カルロス・ゴーン被告 (c) Getty Images

気になるニュース・気になる内幕。今日の朝刊(朝日、読売、毎日、産経、東京、日経の各紙・東京本社発行最終版)から注目の自動車関連記事をピックアップし、その内幕を分析する新聞ウォッチ……。

「陰謀」「策略」「中傷」---。現経営陣にこんな言葉を並べて批判した日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告。だが、肝心カナメの事件については「全ての嫌疑について私は無実」と主張したものの、具体的な説明を避けて核心には触れず、カリスマ経営者として現役時代に派手なパフォーマンスでアピールしていた迫力や鋭さはまったく見られなかった。

この場に及んで何のために公開したのかとも疑いたくなるほどの、拍子抜けの動画だったという印象は否めない。

ゴーン被告の弁護人が、日本外国特派員協会で記者会見し、会社法違反(特別背任)の疑いで再逮捕される前にゴーン被告が語った動画を公開した。約7分半の映像のほぼ半分近くを費やして日産の現経営陣への批判を展開していたが、弁護士の助言で、陰謀を仕掛けたと思われる経営幹部の実名の部分はカットされていたのも、迫力に欠いた要因だろう。

きょうの各紙も「ゴーン被告『陰謀』主張」(読売)や「ゴーン前会長『私は無実』」(東京)などと、社会面などで取り上げているが、一連の事件のド派手だった報道に比べると「特段、中身ない」(産経)との検察幹部のコメントにもあるように、地味な掲載である。

しかも、ゴーン被告は動画の中で 「株価の下落と業績の低迷を目にしながらも、幹部たちは『あれはしない、これはしない』と言って、今後何をするのかも言わない」。さらに「業績を向上させるビジョンもなく、自らを誇っている幹部たち。それを見ることは非常に悲しい。うんざりさせられる」と嘆いていた。

日産株はゴーンファミリーらも大量に保有しているとみられるだけに暴落すれば“死活問題”と私欲を優先した発言とも思える。また、そんなイエスマンのような幹部ばかりを重用し、優秀な後継者を育てなかったゴーン被告の経営責任こそ罪深いのではないだろうか。

2019年4月10日付

●現経営陣に強い不満、ゴーン被告動画「3社合議制」批判(読売・9面)

●10年間で2800億円支援求める、JR北海道が長期経営ビジョン(朝日・9面)

●紙幣刷新24年度めど(毎日・1面)

●世界成長率3.3%に減速予測、IMF3回連続下げ(産経・12面)

●就職人気ソニー理系V3(東京・7面)

●日産、欧州再編を加速、スペイン工場人員2割減、SUVやEVに注力(日経・15面)

●ウーバー、広島で配車開始、タクシー第一交通などと提携(日経・15面)

日本外国特派員協会で記者会見する、ゴーン被告の弁護人、弘中惇一郎弁護士 (c) Getty Images