スバル インプレッサ RS(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》

◆ステージ上に雨!? 前代未聞の新型インプレッサ発表
雲行きが怪しくなってステージに雷鳴が轟き、雨まで降り始めた。しかもポツポツどころか土砂降りだ。ついさっきまで、左右30m近くはあろうかという背景スクリーンから観客フロアの半分ぐらいまで拡がった大画面に、街の喧騒とカントリーサイドの静けさが代わるがわるに映し出されていたのに。

さすがハリウッドのお膝元だけあって、ロサンゼルスモーターショー2022(LA Auto Show 2022)でリアルでのお披露目という一期一会の機会を、派手な演出とショーマンシップで魅せてくれたのは、スバルの新型『インプレッサ』のワールドプレミアだった。

ステージの床から段差や最前列の数mほどまで、背景の映像とリンクしていた発表の場は、居合わせた観客を囲むようにまったくもってイマーシブルな空間だった。開始前に司会者から、プレスや観客はもっと前まで進むよう、促されたほどだ。

最前列のアメリカ人プレスが食い入るようにステージを撮り始めると、土砂降りがさらに強くなって会場の集中力が増すのが感じられた。すると舞台のソデが開いて、新型インプレッサがゆっくりと進んできた。自走して姿を現すニューモデルは少なくないが、わざわざ本降りの雨に濡れて登場した車なんて初めて見た。

インプレッサがステージ中央で停まると、今度は傘を差しながら北米スバルのCEO、トム・ドール氏が歩いてきた。悠々と折り畳み傘を畳んだ氏がスピーチの第一声を発した瞬間、その場にいた観客が息をのむ音が聞こえるほど、すっかりツカまれてしまった。

◆スバル・オブ・アメリカの15年
まず強調されたのは、ここ15年間、スバル・オブ・アメリカが「Share the Love Event」と名づけ、地元リテーラーを通じて取り組んできたチャリティの成果だった。動物保護、難病の子供の支援、要介護の単身世帯への食事配達、国定公園の環境保全活動など、スバルとその販売ネットワークは、新車1台の購入またはリース毎にそのオーナーが選んだ地域の上記関連団体へ、250ドルを寄付している。その合計額が年末には2億5000万ドル(約350億円)を超える見込みだという。

つまりスバルは社会貢献に前向きでサステナブルな自動車メーカーであり、様々な消費者・ユーザー団体から賞を授与されていると、氏は続ける。8年間走行後にもっとも信頼されているブランドで、2013年以来もっとも安全な自動車ブランドに贈られるタイトルを譲ったことがなく、オーナー満足度でも1位、消費者の愛着度でもトップ10ブランドという。また、ここ10年間で販売されたスバルの新車のうち95%が今も路上を走行しており、それはトヨタやホンダより高い数値であるばかりか、オーナーシップ・コストがもっとも低いブランドという認定も受けているとか。

そうした実直かつコンスタントに積み上げてきた信頼性の上に、6世代目となる新型インプレッサもある、というロジックだ。今回公開されたのは「インプレッサ・スポーツ」と、追加となる新グレード「インプレッサRS」という2種類のハッチバックだ。

◆新世代アイサイトを標準装備、新グレード「RS」の違いは
新型インプレッサは、第2世代となるスバルグローバルプラットフォームに基づき、フルインナーフレーム構造や接着面拡大、サスペンション取り付け部の剛性向上が図られている。いずれもフロントはマクファーソンストラット、リアはダブルウィッシュボーンでシンメトリカルAWDを標準とする。アクティブトルクスプリットAWDの制御も刷新され、より素早い応答性やアジリティを増したハンドリング、コーナリング性能が与えられた結果、ドライ路面から雨や雪、凍結路といった悪条件でも意のままに操れるという。

動的質感やパフォーマンス面での評価に加え、新型インプレッサの信頼性にさらなる後押しとなるのが、新世代アイサイトが標準装備されることだ。視野角が先代の約2倍に拡大され、画像認識ソフトをはじめ制御が磨かれたことで、急な飛び出しや割り込み、全車速追従機能付クルーズコントロールでの走行中にも素早い減速が可能となっているという。

インプレッサ・スポーツが搭載する伝統の2リットル水平対向4気筒パワーユニットは振動や騒音を低減し、154ps・196Nmの出力とトルク。また1998年登場の2.5RSが先鞭をつけた新グレードRSは、184ps・241Nmを発揮する2.5リットル水平対向エンジンを採用する。

シンメトリカルAWDの制御やアイサイトといった基幹テクノロジーは一新されつつ、RSの装備面における違いは、ボディサイドやリアハッチ上に「RS」のロゴバッジがあしらわれ、フロントグリルやサイドスポイラー、ドアミラーなどがブラック塗装され、さらに18インチアルミホイールも同じくブラック仕上げとなる。内装にはカーボン調インナートリムや赤の差し色が入ったシートバック、またステアリングやシフトノブが高品質なレザー巻きとなっている他、オプションでハーマン/カードンの10スピーカーシステムも選べる。

◆一過性ではないスバル・ブランドへの信頼
スバルが販売を拡大し続けているアメリカでは、中西部や北寄りの州など降雪の多い地域で絶大な支持を誇っており、雪国にスバリストが多い日本の状況と相通じるものがある。雨が上がってステージでのプレゼンが終わると、スバルのブースがアメリカのナショナル・パークの入り口のような造りで、テントやカヤックをルーフラックに背負ったオーバーランド・スタイルの『アウトバック』や『クロストレック』がポツポツと並べられていることに気づいた。

それはアウトドアやキャンプのブームといった一過性のものでも、天気だけの話でもない。コロナ禍が過ぎつつある今だからこそ、悪い時にもいい時にもスバルが変わらぬ信頼を寄せられるブランドであり、そのスタンダード・モデルが新型になっても実直で志操堅固なインプレッサであるというメッセージは、この上なく確かに伝わっていたようだった。

スバル インプレッサ RS(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 ステージ上に降らせた雨の中登場したスバル インプレッサ《写真撮影 南陽一浩》 スバル インプレッサ(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 スバル インプレッサ(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 傘を差しながら登場した北米スバルのCEO、トム・ドール氏《写真撮影 南陽一浩》 北米スバルのCEO、トム・ドール氏《写真撮影 南陽一浩》 スバル インプレッサ RS(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 スバル インプレッサ RS(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 スバル インプレッサ RS(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 スバル インプレッサ RS(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 スバル インプレッサ RS(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 スバル インプレッサ RS(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 スバル インプレッサ RS(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 スバル インプレッサ RS(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 スバル インプレッサ RS(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 スバル インプレッサ RS(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 スバル インプレッサ(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 スバル インプレッサ(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 スバル インプレッサ(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 スバル インプレッサ(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 スバル インプレッサ(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 スバルブース(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 スバルブース(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》 スバルブース(ロサンゼルスモーターショー2022)《写真撮影 南陽一浩》