
11日に開幕した3年ぶりの「第60回 静岡ホビーショー」。今回はミニカーの世界についてレポートする。
静岡ホビーショーはツインメッセ静岡という静岡駅にほど近いイベント会場で開催される。会場は大きな北館と南館に分かれ、主として北館にはプラモデルメーカーが、そして南館には主としてミニカーブランドを扱うメーカーが中心にブースを設けている。もちろん例外はあって、トミカで有名なトミーテックは北館にブースを設けていた。
ミニカーの世界にも二極化の波
さて、ミニカーの世界もプラモデル同様、二極化が著しい。高額なものとリーズナブルなものという二極化である。もう一つはレジンを素材に使うかダイキャストにするかという二極化もある。近年はレジンの素材としての出来が良くなったのか、昔のように反ったり、エッチングパーツが外れたりという耐久性の問題は大きく改善されているようである。どちらにも一長一短があり、レジンの場合は前述したように耐久性に難があるのと、大量生産には向かないというデメリットがある。一方でシャープな造形を可能とし、自動車としての美しさは出しやすい。大量生産が利かないということから、いきおい高額になってしまう。
一方ミニカーと言えば昔からダイキャストは主流。変形の心配はなく金型が壊れない限り少しずつ仕様を変えたり色を変えたりして派生モデルも作りやすい。ただ、金属だからサイズが小さいとどうしてもラインが甘くなってシャープさはレジンよりも落ちる。近年は新陳代謝を求める傾向が多いのか、あるいは在庫を抱えず売り切ったらおしまいという限定に人気が集まるからか、レジンがその勢力を伸ばしている印象が強い。
もう一つ、サイズはミニカーと言えば1/43が伝統的なサイズだが、トミカが大人気となっている今、1/64サイズがその勢力を大きく伸ばしている印象だ。そしてディスプレイして本当に自動車の美しさが感じられる1/18も、高額ながら一定の人気を保っているようである。
また車種に関しては、これもプラモデルと同様に国産旧車が幅を利かせるようになってきた。これはアシェットコレクションの国産名車コレクションが引き金になった可能性があるが、このアシェットのモデルを作るメーカー、エスワンフォー株式会社がアシェットのコレクションを展示していた。その出来の良さと価格のバランスはすこぶる良いと感じた。
充実のトミカ、ダイキャストにこだわる老舗も
1/64のミニカーを大ヒットさせたトミカは着せ替えて別なモデルに出来る新しい商品や、先ごろ日産が某女優のクルマをレストアして話題になった初代『シーマ』をモデル化している。他にもイタルデザインの日産『GT-R』やスバル『インプレッサ』のスポーツワゴンなど、トミカのラインナップは新旧問わず充実。しかもフルダイキャストにして非常にシャープなディテールを出しているあたりにも人気の秘密があるかもしれない。
このトミカの1/64サイズの人気に触発されたか、従来は1/43を主力としてきたブランドも1/64に力を入れ始めた。その筆頭がイグニッションモデル。1/43や1/18の美しい仕上がりで人気のブランドも1/64サイズのモデルを充実させている。ダイキャストに加えてレジンモデルも用意されるが、さすがにレジンはダイキャストの倍近い価格となっている。
ダイキャストモデルに拘りを持つのは老舗の国際貿易である。 今年創業104年を迎えた老舗のおもちゃや模型の輸入商社である。今では従来のように単に輸入をするだけではなく、製品のプロデュースも手掛けている。そんな中拘るのがダイキャストで作るという点だ。
そして国際貿易プロデュースで誕生したブランドが、「ファースト43」であったり「ノレブJ」であったりする。今回はファースト43からスバル『フォレスター』の新製品がデビューしていた。また、『バモス・ホンダ』やスズキ『キャリー』と言った、他では作りそうもないような稀少モデルがラインナップされているのも魅力である。因みに国際貿易はかつてミニカーショップイケダから刊行されていたミニカーマガジンを、web展開で引き継いでいる。国際貿易webサイトのスタッフブログで見ることができる。
ハイクオリティな1/64から、お約束の開閉機構も
ハイクオリティーを前面に押し出した商品構成を持つのがメイクアップ。こちらも1/64の「タイタン」というラインナップを立ち上げている。たとえ1/64サイズであっても、そのハイクオリティーへの拘りはきっちりと継承されている。また、量産ながらハイクォリティーをリーズナブルに、とうたわれているイデアは、別ブランド、「アイドロン」から1/43でリリースされているランボルギーニ『カウンタックプロトタイプ』を1/18としてリリースするようだ。
レジンモデル専門で、ENIF、CAM@、LA-Xなどのブランドを擁するキッドボックスの柴田社長は、自らが実物のクルマから3Dスキャンをし、商品ディテールを決定する拘りを持つ。最近は現車のオリジナルで程度の良いものが少なくなって、製品化がなかなか難しくなってきているとお話しされていた。今回は初代日産『シルビア』が近日発売モデルとして展示されていた。
開閉機構のギミックを取り入れて製品づくりをするAUTOartは、1/18のモデルをこれまでに1500以上も製品化してきた実績を持つブランド。今回はサーキットの狼シリーズとして、いわゆるナナサンカレラ(ポルシェ911)とロータス『ヨーロッパ』風吹裕也仕様が展示されていた。勿論開閉ギミックはお約束である。
オリジナルブランドのみならずミニチャンプなどの海外有名ブランドを扱う京商。1/18サイズのオリジナルモデルでトヨタ『セリカ』、ランチア『デルタ』、スバル・インプレッサなどいずれもラリーカーの試作モデルを展示していた。内装なども凝りに凝っている。ダイキャストだから開閉機構が付き複雑な内装が見える。
いずれにしても巣籠需要は模型業界を多少は潤した形になったが、コロナが明けて果たして好調を維持できるか、さらに一層の奮起と新たなアイデアを期待したい。


























