
日産自動車が日本市場への投入を計画しているという大型クロスカントリー4x4の新型『パトロール』を、ごく短い距離だがテストドライブする機会を得た。
パトロールの第1世代が登場したのは1951年。日本に投入されるモデルは昨年アラブ首長国連邦(UAE)で発表された第7世代である。全長5350×全幅2030×全高1955mm、ホイールベース3075mmという寸法はトヨタ自動車のクロスカントリー4x4、レクサス『LX』を超え、国産の現行モデルの中では最大。車両重量は2.8トン近くに達する。
UAEでは3.8リットルV6自然吸気(320ps・39.4kgm)も用意されるが、日本に入ってくるのは3.5リットルV6ツインターボ(431ps・71.4kgm)のみとなる模様だ。変速機は遊星ギア・トルクコンバーター式の9速自動。
◆2.8トンとは思えない軽やかさと乗り心地
走り始めてまず印象的だったのは発進加速が思いのほか軽やかなことと、エンジンノイズの遮断レベルが非常に高かったこと。動き出しに重々しさはなく、加速時のスクワット(後傾)も小さい。ブリーフィングで見せられた主要諸元に車重の項目がなかったため車重を知らずに乗ったのだが、まさか2.8トン近くもあるとは想像できないような軽やかさだった。加速Gはパワーウェイトレシオ6.4kg/psに十分見合うと感じられ、変速時の息継ぎも小さいものだった。
第7世代パトロールはUAEでは高級車という位置づけであるため、ボディ構造はクロスカントリー4x4の定番であるラダーフレームにアッパーボディを架装するというものである一方、サスペンションは前後ともリジッドではなく独立懸架式。試乗が行われた日産グランドライブ(旧追浜テストコース)は路面がいい具合に老朽化しており、ハーシュネスチェックには適している。
同時比較ではないのであくまで印象論だが、そういう路面での乗り心地はトヨタ『ランドクルーザー300』と前出のレクサスLXの中間。同乗したレスポンスのスタッフも同じ印象を述べた。
◆低燃費、車体下の「透過」技術などが武器に
ガソリンエンジンの重量級モデルということで燃費については絶望視していたが、テストコース3周、約11kmのマイレージをこなした時点での平均燃費計値は7.8km/リットル。重量級クロカンはリッター3、4kmが当たり前だった時代とは隔世の感があった。
ドライブパターンは「スタート→100km/hまで全開加速→その後すぐ40km/hに減速→バンクコーナーを抜けて80km/hまで加速→30km/hに減速→60km/hまで加速し高速コーナーを回る→80km/hまで加速→10km/h前後まで減速→以下スタート地点で停止せずに100km/h加速へ」というもので、燃費には結構厳しいという印象。渋滞シミュレーションはできていないが、80km/hクルーズ時は瞬間燃費のバーが15km/リットルあたりをうろうろするという挙動を示していたことからも、遠乗りで燃費がボロボロになりそうという印象はなかった。
第7世代パトロールで新採用された技術の中でも目玉となっているのはボンネット下部をシースルーする映像を合成して映し出せるのをはじめ、豊富な機能が実装されたビューア。ランドローバーが「シースルー・ボンネット」の名で実用化し、トヨタもランドクルーザーに採用しているもので、決してトップバッターではないが、実際に使ってみると巨体モデルの泣き所である死角の多さをカバーできるのはやはり便利。アメリカではドライブスルー式の洗車機に入れるのに使い勝手が良いという評価を受けているそう。日本の洗車機でも左右輪の位置決めをやりやすいのではないかと思われた。
◆価格はどうなる
さて、日産にとっての悩みどころはこのパトロールをいくらで販売するかということだろう。
当該グレードの価格はUAEで約1200万円(1ディルハム=40円)、アメリカで約1000万円(1ドル=143円)。日産の新たなフラッグシップとしてその水準の価格で売るという手ももちろんあるが、日産2007年に『サファリ(パトロールの日本名)』をディスコンにしてから18年間このクラスで空白を作ってしまっており、突然高価格帯のモデルを提案してユーザーの関心を呼べるかどうかは未知数。
また日本市場ではリセールバリューの高さで鉄壁の強さを見せるランドクルーザー300という存在もある。ラインナップ拡充とブランドパワー再生を同時並行で進めていくことが求められる日産が果たしてどういう手を打ってくるか興味深い。
























