ヤマハ発動機の産業用ドローン「YMR-08」《撮影 山田清志》

ヤマハ発動機は1月16日に東京ビッグサイトで開幕した「ロボデックス2019」に出展、「ロボティクスが創造する未来へ」というテーマで自慢のロボット群を展示した。そのなかで来場者が注目したのがドローンだ。

「YMR-08」と名づけられたそれは、農薬散布など産業用で、現場のプロが必要とする性能をすべて備えているという。同社関係者によると、「散布現場で本当に必要なものは何なのか」との問いを何度も繰り返して開発したそうだ。

フライトモードは、ノーマルモード、自動クルーズコントロールモード、自動ターンアシストモードの3種類があり、田畑やオペレーターの状況に合わせた操縦を選択でき、初心者からベテランまでさまざまなスキルのオペレーターにベストな散布作業を可能にする。

しかも、その作業は非常にスムーズとのことだ。例えば、1ヘクタールの田畑を農薬散布する場合、自動オートクルーズモードと自動ターンアシストモートを使うと約14分で完了するそうだ。さらに、新たに設計した二重反転ローラーを採用したことで、力強いダウンウォッシュ(降下気流)を生み出すことに成功し、散布農薬が風に流されにくく、狙い通りの散布が可能だ。

バッテリーはTDKと共同開発した大容量で高出力のものを搭載し、時速15kmで15分間飛び続けることできる。そのバッテリーはカートリッジ式で、手袋をしたままでも簡単に着脱でき、すぐに作業に移れる。また、モーターは日本電産と共同開発し、小型で軽量、高性能なものを搭載している。まさしく日本メーカーの技術の粋を集めたドローンと言っていいだろう。

発売は3月で、価格は300万円の予定だ。「すでに引き合いが多く、人手不足といわれる農業分野で早く役立つツールになってくれるといい」と同社関係者と話し、メンテナンスについてもしっかりした体制を整えているという。

同社のブースには、このドローンのほか、産業用無人ヘリコプター「FAZER R」やリニアコンベアモジュール「LCM100」、細胞ピッキング&イメージングシステム「CELL HANDLER」などが紹介されていた。同社の無人ヘリコプターは現在、国内で2800台稼働しており、水田の約4割がこれらのヘリのよって農薬などの散布が行われているそうだ。

二輪事業が苦戦しているヤマハ発動機にとって、収益力の高いロボット事業は今後の成長戦略の柱だ。昨年12月に発表した新中期経営計画でも、ロボティクスで農業、医療、自動運転分野で新規市場を開拓していくと力説していた。これからヤマハ発動機のロボット事業には目が離せない。

ヤマハ発動機の産業用無人ヘリコプター「FAZER R」《撮影 山田清志》 ヤマハ発動機のリニアコンベアモジュール「LCM100」《撮影 山田清志》 ヤマハ発動機の細胞ピッキング&イメージングシステム「CELL HANDLER」《撮影 山田清志》 ヤマハ発動機のブース《撮影 山田清志》