水素カローラ(ルーキーレーシング)《写真撮影 雪岡直樹》

スーパー耐久第3戦富士24時間レースが23日、富士スピードウェイで開催され、注目を浴びた「水素カローラ」が完走した。レース後にトヨタ自動車の豊田章男社長が会見を行った。

トヨタGAZOOレーシングとルーキーレーシングは23日、スーパー耐久シリーズ 2021 Powered by Hankook 第3戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」(以下富士24時間)が終了後、今回の挑戦について記者会見を行った。

走行距離:1634km
周回数:358周
走行時間:12時間
水素充填時間:4時間
水素充填回数:35回

と具体的な数値を公表し、今回の挑戦について総評した。

1周4563mの富士スピードウェイを358周すると1634km走行したことになる。レースは24時間で何回周回できるか、誰が一番速く走ったかを争うのがレースの基本だ。その中で水素カローラは24時間のちょうど半分の12時間を走行し、水素充填時間にのべ4時間、回数で35回の充填が行われた。

レースが始まる前の会見でも説明されたが、180Lの水素を搭載し富士スピードウェイをおよそ13周前後でピットインして水素を充填する。充填時間は7〜8分、その他に行われるドライバー交代なども含めれば、1回のピットインで10分少々の時間が掛かる。水素充填も充填機の場所まで移動し、2つの充填機で圧力調整をしながら充填していけば、それなりに時間がかかってしまうのはやむをえない。

それでも完走したことについて、豊田章男社長とドライバーのモリゾウ選手が少々入り混ざっての会見だったが、「無理なスケジュールの中でレースに参加でき、完走することもできた。この環境に立てなければトラブルも洗い出せず、開発は1周遅れになっていたかもしれない。こういう経験ができたことが大事だ」とレースに参戦し、無事完走したことについて語る。

同席した、GAZOO Racing Company Presidentの佐藤恒治氏は、「技術的心配はプレイグニッションと呼ばれる異常燃焼をどう制御するかだった。今回レースに参戦したことで、刻々と状況が変わるなかで、ある程度は想定内で、手の内で押さえ込むことができた」と技術的な不安点は克服できたようであった。

実は深夜に4時間程度ピットに留まることがあったが、水素系のトラブルではなく、電気系のトラブルで、部品の手配などで手間取ったことでピットストップが長引いてしまったと言う。「水素問題ではなく、克服しておかなければならない別の問題だった」と語る。

今回水素カローラは、片岡龍也監督のもと、小林可夢偉、井口卓人、佐々木雅弘、松井孝允、石浦宏明、そしてMORIZOの6人でドライブした。

小林可夢偉選手は「エンジンのレスポンスや乗り心地はガソリン車と変わらない、言われなければ気がつかないくらい。重量が全体的に重たいので、レースを行うのであれば、今後重量を軽くしていく必要がある」と述べる。また「今回は勝つためでなく、ゴールに車を持っていくことが重要でそれが難しく、24時間走り切り、チェッカーを受けたことが重要」と語った。

石浦宏明選手は「他車とのコーナリングやブレーキング競争をして、ちゃんと『レース』ができていた。決して速い訳ではないが、他車と抜きつ抜かれつの戦いができた。良いエンジン音を聴きながら気持ちい走りができた。最初の挑戦からレースができていることが凄いと感じた」と感想を語った。

また開発ドライバーもしている佐々木雅弘選手は「決勝では燃費に注意しながら走行し、良いところも悪いところも出てきた。今後を見据えた良い方向へ持っていきたい」と語った。

今シーズンは今後もスーパー耐久シリーズに参戦していきたいと考えているが、水素ステーションの設置方法や、スペースの問題などサーキットやS.T.O.などと協議していく必要があるという。

今後の水素カローラがどのような走りを見せるのか気になるところだ。

水素カローラ(ルーキーレーシング)《写真撮影 雪岡直樹》 水素カローラ記者会見《写真撮影 雪岡直樹》 水素カローラ記者会見:ルーキーレーシング《写真撮影 雪岡直樹》 水素カローラ(ルーキーレーシング)《写真撮影 雪岡直樹》 水素カローラ(ルーキーレーシング)《写真撮影 雪岡直樹》 水素カローラ(ルーキーレーシング)《写真撮影 雪岡直樹》 水素カローラ(ルーキーレーシング)《写真撮影 雪岡直樹》 水素カローラ(ルーキーレーシング)《写真撮影 雪岡直樹》 水素カローラ記者会見:豊田社長《写真撮影 雪岡直樹》 水素カローラ記者会見:佐藤プレジデント《写真撮影 雪岡直樹》 水素カローラ記者会見:小林選手《写真撮影 雪岡直樹》 水素カローラ記者会見:石浦選手《写真撮影 雪岡直樹》 水素カローラ記者会見:佐々木選手《写真撮影 雪岡直樹》