VW ID.4 Lite《写真撮影 島崎七生人》

直近のモデルは、2022年末の導入時に対してスペックがアップグレードされている。わかりやすいところでは一充電走行距離(WLTCモード)が伸び、上級の『ID.4 Pro』で561km→618kmに、『ID.4 Lite』が388km→435kmに。最新の車両本体価格の設定はProが648万8000円、Liteは514万2000円だ。

◆装備、機能を比べてみて驚いた
今回の試乗車はベースモデルのLite。外観でわかるProとの違いは、タイヤサイズが235/60 R18で前後同サイズ(Proは前:235/50 R20、後:255/45 R20)になることで、ホイールもスチールホイール+フルホイールキャップとグッとスノッブに。ほかにボディ関係では、ピラー、ルーフレールがProの明るいシルバー色に対してダークグレーに。ボディ色そのものもProがパノラマガラスルーフ付きのブラックルーフ仕様の2トーン(グラディナブラックメタリックはモノトーン)となるのに対して、Lite(キングスレッドメタリックは非設定)はルーフがボディ色となる。

内装ではシート表皮はカタログ上どちらもブラウン&フローズンブラウン……とここまではほぼ共通。だがホームページからカタログの主要装備票をダウンロード→印字しジックリと較べてみて驚いた。LiteとProとでは標準の装備、機能でかなり差があるからだ。

大どころでいうとLiteで省かれるのはパワーテールゲート、パワーシートと座面長調整機能(前2席)およびパワーランバーサポート、シートマッサージ機能、ラゲッジネットとパーティションなど。ほかに電動格納式リモコンドアミラーのメモリー、助手席側リバース連動機能、3ゾーンフルオートエアコン(Liteは2ゾーン)なども。ほかにインフォテイメントシステム(オーディオ)も仕様違いに。

さらにヘッドランプ、テールランプも機能に差がある。それと予防安全関係の機能も、書くのが忍びないが事実を記せば、装備表中25項目のうちの5項目が省かれている。

そして動力性能は、走行距離については冒頭に記したとおりだが、最高出力を数字で見るとLiteは125kW(Proは150kW)、最大トルクはともに310Nmだが、その発生回転域はProのほうが広い。あとは車両重量だが、これはProの2140kgに対しLiteは1950kgと190kg軽い。

◆“Pro”の方がよりID.4らしい
以上のような差を価格差を含めて念頭に試乗してみると、“いい/悪い”ではなく、“どちらがよりID.4らしいかそうではないか”という観点からは、Proのほうがより“らしい”と思った。根拠は乗り味のなめらかさ、快適装備、安全支援機能の充実度など。筆者はかつて自分で『ゴルフII』のCi(2ドア・5速MT)に乗っていた経験があるが、そんな実質重視の素のクルマの面持ちがある……といえばいいか。

ID.4のようなBEVでフル加速を試すのは本筋ではないと思うので、絶対的なパワーは別に不満は感じない。が、都心と近郊の自宅を高速道路で往復するなど中距離走行を含め、数日間の試乗での肌感覚としては、充電の注ぎ足し頻度(=切羽詰まってはいないが、念のため急速充電をしておこうかと思う頻度)もLiteのほうが高く、総じて、同じように試乗したProのほうが、より落ち着いて乗っていられる、と感じた。

シンプルな上よりスノッブなLiteの外観は個人的には好ましいと思うのだが……。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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