キャデラック XT4 スポーツ《写真撮影 中村孝仁》

キャデラックが誕生したのは1902年と古く、当然のことながら私は生まれていない。だから「史上最も若々しいイメージのキャデラック」というのは真実ではないかもしれない。

しかし、歴史を見てもキャデラックは高級車として王道を歩いてきたメーカーであり、廉価版になびいてはみたものの、GMによってそれは却下され(ラサールというブランド)、廉価版というよりもコンパクトなモデルを作り始めたのは1990年代のことだから、(その当時のことはもちろん良く覚えている)本格的に若々しいキャデラックを作ったのは、これが初めてだといって間違いないだろう。

今回の『XT4』にはプレミアム、プラチナム、スポーツの3グレードが用意されている。今回試乗したのはスポーツ。といってもいずれのモデルもエンジンやトランスミッションに変化はない。唯一スポーツの特徴としてはリアルタイムダンピングサスペンションが装備されていることで、後は外装やホイールなどの細かい意匠に違いでしかない。

では一体どこが若々しいと感じさせるか、それはスタイルもさることながら「走り」である。

◆「ゆったり優雅」な持ち味を覆す性格


キャデラックといえば、先日乗った『XT6』にしてもあるいは『CT5』にしても、その走りはゆったり優雅が持ち味。勿論アクセルを深く踏み込めば当然ながらそれなりの走りは披露するのだが、持ち味がどこにあるかといえば前述の通りなのである。ところが末弟のXT4はそうしたキャデラックの持ち味を覆す、どちらかといえばかなりやんちゃな性格の持ち主だった。

まだアメリカのクルマが鎖国的にその個性を発揮していた時代、彼らはローンチフィールという、いわゆる走り出しのフィーリングをとても重要視した。つまりは踏むとドーンと加速するイメージである。当時はV8が当たり前の時代だったから、パフォーマンスも当然ながら有るし、そのトルク感もすさまじかった。

翻ってXT4は直4ターボエンジン搭載である。でも、ちょっと踏んだだけではじかれたような加速をする。車重だって1760kgと決して軽いわけではないのだが、とにかくそのローンチフィールはかなりのものだと思う。

◆これまでとは一線を画す直4ターボエンジン


そしてこのエンジン、これまでにあった直4ターボエンジンとは一線を画すもので、最初に搭載されたのがこのXT4。2019年に誕生したものだ。ツインスクロールターボにアクティブフュエルマネージメント、即ち可変気筒システムまではわかったのだがもう一つ秘密があった。それが「スライディングカムシャフト」である。

これ、2分割されたカムシャフトが横方向にずれることによって、ハイリフト、ローリフトそれにシリンダーシャットダウンを可能にしているそうで、何やらホンダのVTECそのもののようにも感じるが、GMはカムシャフトをスライドさせて同じような作用と得ているのだという。こいつのおかげかどうかは知らないが、エンジンは全域でとても元気がイイ。

ついつい飛ばしたくなるのだが、一方でローリフトの際の燃費はどうかというとこいつは決して褒められたものではなく、おおよそ250km走った総平均は9km/リットルであった。もっとも表示は11.1リットル/100kmというもので、XT6では日本的に1リットル当たりの燃費を示していたが、XT4はそうではなくヨーロッパ風とでも言おうか、我々にはなじみの薄い表示法であった。

◆若々しいXT4は、「スポーツ」がお買い得


足の動きもやんちゃである。勿論ホイールベースが他のキャデラックと比べた時に短いこともあってか、広い海原を行く大型船的な乗り心地ではなくどちらかといえば忙しない。また、アメリカンライドはここでも健在で、少しピッチングが多い。しかしそれはまさにキャデラックのキャラといっても過言ではなく、昔のアメリカ車のように一度踊り出したら止まらないということはないので、収束がちょっと遅れ気味というだけの話である。

トランスミッションはメルセデスの向こうを張った9速AT。サプライヤーに頼らない自家製である。スムーズなことは申し分なしで、マニュアルモードでもなかなか行ける。このあたりも若々しいと評したポイントだ。

それにしてもこのほぼ何でもついているDセグのSUVが640万円はかなりお買い得な気がする。スポーツは中間グレードで最上級はプラチナムの670万円だが、敢えて若々しいと評したXT4はリアルタイムダンピングサスペンションが付いたこのスポーツがお買い得というか、お勧めグレードのような気がする。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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