トライアンフ ストリートトリプル RS《写真撮影 雪岡直樹》

『ストリートトリプル』はかつての3気筒スーパースポーツ『デイトナ675』をベースに公道向けに最適化されたネイキッドモデルである。2017年には排気量を765ccに拡大し電子制御を投入するなど年々アップデートを重ねてきた。

続く2019年にはロードレース世界選手権Moto2クラスへのエンジン供給をスタートさせるべく、当時の『ストリートトリプルRS』用の水冷3気筒765ccをベースにレース用エンジンを開発。Moto2参戦で得られた知見とテクノロジーを投入された新設計エンジンを引っ提げてデビューしたのが今回の2023年モデルである。

◆3気筒の特性を十二分に引き出せている
日本初お披露目となる『ストリートトリプルRS』のメディア向け試乗会の舞台となったのは袖ケ浦フォレストレースウェイ。1周2.4kmの高速コーナーを持つ本格的サーキットである。エンジンは従来型をベースにしつつも燃焼室やピストンを新設計とし吸排気系の改良などによりシリーズ史上最強となる130psを実現、ピークトルクも強化された。

見た目もアグレッシブになった新型は、運動性を高めるためキャスターを立ててヒップアップした過激な車体姿勢になっている。ただ、前後サスペンションはストローク感があって動きもしなやかなので跨ったときの足着きは良好だ。3気筒ならではのフラットトルクは扱いやすく、どこからでも加速できるパワーバンドの広さは従来どおりだが、それがひと回り力強くなった感じ。ギアレシオがショート化されたことも加速力に一役買っている。

左手元で簡単に操作できるライディングモードを「ロード」から「スポーツ」へと切り替えていくとパワーの立ち上がりがダイレクトになり、最もアグレッシブな「トラック」モードではコーナー立ち上がりで常にフロントが浮き気味になるほど。感性を揺さぶる独特のトリプルサウンドもまた官能的で、スロットルを開けているだけで気持ちも高揚してくる。

◆「隅をつつけない」ほど良いハンドリング
ハンドリングの軽快さも3気筒ならでは。ぎりぎり扱えるパワーとミドルクラスならでは軽さの両立による賜物で、リッタークラスなどに比べるとだいぶ扱いやすい。それでいて、車体ディメンションの見直しと12mmワイドなハンドルを新たに採用したことで、ステップワークや操舵に対する車体のレスポンスが素早くなり、結果としてハンドリングのキレ味も増している。たとえば、S字的な左右への切り返しやコーナー進入での倒し込みなどは明らかに俊敏になった。

また、従来モデルから継承された前後サスペンションも路面のギャップにもよく追従してくれるのでコーナリングも安心。強力かつレバータッチに優れる新型ブレンボ製ブレーキのおかげでコーナー進入での速度コントロールもしやすいし、これまた新たに採用されたコーナリング対応のABS&トラコンの威力と、純正タイヤとしてOE採用されている「スーパーコルサSP V3」の絶大なグリップ力に支えられ、フルバンクの走りを安心して楽しめた。おかしな言い方かもしれないが、なかなか重箱の隅をつつけない感じだ。

◆従来型よりも高いシート、だが調整出来るのはありがたい
あえて気になる点としては、スペック的にシート高が従来モデルより高くなっていること。これは前述のとおり運動性能を重視したためだが、解決策もちゃんと用意されている。オプションのローシート(−28mm)に加え、リアサス上部のスペーサーを抜くことでさらにローダウン化(−10mm)できる仕組みになっているのが嬉しい限り。足着きの不安も解消されるはずだ。

試しにローシート&ローダウン仕様にも試乗してみたがこれが普通に乗りやすく、バンク中でも路面が近いので安心。リンク自体をいじっていないのでハンドリングに悪さをしていないのだと思う。これなら街乗りもしやすくサーキットも楽しめるはずだ。

本気で熟成されたプロダクトだけに完成度は高いと思う。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
ハンドリング:★★★★★
扱いやすさ:★★★★★
快適性:★★★
オススメ度:★★★★★

佐川健太郎|モーターサイクルジャーナリスト
早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。(株)モト・マニアックス代表。バイク動画ジャーナル『MOTOCOM』編集長。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

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