BMW X2 M35i xDrive《写真撮影 中村孝仁》

まさにBMWらしさの全開である。「駆け抜ける歓び」というキャッチコピーに相応しいクルマがこの『X2 M35 xDrive』ではないだろうか。

初代のX2がデビューしたのは日本では2018年のことだから、もう7年前のこと、フルチェンジされて2代目に移行したのは2023年暮れだが、メディア用に試乗車が用意されたのは2024年になってから。そうは言ってもそれからもう1年は経っているわけなので、だいぶ遅い新車試乗となった。

◆1シリーズ以上にオールラウンダーとしての資質を備えている
X2のデビュー時には香取慎吾をアンバサダーに起用して若者受けを狙ったものの、正直なところその当ては外れたように感じた。そもそもデビュー直後から新古車が市場に溢れ出した(当時)ことが問題で、その餌食となったのがX2だったように感じるのだが、若者狙いだった訴求が、実は別な市場にヒットしたクルマのようにも感じられた。

コンパクトなクーペ風SUVを表してSACと呼んでいたBMWだが、ホームページでは「独創を極めたクーペ・スタイルのSUV」となっていて、小賢しい呼び方でなくなったことも個人的には歓迎である。

日本市場に置けるX2は、BEVの『iX2』を加えて合計3タイプ。ICEのモデルはいずれも四輪駆動の「xDrive」である。そしてM35iは高性能版で、2リットルの直4ユニットは実に317psを絞り出すから、かなり獰猛だった『M135』をも上回る。しかし一方で、1シリーズほどの足の硬さはなく、快適さでは断然こちらが上。十分にオールラウンダーとしての資質を備えている。

また、今回からステップATに代えて7速のDCTが装備されるのもM135と同じだから、若干のパワー差はあるものの、基本的にメカニカルトレーンはM135と共通だということである。勿論7速DCTにはターボブースト機能も備わっている。

◆パフォーマンスと運動性能は「らしさ全開」
らしさ全開といったのは、そのパフォーマンスと運動性能の素晴らしさである。

パフォーマンスに関しては1710kgと決して軽いとは言えない重量ながら、最大トルクも400Nmを2000〜4500rpmというほぼ常用域すべてで発揮されるエンジンのおかげで、日常的な使用域でパワフルに感じさせてくれることに加え、エンジン自体が回りたがる性格というか、回ることを厭わないBMWらしい味付けを持っている点。

そして今どき十分にコンパクトなボディとフットワークの素晴らしさが手伝って、非常に走りを意識させる仕上がりとなっていることが、まさにキャッチフレーズそのままに「駆け抜ける歓び」を体感させてくれるのである。

M135同様、このクルマにもオプションのMコンパウンドブレーキが装備されていたが、そのブレーキの制動力の高さは本当に久しぶりに味わうもので、その食いつきの良さは脱帽ものである。

◆試乗車の価格はオプション込みで863万9000円
デザイン的には初代のそれを基本は踏襲しているが、初代で気に入らなかったホフマイスターキンクのCピラーからBMWのエンブレムが取り去られたことは好感できる。初代ではどうも古のデザインと新しさをマッチングさせようとしたあざとさを感じさせたが、今回はそれが無く、よりクーペ風になって外連味が無い。

残念と言うか、仕方ないというのはオプションを含めた価格が試乗車の場合863万9000円(基本価格は822万円)と、個人的な印象としては彼方に行ってしまった感が強いこと。もっともオプション合計価格43万9000円のうち、どうしても欲しいと感じたものはMコンパウンドブレーキぐらいなもの(11万7000円)である。それでも800万は超えてしまうのだから、やはり今どきの輸入車を高いと感じるのは私だけではあるまい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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