ハーレー ロードグライドST《写真撮影 真弓悟史》

「ひゃーっ!なんて大きいの!!」。今回私が乗ったのは、ハーレーダビッドソン史上最大の1923ccを誇るミルウォーキーエイト117エンジンを搭載した『ロードグライドST』です。

同じエンジンを搭載したローライダーSにも以前乗ったことがありますが、それとはもう外観がガラリと変わって巨大なフロントカウルとサイドバッグが強烈なインパクト。

試乗会場は東京・お台場周辺だったんですけど、正直なところこれで日本を走るのはけっこう難しいかもしれません。ホントに地平線を目指して遠くまで優雅に走っていく走りこそしっくりくる。そんなスケールの大きい、これぞまさしく“グランドアメリカンツーリング”といったモデルとなっています。

◆アメリカンなスケールにひと苦労
難しいと言いましたが、まず身長160cmの私が跨ったらどうなるかと言うと、車重が382kgということで“普通に”引き起こそうとすると…起こせません(笑)。

250ccクラスの日本製バイクだと大体170kg〜重くても180kg台なので、ロードグライドSTはなんとその約2台分もあります。これは絶対に無理でしょと思ったのですが、ハンドルを右に切った状態でエイヤッと気合を入れて起こすコツを編み出したので、私1人でも引き起こしはどうにかなりました。

しかし、引き起こしの次には新たな関門が待っていました。そう足着きです。シート高は715mmで、これは女性にオススメハーレーNo.1のナイトスタースペシャルと同じのため数値的には高くないんですけど、タンクからシートにかけての横幅が広く、まったくそうは思えないほどの手強さ。

身長160cmの私だとつま先ツンツンがやっとです。とにかく足を外側に開かないと跨れないので母指球なんか着きませんし、ちょっとでもグラっときたらとてもじゃないけど382kgの車体は支えきれそうにありません。なので停車時はとにかく気を遣いっぱなし。でもまだなんとか…。

しかし、こればかりは流石に断念してしまったのが発進の際にサイドスタンドを払おうとしたとき。なんと足の長さが足りず…物理的に届きませんでした…。サイドスタンドを出すことは前に蹴りだすことでなんとか1人でも出来るのですが、払うことだけはどうやっても1人では無理。

なので仕方なく今回は人に手伝ってもらいました。そんなことから、このバイクをいざ購入して乗ろうと思うなら、物理的に最低でも身長160cm台後半はないと厳しいなと思いました。実にアメリカンスケールなデカさです。

◆動き出せば快適なツーリング
さて、いざ走り出してみると普段は前傾姿勢のスポーツタイプばかり乗っている私にとって、上半身を起こして足を前に投げ出すクルーザーポジションはなかなかに新鮮。遠くを見ながらゆったり走るこの雰囲気は、これがハーレーならではの体験というんでしょうか、「乗ってやったぜ」と嬉しくなります。シフターやブレーキペダルにも足が届かないのではと心配しましたが、こちらはちゃんと届いて操作できたので問題なし。

また当日はけっこう風が強くて他のモデルでは抵抗を感じていたのですが、ロードグライドSTの大きなカウルではそれを一切感じさせないのも印象的でした。この風による疲れがまったくないというのはグランドアメリカンツーリングの一番の特徴ではないかなと思います。

一泊くらいの荷物なら十分入るサイドケースには、レインウェアなど普段使うものを入れっぱなしにしておいてもいいかなあ。このサイドケースは実用性だけでなく見た目のインパクトにも大きく影響していました。

◆装備とスペックも4輪顔負け
エンジンはハーレーならではのドコドコ感を心ゆくまで味わわせてくれて、とにかく楽しい!全体的には扱いやすいのですが、3500rpmという低回転でフルトルクを発生するため、軽いアクセルでもうっかりした操作だと強烈な爆発力で何回か腕だけ持っていかれそうになったので、アクセルを開く際は注意が必要です。

考えてみれば排気量が2リットル近くあるバイクなので、当たり前といえば当たり前ですね。そんなときにもシート後端がいい感じにストッパーとなってくれます。私だとそこに当たるまで腰が後ろにズレてしまうのですが、身長がある人なら腰がズレずにその恩恵を存分に感じることができるんじゃないでしょうか。

他に国産車では得られない感覚といえば、コクピットの雰囲気も驚きでした。アナログのメーターの他にナビやオーディオを表示できるカラーモニターがデーンと大きく鎮座しているのですが、これがなんとタッチパネル式。オーディオの設定内容たるや4輪カーオーディオの域で、もうバイクとは思えないほどとにかく凄い!

そんなことを感じながらもう一度スペック表を眺めていたら、382kgのロードグライドSTは、4輪車で最軽量となるケータハム・セブン170Rの車重にあと一歩で近づくことに気付きました。というか体重60kgくらいの人が乗ったらもう同じです。

車重に乗り味にオーディオ装備etc…と、バイクと4輪の境界が分からなくなりそうな感もあるロードグライドSTは、とにかく今まで知らなかった楽しい世界を教えてくれました。これはこの先の私のバイク人生の中でも大きな宝となるかも。

いつかはハーレーと思っているライダーたちに、“私はこんな若いときに乗れたんだぞ”と自慢したいくらい面白い体験でした。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★
コンフォート:★★★★
足着き:★★
オススメ度:★★★★

小鳥遊レイラ|愛称:ことりちゃん
レースクイーンに憧れてモータースポーツ業界へ。しかしMOTOR STATION TVでの出演をきっかけに走る方に目覚めてしまい、いきなり大型二輪免許を取得。現在では2輪4輪共にサーキットを走り、一昨年に4輪のレース参戦のためJAF国内A級ライセンスを取得。先日、MFJロードレース国内ライセンスを取得して、今年は2輪でもレースに参戦予定。イベントMCから2&4輪の耐久レース参戦まで楽しむモータースポーツ女子。身長は160cm。

ハーレー ロードグライドST《写真提供 ハーレーダビッドソン》 ハーレー ロードグライドST《写真提供 ハーレーダビッドソン》 ハーレー ロードグライドST《写真提供 ハーレーダビッドソン》 ハーレー ロードグライドST《写真提供 ハーレーダビッドソン》 ハーレー ロードグライドST《写真提供 ハーレーダビッドソン》 ハーレー ロードグライドST《写真提供 ハーレーダビッドソン》 ハーレー ロードグライドST《写真提供 ハーレーダビッドソン》 ハーレー ロードグライドST《写真提供 ハーレーダビッドソン》 ハーレー ロードグライドST《写真提供 ハーレーダビッドソン》 ハーレー ロードグライドST《写真提供 ハーレーダビッドソン》 ハーレー ロードグライドST《写真提供 ハーレーダビッドソン》 ハーレー ロードグライドST《写真提供 ハーレーダビッドソン》 ハーレー ロードグライドST《写真提供 ハーレーダビッドソン》 ハーレー ロードグライドST《写真提供 ハーレーダビッドソン》 ハーレー ロードグライドST《写真提供 ハーレーダビッドソン》 ハーレー ロードグライドST《写真提供 ハーレーダビッドソン》 ハーレー ロードグライドST《写真提供 ハーレーダビッドソン》 ハーレー ロードグライドST《写真撮影 真弓悟史》 ハーレー ロードグライドST《写真撮影 真弓悟史》 ハーレー ロードグライドST《写真撮影 真弓悟史》 ハーレー ロードグライドST《写真撮影 真弓悟史》 ハーレー ロードグライドST《写真撮影 真弓悟史》 ハーレー ロードグライドST《写真撮影 真弓悟史》