いすゞ エルフ mio《写真撮影 小松哲也》

4月に発表された新型いすゞ『エルフ』の発表会では、「mio」という参考出品モデルがあった。普通免許で運転できる小型トラックという位置づけだが、一部ではキャンピングカーのベース車になるのでは? という声も上がっている。

エンジンは、いすゞ『D-MAX』に搭載されている1.9Lの「RZ4E」だという。最高出力120PS、最大トルク320Nmというスペックを持つ。D-MAXにはトルコン式の6MTの設定があるので、トランスミッションもこれが搭載されるだろう。仮に、発表された新型エルフの9速AMT「ISIM」が搭載されるなら、かなり運転しやすい車になりそうだ。ただし、ISIMを搭載した新型エルフのエンジンは3Lの4JZ1というエンジンなので、D-MAXのRZ4Eに使えるかどうかは微妙だ。適合させたとしても、重量が重くなると積載量が確保できなくなるだろう。エルフmioのGVW(車両総重量)は3.5トンだという。積載量は1トンから2トンくらいを想定していると思われる。

キャンピングカーは、個人で改造を楽しむ人もいるが、一般的には専門のビルダーと呼ばれる事業者が販売するものを購入することが多い(またはレンタル業者から借りる)。ビルダーは自動車メーカーからトラックやバンを仕入れてさまざまな架装・改造を加えてキャンピングカーに仕上げる。あるいは、車両オーナーが自分の車両を持ち込んで架装・改造をしてもらうこともある。

したがって、エルフmioがキャンピングカーにできない理由はない。普通免許で運転できるトラックで、おそらくAT限定免許でもOKなはずだ。新型には平均的なADAS機能も装備される。価格次第では、大型免許や牽引免許を必要とせず、一定の快適空間を確保できるキャンピングカーの新しいベース車として有望かもしれない。

エルフmioがキャンピングカーにできるのでは、という背景には、トヨタが『カムロード』というキャンピングカー専用モデルを販売しているからだ。カムロードは、トヨタの商用小型トラック『ダイナ』のキャブ部分のみ搭載したフレームボディで販売される。これをビルダーが購入して独自の架装を施しキャンピングカーとして販売する。ハイエースと同様にヘビーキャンパーに人気の車両だ。

エルフmioはエンジンスペックだけならダイナの106PS・300Nmよりも高い。参考展示されていた車両は平台が架装されていた。ドライバンのモデルも計画があるというが、参考展示のためボディタイプの詳細やサイズ、カムロードのようなキャンピングカーを意識したモデル設定があるかどうかも不明だ。

そもそもエルフmioの狙いは、中型・大型免許ではなく、AT限定普通免許でも運転できるトラックである。宅配需要などで増えるラストマイル輸送と、そもそもの慢性的なドライバー不足問題に対応するためだ。したがって、現段階でいすゞにエルフmioをキャンピングカーモデルを設定する計画はないと思われる。だが、ビルダーがどの車でキャンピングカーを作るのかは自由であり、市場の声が高まれば、あるいエルフのキャンプモデルが実現するかもしれない。

いすゞ エルフ mio 搭載エンジン《写真撮影 小松哲也》 (参考画像)カムロードベースのキャンピングカー《写真撮影 廣井誠》 (参考画像)いすゞのキャンピングカー専用シャーシ「びーかむ」がベースのキャブコン《写真提供 日本特種ボディー》 いすゞエルフ新型《写真提供 いすゞ自動車》 いすゞエルフ新型のラインナップ(左端がエルフmio)《写真提供 いすゞ自動車》 ISIM(9段デュアルクラッチトランスミッション)《写真提供:いすゞ自動車》