メルセデスベンツ GLC220d Core《写真撮影 中村孝仁》

新型のモデルが出ると、その多くの場合イニシャルの販売で一番売れるのは、最上位のグレードと相場は決まっている。

メルセデスベンツ『GLC』が新しくなったのは2023年(日本市場)で、その時の価格は「220d」が820万円であった。ところがそれから2年経ったとき、即ち2025年3月に、ノーマルの220dの価格は867万円からとなり、たった2年で47万円も価格が上昇している。

メルセデスにとってGLCは言わばドル箱で、ミドルサイズのSUV市場ではナンバーワンの販売を誇り、外国車メーカーの年間登録数でも2024年は2位に食い込むなど、その販売はどうしても維持していきたいところである。

とはいえ、ミドルクラスのSUVでもトップモデルの「AMG 63S E Performance」は1822万円となり、乗り出しは2000万円を超える高価車。AMGじゃなくても「350e Sprot Edition Star」は予価ながら、こちらも1000万円を超える。

というわけで、もっと手を出しやすいモデルをラインナップしようと言うことになったのか、新たに「Core」と名付けられたいわゆるベースグレードが設定されることになった。価格は2年前に現行GLC220dが登場した時とほぼ同じ、819万円とされている。

◆歴史は繰り返される
個人的には歴史は繰り返されるのだと感じた。それは1987年に当時のメルセデスベンツエントリーモデルだった『190シリーズ』に、装備を簡略化したベースモデルを「アンファング」の名で投入したことがあるからだ。当時はメルセデスベンツだというのに、パワーウィンドーを省いてレギュレーターウィンドーの設定にしていた。だから、アンファングは中を除いてドアを見れば、すぐにそれとわかるモデルだったわけである。

新しい「GLC220d Core」の場合、「装備を厳選して」…という言葉が使われているが、何を省いたのかは正直ほとんどわからない。例えばチョイスできる外装色が3色しかないとか、同じくチョイスできるオプションも2種類しかないなど、いわばワイドではなくタイトバリエーション化したことはうかがえるのだが、基本的な装備内容はほぼ変更されていない。

走りの部分で省かれた部分があるかと言うと、オプションが2つしかなくなった関係で、ドライバーズパッケージが選択できず、結果リアアクスル・ステアリングがチョイスできない。そしてエアマチックサスペンションの設定もない。これが上位モデルとの違いだ。

一方のインテリアではウッドダッシュボードのチョイスができない。本革シートのチョイスもないなどで、シートはレザーARTICOと名付けられた合成皮革の表皮のみのチョイスとなるが、これについては今や合皮の方が耐久性に関して優れているし、座った感触や触れた感触もほぼ本革並みだから、大きなデメリットにはならない。

◆9年の歳月が変えたもの
実は先代GLCが誕生した時の試乗会で、メルセデスの広報から、「クルマ、いかがでした?」と聞かれて思わず答えてしまったのが、「こういうの作られると困るんだよねぇ。文句付けるところないから…」という文句を言ったと書いている。当時のGLCはそれほど良くできていて、重箱の隅をつつくのが上手なはずの筆者でさえ、ネガを見つけることができないほどであった。

新しいGLCは流石にそこまでパーフェクトと言うわけではない。理由は9年の歳月でライバルたちの台頭があることと、最近のメルセデスはBEVをはじめとした電動車の方に開発のリソースを回しているからなのか、昔の神格化されたメルセデスが持っていたような、走る、曲がる、止まるという自動車の基本要素が、以前ほど飛び抜けて良いと感じられなくなったところが垣間見えてしまうからなのか、とにかく「文句付けるところないから…」とは言えなかった。と言うよりも、感動した部分があまりなかったと表現した方が良いと思う。

ドライブトレーンはディーゼルユニットにISGを加えたMHEVで、これに9速ATと4マチック(4WD)の組み合わせ。タイヤさえきちんとすれば、1年365日、日本全国どこへでも行ける機能を備えている。このメカニカルトレーンのパフォーマンスや静粛性に関しては、やはりほぼ満点と言ってよいと思う。一方で乗り心地と言う点は、少し辛口過ぎるかもしれないが、先代で乗って感動したフラット感は実現できていないように思えた。

◆すこぶる使い易いナビ
実はナビがすこぶる使い易いし、何よりも案内が丁寧である。目的地をセットすると、本来曲がるべき交差点のおよそ300mほど手前から地図ではなく、前方を映し出す映像画面に切り替わり、曲がるところでは青色の矢印で示してくれるから、およそ間違いようがない。最近ナビをセットしてメルセデスに乗ることがなかったので、いつからこの機能が付いているかわからなかったが、とにかく便利だった。

試乗車は車両本体価格こそ819万円であるが、AMGラインパッケージとパノラミックスライディングループのオプションが装備されて、オプションを含む価格は918万2000円である。オプションは無しでも機能的には問題はない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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