ジープ コンパス リミテッド《写真撮影 中村孝仁》

近年ジープの人気が富に高くなっている。SUV市場が活況を呈しているからと単純には片付けられない伸び方だ。その理由として考えられるのは、日本で一番売れているジープ、『ラングラー』を筆頭に、そのクオリティーが向上してきているからではないかと感じる。

贔屓目に見てもアメリカンプロダクトのクオリティーはトップエンドのモデルを除くとどれも、そこそこ…というものが多かった。アメリカンを愛するユーザーはそうした「そこそこ」に目をつぶって愛し続けてきたのだと思う。しかし今、その「そこそこ」は「いいじゃない」に変わったように感じる。そこに来てジープ本来のタフさだったり、高い走破性能だったりがアウトドア人気、SUV人気と共に相乗効果をあげてジープ人気に繋がっているのだろう。

◆上質感と最新トレンド感に溢れる進化


前回『コンパス』に試乗したのは現行モデルが誕生した2018年のこと。だからもう3年も前だ。今回は外見をほぼ変えずに中身を充実させ、さらにインテリアを劇的に変身させた。マイナーチェンジ前のモデルの内装は現在日本市場のラインナップに残る『グランドチェロキー』や、『チェロキー』といったモデルと共通のデザインテイストでまとめ上げられているが、ニューモデルは明らかに方向御転換をしたデザインテイストを持つ。

一言で言ってその仕上がりは上質感と最新トレンド感に溢れる。メータークラスター内には10.25インチの巨大デジタルメーターが装備され、センターコンソールには10.1インチのタッチスクリーンディスプレイが並ぶ。ダッシュボードは手触りの良いソフトタッチの素材で包まれ(本国ではボルスターと呼んでいる部分)、加飾のセンスも中々。手に触れるほとんどの部分がソフトパッドで覆われた。スイッチ類もすべてモダンなデザインに生まれ変わり、ジープのイメージが大きく変わった。

従来は丸いメッキトリムの中にJEEPの文字が刻まれていたステアリングセンターのエンブレムは、新たにエッジを落とした長方形のスタイルに変更されている。このエンブレムは日本市場ではコンパスが最初に採用するもので、今後ジープ各モデルは順次このデザインに変えられていくのだそうだ。



◆ADASが装備されたことが「第一歩」

メカニカルな部分には変更はない。即ち2.4リットル、タイガーシャークユニットにフィアット独自のマルチエアメカニズムを組み込んだヘッドを載せたエンジンと、ZF製9速ATの組み合わせである。このエンジン、16バルブヘッドではあるがカムシャフトはシングル。即ちSOHCである。

マルチエアは中々凝ったメカニズムではあるものの、それが特に燃費等に効果的かというと必ずしもそうではなく、試乗中の燃費も10km/リットルを超えることはなく、最終的には7.5km/リットルにとどまった。もっとも、WLTCの市街地モードの燃費が7.7km/リットルなので、ほとんど高速走行をしなかった今回の試乗はほぼほぼWLTCモードに近い値を示したことになる。


今回はADAS系の進化も著しい。このクルマは今年のシカゴショーで発表された2022年式と銘打ったモデルで、ブラインドスポットモニタリングやリアクロスパスディテクションをはじめ、ACCと新たに装備されたアクティブレーンマネージメントが注目すべき装備だったのだが、その常に車線内をキープしてくれるアクティブレーンマネージメントを実際に使ってみると完成度はイマイチ。とはいえ、装備されたことが第一歩であり、今後のチューニングが待たれるところである。

◆ジープのイメージを大いに変える一台

試乗車は最上級の「リミテッド」で、グレードの中で唯一の4WDモデルだ。他のグレードはいずれもFWDである。そのリミテッドが装備するのはジープ・アクティブドライブと呼ばれるシステム。FWDベースでありながら、状況によって100%のトルクをリアに伝達する仕組みを持っている。もっともそんな走りを出来る試乗環境ではなかったので、もっぱらオンロードでオートモードに終始した。個体差なのか駆動系から妙なノイズが出ていて気になった。

それにしても新しいコンパスは外観の変化こそ最小限だが、劇的な内装の変化やADASの充実装備によって、「タフでワイルド」というジープのイメージを大いに変える一台となった。しかも充実した装備と美しい内装に様変わりしながら価格的には最小限の上昇にとどめている。それにコンパスの顧客平均年齢は、同等のSUV購買者の業界平均よりも9歳も若いという。若い購買層が買っている限り、ジープの未来も明るい。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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