スペイン発祥、オフロードの名門「GASGAS」
「GASGAS」は(ガスガス)はスペイン発祥のオートバイメーカーであり、トライアル世界選手権では何度もタイトルを獲得するなど特にオフロード界では知られた名門である。近年はKTMグループ傘下となり開発を加速させる中、同ブランド初のストリートモデルとなる『SM700』と『ES700』の2機種をリリース。地元スペインで開催された国際試乗会に参加しその実力を確かめてきた。
まず大前提として、SM700とES700はエンジンと車体を共有する双子モデルである。さらに言うと、水冷4スト単気筒OHC4バルブ排気量692.7ccから最高出力75ps(55kW)を発揮する強力なエンジンを軽量な鋼管トレリスフレームに搭載する基本設計は、KTMの定番ロングセラーモデルである『690エンデューロ』がベースになっている。そして、690エンデューロは元々ラリーマシンが由来。つまり、GASGASとしてはブランニューではあるが、すでに実績十分の血統書付きモデルということだ。
スーパースポーツ顔負けの走り、オンロード重視のSM700
まずはオンロードに軸足を置いたSM700から乗ってみた。エンジンは単気筒らしい鼓動感があってトルクフル、かつ1万rpm近くまで軽々と伸びていくスムーズな高回転も魅力。6速ミッションはタッチに節度感があり、アップ&ダウン対応のクイックシフターのおかげでギアチェンジも気持ち良くきまる。
乗り味はカチッとした剛性感があり、欧州レベルの高速道路でも安定感は抜群。前後17インチの軽量キャストホイールのおかげでハンドリングも軽快だ。ワインディングは水を得た魚のようにスイスイとコーナーを切り取っていけるし、ショートサーキットでは250ccクラス並みの軽量ボディと持ち前の瞬発力、WP製前後サスペンションの威力でスーパースポーツ顔負けの走りを見せてくれる。オフ車ベースのビッグモタードという性格上、シートはやや高めだがスリムな車体のおかげで足着きも見た目ほど悪くない。
クラッチも軽くエンジンもハントリングも素直とくれば、街中でも自在な走りを楽しめる。電制も2種類のライドモードとリーンアングルセンサー付きのABSとトラコンに加えスリッパークラッチも標準装備とするなど充実。さらに上級者向けにはスイッチひとつで切り替わるスーパーモトモードも用意。これは出力特性がよりアグレッシブになると同時にリア側ABSも解除されトラコン介入も最小限となるなど、玄人向けのセッティングへと瞬時に変更できる。腕さえあれば、ドリフトしながらコーナーを駆け抜ける憧れのモタード走りも可能だ。
「アスファルト」から「ガチオフ」まで、マルチに楽しめるES700
一方のES700はオンもオフもいけるデュアルパーパスモデルだ。SM700と異なるのは主に足まわりで、WP製サスペンションはオフロード寄りにセッティングされ、前後21/18インチの本格的なワイヤースポークホイールを採用。タイヤも本格的なオフロード走行に対応したブロックタイヤが標準装備されている。
アスファルトでもしなやかな長い足が路面の凹凸を滑らかにいなしてくれて快適だし、山深い林道コースでは尻込みしそうなガレ場やフロントを取られそうなサンドでも、スロットルさえ開けていれば弾けるトルクと安定感抜群のシャーシによって何事もなかったように乗り越えていく。最近流行りのアドベンチャーモデルでも行けない領域まで踏み込める、まさにガチオフ的モデルでもあると実感。とはいえ、ES700はあくまでもストリートモデルである。目指すところはオールマイティに楽しく距離を伸ばせる多目的マシンだ。人とは違う個性を求めるライダーにもおすすめしたい。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
ハンドリング:★★★★★
扱いやすさ:★★★★
快適性:★★★
オススメ度:★★★★★
佐川健太郎|モーターサイクルジャーナリスト
早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。(株)モト・マニアックス代表。バイク動画ジャーナル『MOTOCOM』編集長。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。
「ガスガス」って何だ? GASGAS『SM&ES700』は、実は血統書付きのストリートスポーツだった
2022年07月02日(土) 08時00分
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