スバル フォレスター 新型(アドバンス)撮影 中村孝仁

その名を「e-BOXER」という。クローズドコースで試乗した時は、このクルマを言下にマイルドハイブリッドであると言いきってしまった。しかし、いざ公道にこいつを持ち出してみると、少し違うんじゃないか?そんな疑問が湧いてきた。

一般的に二つの動力源を持っていれば、それをハイブリッド車と呼ぶ。マイルドハイブリッドの場合、片一方の動力源はあくまでも補助の役割を果たすものと、自動車用語の辞書「大車林」では定義している。しかしながらこのe-BOXER、「エンジンの効率が悪い低回転域ではモーターだけで走行」とあるし、実際アクセルを本当にゆる〜く踏んでやると、ちゃんとモーターのみでの走行をする。

もっともそのモーターの出力は13.6psに過ぎないのだが、バッテリー容量は4.8Ahと、これは『プリウス』よりも大きい。ただ、純粋なEVモードがあるわけではないので、うーん、こりゃどっちだ?ということになってしまったのである。

◆「マイルドハイブリッド」と断定すべきではない?


実は走行中にタコメーターを見ていると面白く、エンジンはかなり頻繁に停止する。例えば50km/hで走行中に長い直線になって加速の必要がなく、ほとんどアクセル開度が10%程度になると、エンジンは止まる。この時はコースティングではなくバッテリー走行しているという判断になるし、前述したようにとにかく微妙にアクセルを開きながら発進すると、渋滞中などではかなり長いことモーターのみで走ってくれるから、言下にこいつはマイルドハイブリッドと断定してしまうのは、少し間違っていたのではないか?という風になったわけである。

もっとも本格的なハイブリッド車ほどの電気に頼った走りは出来ない。あくまでも加速のアシストというのが主たる要素となる。実際、加速を意図的にパーシャル状態から強く意識した走りをすると、モーターの助けなのか、それなりの加速感が得られる。残念ながら2.5リットルのガソリン車と乗り比べたわけではないから、あくまでもフィーリングの問題だ。

話は違うが、我が家の隣人はその本格ハイブリッド車のプリウスを所有していて、早朝など静かな時は例のハイブリッド車独特のサウンドを残して、職場に出かけていくようだ。そこで、このe-BOXERの『フォレスター』で同じようなことをすると、ちゃんとハイブリッド車と同じような音を立てる。低速で移動する時などは、まさにプリウスに乗っているのと同じ音がするというわけだ。

しかしながら普通に走っている時は、そのモーターアシストの恩恵はまるで感じられない。エンジンが止まったことなどもタコメーターを見ない限り、気が付かない。

◆アイサイト・ツーリングアシストの使い勝手

素晴らしいACCの性能を持つスバルの「アイサイト・ツーリングアシスト」は、0-120km/hの作動範囲を持っているのだが、残念な事にカーブの連続する道路ではそのステアリングアシストがすぐに切れてしまうことが判明した。場所は箱根七曲り。前を確認するカメラの視界から前車が消えるとアシストが切れてしまうようである。そのたびにコーションのサウンドが鳴るのだが、カーブの度にそれが鳴って、いささか辟易した。

もう一つこのツーリングアシストで気になったのは、車間を調整するスイッチである。写真に撮った通り、▲▼の上下ボタンと3本のバーで示されている。他メーカーの場合、例えば▲は前に近づく…つまり車間を狭くすることを意味しバーの数は少ない。▼の表示ではバーの数が近づくときよりも多くなっているのですぐに理解が出来る。

ところがスバルの場合、▼表示は逆に車間が狭くなり、▲で車間が増えるという、多くの他メーカーとは真逆の設定。おまけにバーの数は離れる時も近づくときも一緒である。まあ、一般ユーザーは他車に乗り換えることなどまずないので気にならないだろうが、日頃から多くの試乗車を試す我々にとって、真逆の設定は少々戸惑う。せめてバーの数を変えておいてくれたら理解し易いと思うのだが…。


◆カタログ燃費とのかい離は少なそう

日産『ノートe-POWER』のように、エンジンが単純に発電機として使用されている場合、急加速をするとエンジンは一時的にうなりを上げる。まあ通常状態でも走行の加減速とは無関係にエンジンが回るので、内燃機関に乗っている人は初めのうち違和感を覚えると思う。スバルのリニアトロニックもやはりCVT独特の違和感がある。特にこのe-BOXERの場合はなおさらで、CVTの嫌な部分が強調されてしまっている印象が強かった。

それを除けば走りは快適でスムーズである。それに燃費の方もWLTCで14.0km/リットルを謳っているが、250km走ってはじき出した値は12.2km/リットルとなかなか優秀で、実燃費とのかい離は少ない方ではないかと思う。因みに7割:高速、3割:一般道という走りの割合である。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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