ルノー アルカナ《写真撮影 中村孝仁》

ルノーがアライアンスの日産株式の売却を検討しているというニュースが先ごろで回った。すわっ!ついに仲間割れ!? と考えるのはたぶん大間違い。

何でもニュースを読むと、EV事業を分離して電気自動車の開発資金に充てるのが理由だとか。でも、アライアンスには日産が素敵な電気自動車持ってるじゃない?と思うのだが、きっと彼らの思うようなものではないのだろう。

実はハイブリッドも同じ。日産には「e-POWER」という人気のあるハイブリッドシステムがあるのだが、ルノーの(ルノージャポンの)説明ではePowerは高速域での燃費性能が良くなく、ヨーロッパでは次期日産『ジューク』にはこのルノーが開発した新しいハイブリッドシステムが搭載されるというのだ。そしてここで真打登場!今回試乗したのがそのハイブリッドシステムをルノーとして初めて搭載して日本市場に導入されることになった『アルカナ』である。

輸入車としては唯一のフルハイブリッド
このセグメントではマイルドハイブリッドが主流で、輸入車としては唯一のフルハイブリッドだそうである。なんでPHEVじゃないの?という突っ込みが聞こえてくるかもしれないが、重さや効率のバランスを考えての結論だと思う。

シトロエンもそうだがルノーというフランスのブランドはどうも「人と違う」を好む傾向にある。『トゥインゴ』は大方の予想を裏切るFFではないRRのレイアウトを採っているし、このアルカナにしてもそのハイブリッドシステムは他のフルハイブリッドとは明らかに一線を画したものである。

具体的にどこがどう一線を画しているかというと、駆動の伝達にトランスミッションを使っていること。しかもドグクラッチを使っていることだ。多くの2モーターシステムのフルハイブリッドはトランスミッションが介在しない。最近デビューしたスズキのフルハイブリッドの場合は、シングルクラッチの電子制御マニュアルAGSを使用している。ルノーの説明ではF1の技術を駆使した…とあるが、確かに制御系はF1で得た知見が使われているのだろう。そして、ドッグクラッチは素早い変速が身上だが一方で回転が合わないと入れづらいしショックも大きい。そこで、その部分をモーターに任せたのがルノーEテックハイブリッドというわけである。こんなこと、F1の知見ならどこぞのH社だってやってよいはずなのだが…。

日産ノートと同じプラットフォームで驚きのロードホールディング性
この話は能書きを書いても理解しずらいと思うので、乗ってどうかという印象だけを記すことにしよう。まず、発進は常に電気が司る。だから至ってスムーズだし静粛性も高く、早朝の住宅街からの出発には気が利いている。ルノーのトランスミッションはエンジン側に4速、モーター側に2速のトランスミッションを持っているそうで、これらを合計すればかけ合わせて8速となるのだが実際にはもっと多いそうで、そんな複雑な機構のためにいつどこでどう変速しているのかなど全く分からず、まあいいように…言葉を返せば適切にシフトしてくれているようである。

ただし、あくまでも機械側の論理で物事が展開されるので、ドライバー側でここは早く次のギアにあげて欲しいなぁと思っても、そうは問屋が卸さない。具体的にそう感じたのは比較的角度のある下りの坂道。自分だったらもうシフトアップしちゃうなぁ…というところでも頑なにエンジンブレーキをかけ続ける。

ドグクラッチの効果か、変速は極めて速くてスムーズであるし、たったと言っては失礼だが、94psしかない内燃エンジンと36kwのメインモーターの組み合わせで、システム出力的には143hpなのだそうだが、それでもやはり大したことのないパワーにしては随分とよく走るし、加速感もなかなかのものだ。何よりもどうしてこんなにロードホールディング性が高く、シャープな操舵感覚になるのか不思議だ。というのもこのプラットフォーム、日産『ノート』と同じアライアンスのCMF-Bと呼ばれるプラットフォームなのだが、ルノーの手にかかると実に快適で楽しい。不思議ちゃんである。

これだけ楽しいドライブができるなら、自分でコントロールしたくなるのも道理。しかし、ギアの選択権はクルマにしかなく、いわゆるパドルシフトなどというものはない。そもそも構造が複雑すぎて人間の介在を阻んでいるらしい。

Bセグでも存在感あるサイズ
もう一つ、このクルマの大きな美点は前車との距離を時間で表示してくれること。ルノーは多くのモデルでこれを採用しているが、アルカナの場合2.5秒から表示が始まり、1.7秒まではグリーンの表示。これを超えて1秒までがオレンジ。そして1秒を切ると赤に変わる。つまり車間距離が危険水域に入ったことが視覚的にもわかるようになっていることだ。最近はあおり運転が問題になっているが、では一体適正な車間距離がどのくらいなのか一般のドライバーはなかなかわかりづらい。この色と数字で示すシステムは非常に良いと思う。是非もっと宣伝して欲しいものである。

価格は429万円。Bセグメントとしては高価だが、車体も3サイズ全長4570×全幅1820×全高1580と結構存在感があり、流麗なクーペフォルムということもあってBセグメントにはとても見えない。これは単純にお勧めできるモデルである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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