で、反射率は1%だ。あらゆる角度から、少量の反射を可能にしつつ、「スーパーブラック」に見える。それでもこのベンタブラックで塗装された新型BMW X6は、ボディ表面の凹凸の3次元感覚がなく、まるで平面の2次元に見えるのだ。

2次元に見える中で、新型X6に初設定された光るキドニーグリルや、最新のLEDヘッドライト&テールランプが、コントラストを発揮している。

◆自動車向け塗装では世界初

ベンタブラックによるコーティングは、たとえば、先進運転支援システム(ADAS)用のさまざまなタイプのレーザーベースのセンサー機器や、自動運転向けテクノロジーで採用された実績がある。それは、直射日光がこれらのシステムの性能を低下させる可能性があるためだ。新型BMW X6には、自動車として世界で初めて、ベンタブラック塗装が施された。

サリーナノシステムズを創業したベン・ジェンセン氏によると、これまでさまざまな自動車メーカーからオファーを断ってきたという。しかし、新型BMW X6の個性的かつ表現力豊かなデザインが、ベンタブラック塗装を許可した理由になったという。

一方で、表情豊かなデザインの車にとって、ベンタブラックのような3次元感覚を失わせる塗装は、適さないとの見方もある。新型BMW X6のデザイン責任者のフセイン・アル・アター氏によると、デザイナーはボディの表面や線よりも、全体のシルエットやプロポーションを重視しており、ベンタブラックは、光や反射に気を使うことなく、自動車デザインの基本的な側面に焦点を当てることを可能にしているという。

なおBMWは将来、このベンタブラックのVBx2塗装を、市販車にオプション設定することを検討している。その際は、新型X6が最有力な選択肢になる、としている。

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