ジープ グラディエーター ルビコン《写真撮影 宮崎壮人》

30年ぶりに復活したジープのピックアップ
30年ぶりに復活したジープのピックアップトラック『グラディエーター』に、オフロードコースと都内オンロードで試乗した。

日本ではピックアップトラックの市場はほぼない状態。そうしたなかトヨタはタイ製のピックアップトラック『ハイラックス』を輸入して販売している。このハイラックスとサイズを比較してみよう。( )内がハイラックスとの差だ。全長は5600mm(+260mm)、全幅は1930mm(+35mm)、全高は1850mm(+50mm)、ホイールベースは3490mm(+405mm)となる。ボディサイズがふたまわりほど大きく、とくにホイールベースの長さは特筆にあたる。

都内の試乗は15分程度であったが、ホイールベースの長さを実感できるものであった。ピックアップトラックは荷台に荷物を載せる設計が行われているため、空荷だとリヤが軽すぎて落ちつきのない走りになりがちなのだが、ホイールベースが長いおかげだろう、リヤタイヤがしっかりとグリップしている感覚があり、安心感がある。搭載されるエンジンは3.6リットルV6で284馬力/347Nmのスペックは力強く2.8tのボディをものともせずに加速する。乗り心地もさほど悪くなく、道幅の広い土地柄なら問題なく使えるだろう。

オフロードで本領を発揮!
しかしなんと言ってもグラディエーターが本領を発揮するのはオフロードだ。ジープのオーナーイベントが開催された新潟県のスキー場には特設のオフロードコースが設定され、ダウンヒルやモーグル、コブ越えなどを試すことができた。

グラディエーターは副変速機付きの4WDでL4(副変速を低速、駆動方式を4WD)が選べる。通常は直結なので減速比は1.000だが、L4の減速比はなんと4.000と低い。つまり、L4時のアクスルのトルクは通常時の4倍になる計算。ハイラックスは2.566までしか減速しないので、グラディエーターがいかにオフロードよりの設計をしているかがわかる。実際の駆動トルクはタイヤ径によって異なるが、それでもグラディエーターの減速比は大きい。

セレクスピードコントロール(ヒルディセントコントロール)をオンにして、ATをマニュアルモードにしてダウンヒルセクションに侵入する。速度の調整はマニュアルモードのシフト操作で調整。ポジションを2にすれば、2km/hで坂を下って行く。速度調整が必要ない分ステアリング操作に集中できるのがいい点。ダウンヒルセクションでは、不用意に速度が出すぎないのがいい。

モーグルセクションではスウェイバーディスコネクトという機能を試した。これはフロントのスウェイバー(スタビライザー)を切り離すことで、フロントタイヤの上下動をよりスムーズにできる。今回のレベルのモーグルではスウェイバーをオフにしなくても余裕でクリアできるが、スウェイバーをオフにしたことでよりフロントタイヤの動きがスムーズで安心感の高さを経験できた。

グラディエーターはホイールベースが長いため、ランプブレークオーバーアングルが20.8度とあまり大きくないが、それでもコブ越えなどは軽くこなす。アプローチアングルは43.4度とほぼ45度に近い数値を確保。角度で45度は勾配100%なのでその数値の高さは絶大であることがわかる。

グラディエーターはまさにスーパーカーなのである
ほかのクルマではなし得ない、とてつもない性能を誇るという面から見れば、グラディエーターはまさにスーパーカーなのである。私は滅多にすべての★印を5にすることはないが、グラディエーターについてはあえてそうする。それは、グラディエーターを魅力を感じ、グラディエーターを買え、グラディエーターを使えるシチュエーションにいる方に向けての★印である。都内の住宅密集地に住んでいる人にとっては、家までたどり着くこともできない可能性すらある。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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