スバル WRX S4 新型《写真撮影 雪岡直樹》

往年のGT-Rや240ZGを思い出すフェンダーアーチ
フェンダーアーチがSUVっぽいと賛否両論の新型スバル『WRX S4』であるが、デザインのルーツである2017年の東京モーターショーに参考出品されたコンセプトカー、『VIZIVパフォーマンスコンセプト』にも付いていたし、昔を知る筆者にとっては1970年代の『スカイライン2000GT-R』や『フェアレディ240ZG』を思い出すので、違和感はない。

それにこのフェンダーのおかげで先代より30mmもトレッドを広げ、『レヴォーグ』より太いタイヤを履くことができた。サーキットでプロトタイプに乗ると、その効果は歴然だ。

先代でステアリングを切ったときのグラッという動きはなく、ノーズの動きはレヴォーグより明らかに機敏で、ロールは抑えられている。それでいてタイヤがしっとり路面に接地している感触が伝わってくるので、安心してペースを上げていけた。新世代プラットフォームの運動性能を極限まで引き出したという表現がふさわしい。

必要以上にスペックを追わない
2.4リットルに拡大された水平対向4気筒ターボエンジンが、先代の2リットルより最高出力、最大トルクともに低下していることを指摘する人もいる。

でも必要以上にスペックを追わなかったおかげで、ターボの立ち上がりが穏やかになり、アクセルペダルに対する反応がリニアなので、扱いやすくなった。レッドゾーンは6500rpmから6000rpmに下がったのも脱スペック重視の現れ。無理に上まで回さない分、音は全域で滑らかに感じるようになった。

「スバル・パフォーマンス・トランスミッション」という名前を与えたCVTは、ATのように段を切って変速し、Dレンジに入れたままでもほぼ理想のギアを選んでくれる。『インプレッサ』や『フォレスター』などとは異なるセンターデフ付きのVTD-AWDは、後輪主導のトルク配分がコーナーの立ち上がりを心地よいものにしてくれる。

走りの楽しさへのアプローチが大人っぽくなった
走りの楽しさへのアプローチが大人っぽくなった。あのスタイリングはしばらく議論が続きそうだが、ネガな印象を持つ人も、乗れば少し印象が変わるはずだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

森口将之|モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト
1962年東京都生まれ。自動車専門誌の編集部を経て1993年に独立。雑誌、インターネット、ラジオなどで活動。ヨーロッパ車、なかでもフランス車を得意とし、カテゴリーではコンパクトカーや商用車など生活に根づいた車種を好む。趣味の乗り物である旧車の解説や試乗も多く担当する。また自動車以外の交通 事情やまちづくりなども精力的に取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。

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