ワン!PiNG ACE《写真写真 石川徹》

自動車業界では近年、愛犬家をターゲットにした仕様の車やグッズ、取り組みが増えている。神奈川県海老名市にあるViNA GARDENSで6月24日〜25日に開催された「アウトドアドッグマルシェ」では、犬と一緒に出かけることを前提に企画されたキャンピングカーが展示された。

◆愛犬のために開発されたハイエースのキャンピングカー
犬と外出を楽しむ愛犬家は多く、移動中に周囲への気遣いが不要なドライブとの親和性は高い。そこに注目したのが、キャンピングカーの「ワン!PiNG ACE(ワンピングエース)」。

トヨタの純正部品を取り扱う、トヨタモビリティパーツの神奈川支社が企画・開発した。ベースは『ハイエース バン』のSUPER GLロングバンで、好みに応じてディーゼルの二駆と四駆およびガソリンエンジンの二駆から選択できる。

オプションのクッションを使って“オールフラット”にすると、運転席と助手席を含む車内全体がほぼフラットになり、長さ約3.5mのスペースができる。大人2人と子ども2人が寝ても、愛犬の寝床が確保できる広さだ。“ダイネットモード”にすれば、ハイエースの大きな窓から景色を眺めながら、テーブルを囲んでくつろぐこともできる。

運転席と助手席の間には愛犬専用スペースが用意されている。センターコンソール部分に取り付けられた「フロントセンターボード」には金具とベルトが付属しており、小型犬用のクレート(プラスチック製のケージ)がしっかり固定できる。愛犬も飼い主のそばで安全にドライブを楽しむことが可能だ。

フロアには、犬の足が滑ったり、傷が付いたりすることを防止する表面素材が使用されている。抜け毛が付きにくく水汚れにも強い、愛犬にも飼い主にも優しい配慮だ。オプションのシャワーは、ちょっとした洗い物のほか、屋外で遊んだ後に愛犬の脚を洗うのにも便利だろう。

◆ワンピングエースは神奈川から全国へ
当初は神奈川県内のみでの販売だったが、今年の2月から福井県でも取り扱いが始まったそうだ。トヨタモビリティパーツは、ワンピングエースの全国展開を視野に入れている。「コロナ禍で家にいる時間が増えて、わんちゃんを迎えるご家庭も増えました。子犬たちが大きくなって、飼い主さんと一緒に外出するようになっています。しばらくは、そうした愛犬家市場が拡大を続けると考えています」と、開発を担当した安田隆一GMは話す。

◆シエンタ専用の車中泊キットを初展示
そのほかに、愛犬家向け新製品のプロトタイプがこのイベントで初公開された。『シエンタ』で気軽に車中泊ができるベッドキットだ。7人乗りのハイブリッド仕様はリヤ部分をフラットにできないため、同社は脱着が簡単でコンパクトに収納できる専用品を開発している。

ステンレス製の軽量なフレームは、工具を使用せず簡単に組み立てられるよう設計されている。その上にクッションを置けば、大人2人が寝られるスペースができる(最大長は約1800mm)。専用設計のため安定性も高く、キットを設置したまま走行できる予定だそうだ。秋の発売を目指し、安全性の最終確認や素材の見直しを行っているという。

◆「ワンピングブランド」のシリーズ展開も検討
トヨタモビリティパーツでは、愛犬と一緒にクルマで出かける時用の製品を「ワンピングブランド」としてシリーズ化することも検討している。自身も20歳のダックスフントと暮らしているという安田氏は、「家族の一員として、わんちゃんは特別な存在です。この数年、特にそういった感覚が飼い主の間で強くなっていることを感じます」と語る。

「実はこのプロジェクトを始めたきっかけも、“うちの犬と楽しくドライブに出かけたい!”と思ったからなんです。あとどれくらい一緒にいられるか分かりませんから、毎日を大切にしたいですね」と話してくれた。

愛犬とのドライブを前提に企画された「ワン!PiNG ACE」。《写真写真 石川徹》 愛犬とのドライブを前提に企画された「ワン!PiNG ACE」。《写真写真 石川徹》 「オールフラット」にすれば3.5Mの長さが確保できる。《写真写真 石川徹》 前席中央に安全な愛犬専用スペースを用意。《写真写真 石川徹》 オプションのシャワーをつければ、洗い物や愛犬の足を洗うのに便利。《写真写真 石川徹》 ワン!PiNG ACE《写真写真 石川徹》 脱着が簡単なシエンタ用ベッドキットは秋に発売予定。《写真写真 石川徹》 慣れれば数分で組み立てが可能だという。《写真写真 石川徹》 特別な存在になった愛犬たち。《写真写真 石川徹》 ワン!PiNG ACE《写真写真 石川徹》 キャビネット内に収納できる冷蔵庫は車外に持ち出すこともできる(オプション)。《写真写真 石川徹》 サブバッテリー用のスペースも確保(バッテリーはオプション)。《写真写真 石川徹》 クレートがしっかり固定できるフロントセンターボード。《写真写真 石川徹》 2列目を特別仕様に変えた「神奈川バージョン」。《写真写真 石川徹》 イタリアFASP社製のオリジナルシートを装備する神奈川バージョン。《写真写真 石川徹》 高級志向の神奈川バージョンは40万円ほど高い価格設定。《写真写真 石川徹》 ベースはハイエースバンSUPER GLの標準ボディ。《写真写真 石川徹》 神奈川バージョンは夫婦2人と小型犬を想定した車内のつくり。《写真写真 石川徹》