VW ゴルフヴァリアント 新型(R-Line)《写真撮影 宮崎壮人》

◆もはや「別人格」なリヤスタイリング


振り返ると『ゴルフ』に最初のワゴンモデルが設定されたのは“III”の時から。以来、各世代ごとに用意され、今回で6世代目ということになる。これまで世界累計で300万台以上、日本国内でも15万台以上が販売されたという。

ところで初代の投入からリアルタイムで立ち会ってきた筆者だが、新型の情報を得て最初にスタイルを見たときには「ええっ!?」と驚かされた。テールゲートおよびリヤウインドが相当に寝かされていたからだ。説明を聞くとルーフラインもなだらかな後ろ下がりで、これは先代より空力性能を高めた要素のひとつという(Cd値は0.3→0.275)。

が、1、2世代の頃のルーフを水平に伸ばし、リヤエンドをスパッ!と裁ち落としたスタイルとはもはや別人格のよう。サイドシルエットでパッと見たときに、欧州仕様の『カローラ・ツーリング』(日本仕様よりもホイールベースが60mm長い)のスタイルに寄せてない?と思ったのはここだけの話だが、今や多用途性ではSUVという選択肢も増えた中で、ワゴンの立ち位置も変わってきているせいなのだろう。

◆荷室、後席の拡大はマジック?


とはいえ(ここがマジックだが)ことラゲッジスペースは、先代からさらに拡大させている。5名乗車時の611(先代:605)リットルから2名乗車時の1642(同:1620)リットルがその数値。新型ではホイールベースが35mm延長され、これにより前席シートバック背面以降のスペースが増大、ラゲッジ容量と後席足元空間のゆとりを広げたという理屈だ。

実際のスペースは床面の幅が1000mm、奥行きが通常1062mm、後席を倒すと1845mm(数値はVW計測値)。スッキリと広く使いやすいのはこれまで通りで、例の傾斜を強めたテールゲートのヒンジの位置がやや前方に移動し、このことで、奥まで荷物を載せ下ろしをするような際、開口部と人の頭が干渉しにくくなった。

また従来はテールゲートを開けた状態でシル部分(開口部下辺)に備わるストライカーがムキ出しにならないよう可動式のカバーを備えていたが、新型ではそのカバーが(理由は未確認だが)省略され、凹みにストライカーが備わってみえるシンプルな構造に戻された。


後席は実際に座ってみて、余裕が増したことは肌で感じられた。また実寸を計った訳ではないが後席用のドアの開口部も前後サイズと開口部形状にゆとりが増し、乗降性がとてもいい。この点をハッチバックからヴァリアントに座り直して較べてみたが、シート形状、サイズは基本的に共通としても、空間や窓の広さで感覚的に1クラス上のクルマのようにさえ感じられた。

◆最良の味は高速巡航で


試乗車は48Vマイルドハイブリッドシステム採用の1.5リットルeTSI(スタイル)で、エンジン始動、エネルギー回生、エンジン出力のアシストを行なうBSGを装備。エンジン本体はオットー燃料サイクル(1リットルはミラー燃焼サイクル)を採用したユニットで、ACT(アクティブシリンダーマネージメント)機能も搭載する。組み合わせられるトランスミッションは乾式7速DSGだ。

一方でサスペンションでは、1.5リットルモデルということで、リヤが4リンク(1リットル=トーションビーム)、フロント側はサブフレームがアルミ製(同=スチール)となり、R-Lineではスポーツサスペンション、17インチタイヤ&ホイールが標準装備となる。


走らせた印象だが、今回は山道がメインの試乗コースだったせいか、同じR-Lineのハッチバックと較べると、アチラのほうが走らせている時のクルマとの一体感が上に感じた。伸びたホイールベースと車重、前後重量配分の差、ボディ構造の違いが大きいのだろうが、おそらく街中や高速巡航で最良の面が味わえるのだろう……と思えた。その証拠に、後席で感じる乗り味はフラットライドで音と振動も低く、快適に感じられた。

動力性能はドライブモードの切り替えで思いどおりの走らせ方が可能で、コースティング、気筒休止も頻繁に実行されるなど、現代的なパワーユニットの所作もみせる。1リットルモデルを日常シーンで乗ってみての印象も近くお伝えしたい。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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