MINI クーパーS コンバーチブル《写真撮影 中村孝仁》

正直なところ、思わず「終の車」にこれ…と思ったりした。適度なサイズ感や気持ちの良い走り、それに何と言ってもその爽快感。であったのだが思いとどまった。

何故思いとどまったか。理由はメリットとデメリットを天秤にかけて今の生活環境とこれから来るであろう環境を考慮したときに、デメリットが多いと感じたから。やはりのこの手の車はもっと若い時に買うべきだとつくづく思った次第である。

◆最大のデメリットはオープン時のリアの視界


年齢が古希の領域に近づくと、どうしても若い時と違って距離感が掴み辛くなる。とりわけ車幅だったり前後スペースの間隔だったりするわけだが、この車、オープンにすると畳んだ幌が影響してリアの視界が極端に悪くなる。『MINI クーパーS コンバーチブル』に試乗したのは今から3年前のこと。確かに当時だって視界が悪くなることを指摘していた(自分が)のだが、それが当時は大きなネガ要素だとは感じていなかった。つまりまだ若くてたとえ見えなくてもおおよその把握ができていたということだろう。とにかく渋滞時などは後車が何であるかほとんど把握できない。正直言うとこれが最大のデメリットであった。

もう一つのデメリットは自分の趣味で使っている大型のタックルケース(といっても釣りをするわけではないのだが)が収納できなかったこと。もともと先代ミニから下ヒンジで開くラゲッジスペースはとても小さく、収納は不得意であった。コンバーチブルの場合はイージーローディング機構と言ってラゲッジ開閉部分の上側を開く機構があって、それを使うとかなりの大物も収納しやすくなるし、リアシートをたたんで後席に入れるという手もあるのだが、それでも巨大なタックルケースを入れるのには難儀して、もっと楽をしたいという気持ちのほうが強かった。これも老化の成せる業か。


ただ、それを除けば冒頭話したようにこれを終の車にしたいという欲求が湧くほど、走りが気持ちよく爽快。それに後ろは見えずともそれ以外ではサイズ感が掴みやすく適度な大きさだと感じた。正直言うと、現行ミニのスペースユーティリティーはあまり高くなく、全幅1725mmの割には室内の幅はタイトだし、シート間の幅も狭く感じる。しかし、空間としては心地良い。日本の自動車メーカーだったらまずこのサイズにこの室内空間の設定はあり得ないだろうと思える。全長はほぼ軽自動車並みなのだが、日本の車作りは異様に室内空間のユーティリティーを重視する。自動車としてそれが居心地の良さにはつながらないと思うのだが、とにかくそういう車作りが多いのが日本だ。

◆マイナーチェンジで変わったポイント


さて、今回マイナーチェンジということでどこが変わったのか説明しよう。一つはフロントグリルである。ちょっと大型化されて、アンダーグリルからの空気取り入れが効率的になったようだ。これをデザインした人はきっと知らないだろうが、その表情を見るなり個人的には「カールおじさん」を思い浮かべ笑みをこぼしてしまった。昔からキリっとした出で立ちや佇まいを基本としてきたミニだけに、このとぼけた顔つきは少し違和感があった。まあ、日本だけの(あるいはぼく個人だけ)の印象かもしれない。

もう一つ変わったのが、メーターパネル。平たいオーバル型の小さなディスプレイがドライバーの眼前につく。それはあたかも角が取れた大型スマホが鎮座している印象で、ついにメーターパネルがこうなったかと感じたものである。もっともそれで情報不足があるかというとまるでない。ダッシュセンターには従来と変わらず、しかしながらタッチ操作が可能な大型丸型ディスプレイ(といっても使えるのは細長い8.8インチサイズ)が鎮座する。まあ見た目の印象はメーターディスプレイ以外ほとんど変わらない。



◆ゴーカートフィーリングというフレーズはもう卒業

デビュー当初からのゴーカートフィーリングというフレーズはそろそろ卒業してもよいと思える。もちろん攻めて走ればそうした走りも可能なのだが、今のミニとそして年齢が加わったドライバーには落ち着いてゆったりと走る小さいのにどっしりとした走りの感覚のほうが楽しめた。まあ、どっちらにも使えるということだが…。

3年前同様、7速DCTが装備された2リットル4気筒エンジンの組み合わせだが、そのスムーズさはステップATに迫るものがあり、ほぼその差がなく、むしろ素早いシフト感覚に好感が持てた。

ミニコンバーチブルの良さは、ドライバーの頭上だけをオープンにできる機能を有していることで、全部開けずともその爽快感を得られる点も大きい。季節はまさにオープンの最適。この車で走るときは、時々全開、それ以外は常にドライバーの頭上だけを開けて走った。そのほうが後方視界もよい。二通りに使えるコンバーチブルの形態を持つこの車、非常に魅力的である。



■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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