ヤマハ トリッカー《撮影 ダン・アオキ》

16歳の誕生日と共に原付免許を取り、でも、20代はクルマに夢中。アラサーでリターンライダーになるも、40代は仕事に忙殺される。そしてアラフィフで2輪に再々入門。そんな浦島ライダーが、最新のバイクをチェックしていきます!

◆復活のトリッカー


昨2018年、一時的にカタログから落ちていたヤマハ『セロー250』と『SR400』に加え『トリッカー』も復活すると聞いて、ちょっと不思議な気がしました。オフとオンのド定番であるセローやSRと比較して、トリッカーには、なんとなく「流行り物」のイメージがあったから。

トリッカーが登場したときのことは、よく覚えています。シュッと疾走感のある横方向のデザインが一般的な2輪モデルにあって、キリンが首を伸ばしたような、はたまたタツノオトシゴのような(!?)縦方向に細長いトリッカーの姿はいかにも新しくて、それだけで「コレに乗ったら楽しい生活が送れそう!」と感じたものです。実際には、トリッカーを買うことも楽しい生活を送ることもなかったわけですが、それはともかく、当時、際立って個性的な1台が、ヤマハ・トリッカーでした。

……と書いていて気づいたのですが、トリッカー、デビューしてから、すでに15年!「流行り物」どころじゃあ、ありませんね。うーむ、光陰矢の如し。

◆今も新鮮味あふれる


久しぶりにトリッカーの実車に接してみると、その新鮮さは、いささかも薄れていませんでした。小手先の差別化ではなく、デザインそのものの基本骨格がしっかりしているからでしょう。平成28年度排ガス規制に対応して、エグゾーストパイプにO2センサーを刺し、気化したガソリンを回収するチャコールキャニスターを吊ったのが、これまでとの違いです。

試乗車のカラーは、ハッピーなオレンジ。多くのコンポーネンツを共有するセローが、前21/後18インチのタイヤを履き、シート高830mmなのに対し、トリッカーは、前19/後16インチに小径化され、シート高は810mmに下げられている(最低地上高は、285mmと280mm)。800mm超えのシート高ですが、幅の狭い硬めのシートに跨るとグッとサスペンションが沈むので、見かけの数値ほど足付きは悪くない。

エンジンは249ccの空冷単気筒。乾いた音を発して元気よく回ります。シングルらしいパンチがあって、スロットル操作によくトルクがついてくる。ヘッドメカニズムが2バルブのSOHCなので、それほど高回転まで伸びない実用ユニットだけれど、オフロードを行くときや、トライアル競技をやる人には、このくらい癖のない特性の方が扱いやすいのかもしれません。

20ps/7500rpmの最高出力や20Nm/6000rpmの最大トルク、組み合わされる5速MTのギア比も含めて、セロー250と同スペック。ちなみに、セローがエンジンを225から250に切り替えたのは2005年なので、実はトリッカーの方がこのパワーパックの使用は早い。トリッカー豆知識。

◆何でもデキそうな錯覚に陥る


トリッカーに乗っていて特徴的なのは、クルクル、クルクル、実に小回りが利くということ。発進時の一瞬だけちょっと不安定になりますが、細身のスタイル、手頃な大きさ、そして127kgの軽量ボディの恩恵で、街乗りはもちろん、Uターンが頻発する路地裏巡りさえ楽しめる扱いやすさ。その手軽さゆえ、何でもデキそうな錯覚に陥って、段差の低い階段などを見かけると思わず登ってみたくなります。

「機会があったらトライアルに挑戦してみたいなァ」と、すっかりその気にさせるのがトリッカーのいいところ。人生を楽しむのに前向きになるバイク……とまとめるのは、ちょっと広告っぽいですかね。

いうまでもなく、トリッカーはシティコミューターとしても有能で、クォーターの排気量を持つため交通の流れに乗るのは容易。意識的にエンジンを回せば、十分、速い。荷物を満載したロングツーリングや、本格的にオフロードを走るには、アディショナルでリアキャリアほか、アンダーガードやクランクケースカバーなどを装着する必要があるだろうけれど、その分、素の値段は抑えられていて、46万7640円。街で遊びたい人にピッタリですが、それだけではモッタイない!?

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