マツダ CX-60 PHEV プレミアムモダン《写真撮影 宮崎壮人》

水平基調のボンネットとボディの4隅を意識させる造形で、実車は思いのほか存在感がある。“引き算の美学”が心がけられた静かだが力強さのある佇まいには、新色のロジウムホワイトプレミアムメタリックのしっとりとなめらかな風合いが合う。マツダのラージプラッットフォーム第一弾として登場した『CX-60』だ。

◆サラッと仕立ての良さが光る仕上がり
全幅は『CX-5』が1845mm、『CX-8』が1840mmなのに対し『CX-60』は1890mmの立派さで、このラージサイズが許容できるかどうかがポイントか。全長は3列シートのCX-8より185mm短く、CX-5に対して+165mmとなっている。

一方で居住スペースは、デザインと素材が相当に吟味され、無条件で心地よく過ごせる空間に仕上がっている。試乗車は“Premium Modern”(プレミアムモダン)と呼ぶ仕様で、ピュアホワイトのナッパレザーを用いたシートを始め、掛け縫いが施されたルーセントクロスや本杢(メープル)のインパネ加飾など、決してこれみよがしではなくサラッと仕立ての良さが味わえる仕上がり。

前の方で「居住スペースは…」と断ったのは実はラゲッジルームとは分けたかったためで、機能上の支障はないものの、ここに備わる固定式のラゲッジフックはまだしも、シートバックを倒す操作を行なうレバーや床板を起こすレバーは、できれば表面にたっぷり艶をかけた厚みのあるメッキであるほうがよりこのクルマらしいし、高級車では一般的なバックドア間口部分のシルプレートもあったほうがいいと思う(客室ドア側のスカッフプレートはオプションで用意がある)。

◆マツダ初のPHEVはAWDのみ
試乗車は2.5リットルの4気筒ガソリンエンジン+モーターを搭載したマツダ初のPHEVで、この仕様は自動的にAWDの設定となっており、車重は2090kg(前:1060/後:1030kg)となる。エンジンルームを覗くと4気筒の縦置きエンジン本体はバルクヘッドに食い込むほどに(ということはトランスミッションはそのさらに奥に)搭載され、それらは前軸よりずっと後ろであるのが印象的。

スペックはエンジンが138kW(188ps)/250Nm(25.5kgf・m)、モーターが129kW(175ps)/270Nm(27.5kgf・m)、バッテリーは355V、容量50Ahの96セルで総電力量は17.8kWh、それとWLTCモード(ハイブリッド燃料消費率)は14.6km/リットルだ。

実際の走りだが、動力性能的にはまったく不満のないものだった。今回は街中、郊外路、高速走行を織り交ぜての試乗。走行モードはSPORT/NOMAL/EV/OFF-ROADが用意され、(今回はOFF-ROADは試さなかったが)各モードごとの特性を切り替えて走らせることができる。

◆高速クルージングでこそ最良の面が存分に味わえる
走行中は総じてエンジン音と振動は低く、相対的にハイブリッドシステム系システムの作動音は若干だけ耳につく。それとトルコンは使わずクラッチを用いる8速ATについては作動自体は非常に的確ながら、センシティブなドライバー(または同乗者)には、加速時のステップ(ごくごく小さいショック)が感じられるかもしれない。

高速道路のインターチェンジのループなどでのロードホールディングが実に安定して感じるのは、トラクションを的確に制御してくれるKPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)の働きによるもので、ロールの不安もまったくない。乗り心地は低速時に目地を通過した際の初期のショックがやや明確。高速道路のクルージング中はスムースで安定感が高く、このクルマの最良の面が存分に味わえる。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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