ホンダ ヴェゼル 新型《写真撮影 中野英幸》

ホンダの『ヴェゼル』がフルモデルチェンジして2代目になった。最近のSUVはユーティリティ性の低さが目立つが、新型ヴェゼルはしっかりと荷物が積めるモデルであった。

初代ヴェゼルは2013年に登場。『フィット』の主要コンポーネンツを利用したモデルだったが、今回のヴェゼルも同様で現行フィットをベースとしてSUVに仕立て上げられた。このため、パワートレインはフィット同様にピュアエンジンとe:HEVと呼ばれるシリーズハイブリッドモードをもつハイブリッドの2種類。ただし、ピュアエンジンモデルは1グレード、e:HEVモデルは3グレードと完全にe:HEVよりのラインアップとなっている。

◆静粛性が高い4気筒エンジン+ハイブリッド


e:HEVの走り出しはEVモードだ。バッテリー内にためておいた電力を使ってモーターを駆動する。試乗会では大雨に見舞われたためその静粛性は感じられなかったが、以前の取材時にクルマを動かした際に感じたのはかなり静粛性が高いというものだった。モーター走行のことも十分に考えた防音対策がなされている印象だ。

さらにこのモーター走行からエンジンが始動してもその静粛性は保たれる。ハイブリッドでモーター走行からエンジン走行に切り替わる際には、エンジン始動時の振動やノイズを感じやすいものだが、ヴェゼルは4気筒エンジンを採用したこともあり、静粛性は高いものとなっている。


前述のようにヴェゼルのハイブリッドはシリーズハイブリッド。駆動トルクはモーターから供給され、この状態でのエンジンの役割は発電機を回すこととなる。アクセルワークに対するトルク発生は強すぎず弱すぎず適度な感度で、自然なトルク感だ。とはいえアクセルペダルをグッと奥まで踏み込めば、トルクカーブが一気に上向きになることを感じるもので、モーター駆動のいいところを上手に使っている印象だった。

そして、高速道路などではモーターを切り離して、エンジン駆動となる。高速道路ではエンジンの出力をいったん電気に変更してとなると、ロスが出るのでエンジンの出力を直接動力に使うのは正解だといえる。

◆乗り心地はSUVらしくゆったり


スプリングを柔らかくした効果は十分にあるらしく、乗り心地はゆったりとしたものだ。SUVらしいといっていいのだろう。しっかりとサスペンションが動き、路面をつかんでいる感触がある。フロントサスペンションのフリクションを減らしたということもあり、スムーズな動きを獲得している。リヤサスペンションは駆動方式によって異なり、FFはトーションビーム式、4WDはドディオンアクスル式となる。4WDのほうが若干リヤサスの動きがよく、乗り心地もいい印象であった。

CUV(クロスカントリー・ユーティリティ・ビークル)に細分化されるようなSUVはプロペラシャフトを使って動力を伝達する機械式4WDを使用することが多いが、ハイブリッド系のSUVの場合はリヤにもモーターを配置し4WDを成立させることも増えてきている。ヴェゼルは比較的ライト系なSUVで、かつハイブリッドでもあるが、4WDはプロペラシャフトをもつタイプが採用されている。


取材時に片輪が浮き上がる(3輪接地の)モーグル走行を試したが、脱出性能はかなり高かった。ただしリアルワールドでのスタックは接地している3輪のグリップがしっかり確保できている事は少なく過信は禁物だ。

◆SUVの“U”の部分もしっかり確保


ヴェゼルはSUVの“U”の部分、つまりユーティリティもしっかり確保されている。リヤゲートの傾斜角が強いので定員乗車時のスペースはさほど広くないが、リヤシートを前倒しにした際の奥行きはかなり広め。リヤシートを前倒すればフラットで広々としたスペースも出現。さらにフロントシートも前傾させれば、奥行き190cmが確保できるとされているので、車中泊も快適に行えそうだ。

また、センタータンクレイアウトモデルの特徴ともいえるリヤシートクッションの跳ね上げも可能。さまざまなタイプの荷物を搭載できるようになっている。

ピュアエンジンモデルでも十分な走りをすることはいうまでもない。ピュアエンジンとe:HEVで同じグレードは存在しないが、e:HEVのベーシックグレードである「X」とガソリンエンジン車の「G」では価格差が37万9500円にもなる。もちろんハイブリッドのほうが購入後の燃料代は節約できるが、それで車両本体価格を補填はしきれないだろう。クルマに求めるのはパッケージングと基本性能、という方はピュアエンジン車という選択もありそうだ。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★(e:HEV)/★★★(ガソリン)
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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