ヤマハ XSR900と大関さおり氏《写真撮影 雪岡直樹》

ヤマハがスポーツヘリテイジと呼ぶカテゴリーが、いわゆるネオクラシックだ。そのラインナップに加わった最新モデル『XSR900』に試乗。モーターサイクルジャーナリストの伊丹孝裕と、モデルやタレントとして活躍する大関さおりのインプレッションをお届けする。

◆「アラフィフ」には特にグッとくるデザインなんです
大関さおり(以下、大関):スズキっぽい……ですね。

伊丹孝裕(以下、伊丹):前置きなしの直球で、今回もキレがあります。スズキっぽいというのは、つまりこのブルー基調の車体色ですよね?

大関:そうです。今どきな感じというか、第一印象は華やかでかっこいいと思いました。

伊丹:ちょっとだけ説明しておくと、この色は、かつて世界グランプリ(現在のMotoGP)を走っていた、ヤマハのレーシングマシンがモチーフになっています。ソノートブルーとか、ゴロワーズブルーとも呼ばれていて、あ、ちなみにソノートというのはその時のチーム名で、ゴロワーズってのはスポンサーになっていたフランスのタバコの名前。そこにクリスチャン・サロンというフランス人ライダーがいて……(ここから先は、伊丹の昔話がしばし続くので、ざっくり割愛)……というわけで、僕らアラフィフ世代は特にグッとくるんですよ。

大関:(大関さんはスマホを片手になにやら検索)……あ、ほんとだ。ソノートとか、ゴロワーズって入れると、たくさん画像が出てきますね。

伊丹:そう、これこれ。でね、XSR900のプロモーションビデオには、さっき話したクリスチャン・サロンが起用されているんだけど、これが今でもかっこよくて……(ここもざっくり割愛)……なので、XSR900には色だけじゃなくて、当時のレーシングマシンの雰囲気もちゃんと盛り込まれています。

◆遠目にはおしゃれなネオクラだけど、実用性もバッチリ
大関:(シート下のDリングを指さしながら)これなんですか?

伊丹:お!いいところに気がついて頂けました。そこもまさにレーシングマシン的な雰囲気が味わえるディティールのひとつ。このD状になっているところをつまんで、パチンとな。こうすると、固定されているパーツがワンタッチで脱着できるんです。

大関:へぇ、すごい!簡単なんですね。

伊丹:XSR900は公道を走る市販車です。なので、完全に取り外すにはキーが必要ですが(そうしないと盗難やいたずらに遭う)、ただの飾りじゃなくてちゃんと機能する。クイックファスナーと呼ばれるもので、メンテナンス性や軽量化を重視するレーシングマシンでは、こうした装備が普通でした。フロントフォークに施されたドリリング加工や燃料タンクのスリットもそう。光っていないと存在感がほとんどないテールライトとか、使わない時は目立たないように収納されているタンデムステップの造形からもシリアスさが伝わってきます。

大関:遠目には、おしゃれなネオクラシックですが、細かい部分をよく見るとすごくこだわってデザインされていますね。それでいて、ヘルメットホルダーが使いやすそうだったり、収納スペースがきちんと確保されていたりと、実用性も高そうです。

◆一番恩恵を感じられるのは「軽さ」
伊丹:乗ってみて、どうでした?

大関:エンジンから伝わってくる独特のバイブレーションとサウンドは、トライアンフっぽいですね。体感的な力強さと、実際に走り出してからのスムーズさの両方が楽しめるところも似ています。

伊丹:XSR900は直列3気筒エンジンを搭載していて、トライアンフにも同様のモデルがたくさんあるから、確かにその通りだと思います。決してメジャーとは言えない形式でしたが、今ではすっかり認知されました。3気筒の魅力は、2気筒のトルクと4気筒のパワーのイイトコ取りと言われるけど、トライアンフの近年の成功がなければ、ヤマハもその復活(ヤマハは70年代に3気筒モデルを市販化している)には、二の足を踏んでいたかもしれません。

大関:XSR900に乗っている時、一番恩恵を感じられるのは軽さですね。車体を引き起こす時も、コーナーを曲がる時もビッグバイクであることを意識せずに済みます。小ぶりの燃料タンクはニーグリップしやすく、私が普段乗っている『CBR650R』と同じような感覚で扱うことができました。

伊丹:確かにそうかも。シート高はCBR650Rと同じ(810mm)で、車重はむしろ軽い(XSR900:193kg/CBR650R:206kg)。ネイキッドとフルカウル、3気筒と4気筒の差を考慮してもXSR900はコンパクトに仕上がっています。ホイールベースはやや長めだけど、ヒラヒラと反応してくれて、街中でもストレスなく楽しめますね。

◆ネガティブな部分も、オーナーになればポジティブにとらえられるかも
伊丹:なにかネガティブなところはありましたか?

大関:前傾姿勢は全然きつくなく、ライディングポジションそのものはかなり楽な方だと思いますが、ハンドルが結構ワイドじゃないですか。その端っこにミラーが装着されているせいもあって、肩に力が入るというか、最初は緊張感がありました。

伊丹:慣れでしょうけど、特に街中では車幅にやや気をつかうかもしれません。

大関:言い方を変えると、ハンドルの広さと高さのおかげでUターンは楽にこなせますし、ミラーの出っ張りのぶん、後方の視界はクリア。オーナーになってしばらく経つと、ポジティブにとらえられる部分だと思います。ネイキッドですけど、これだけ安楽だと、長距離ツーリングも充分楽しめるでしょうね。街乗りからワインディング、高速道路まで、どんな使い方にも応えてくれる1台ではないでしょうか。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
コンフォート:★★★
足着き:★★★
オススメ度:★★★★

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト
1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

大関さおり|愛称 さおりん
初めて見に行った二輪レースでバイクに一目惚れ!大型二輪免許を取得。MotoGP・鈴鹿8耐・全日本レースクィーンを経験し、現在は各種メディア出演やMCとして活躍。さらにボクシングプロライセンスを持つ異色の経歴の持ち主。愛車はCBR650Rでディズニーが大好きなバイクタレント。Instagram:@saoriozeki

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