メルセデスベンツは5月12日、新型EVの『EQS』(Mercedes-Benz EQS)の生産を、ドイツ・ジンデルフィンゲンの新世代工場「ファクトリー56」で開始した、と発表した。
「メルセデスEQ」は、メルセデスベンツが立ち上げた電動車に特化したサブブランドだ。メルセデスEQブランドの最初の市販車として登場したEVが、SUVの『EQC』となる。EQブランドの市販第2弾は、ミニバンの『Vクラス』ベースの『EQV』、第3弾は新型『GLA』がベースのEV『EQA』だった。
EQSは、コンセプトカーの『ヴィジョンEQS』の市販バージョンとなる大型EVサルーンで、新型『Sクラス』のEVバージョンに位置付けられる。EQSは、ラグジュアリーカーおよびエグゼクティブセグメントのEVに、メルセデスベンツの新しい電動アーキテクチャの「EVA」を採用した最初のモデルになるという。
◆ツインモーターは最大出力523hp
欧州での発売当初、「EQS 450 +」と「EQS 580 4MATIC +」の2グレードが設定される。2WD(後輪駆動)のEQS 450 +は、リアアクスルに電動パワートレインの「eATS」を搭載する。4WDの「4MATIC」となるEQS 580 4MATIC +では、フロントアクスルにもeATSがレイアウトされる。
EQS 450 +の場合、モーターは最大出力333hp、最大トルク57.9kgmを発生する。0〜100km/h加速は6.2秒、最高速は210km/h(リミッター作動)だ。EQS 580 4MATIC +の場合、モーターは最大出力523hp、最大トルク87.2kgmを引き出す。0〜100km/h加速は4.3秒、最高速は210km/h(リミッター作動)だ。NEDC(新欧州サイクル)による100km走行あたりの電力消費量(複合モード)は、EQS 450 +が19.1〜16.0kWh、EQS 580 4MATIC +が20.0〜16.9kWhと発表されている。
◆1回の充電での航続は最大770km
4MATICには、トルクシフト機能が付き、フロントアクスルとリアアクスルの間で駆動トルクをインテリジェントかつ継続的に配分する。機械式の4WDよりも、優れたレスポンスを可能にしているという。回生ブレーキは、ステアリングホイールのパドルシフトによって、ドライバーが3段階で調整できる。
EQSは、騒音や振動などのNVH性能に対する高い要求を満たすという。ローター内の磁石は、最適なNVH対策を施した。eATSは、特殊なフォームマットで覆われている。インバーターのカバーは、3つの金属とプラスチックの層で作られたサンドイッチ構造とした。ホワイトボディには吸音フォーム素材を多く使用。テールゲートの2つの仕切りがノイズを低減するという。
EQSには、エネルギー密度を高めた新世代のバッテリーが搭載される。蓄電容量は107.8kWhとし、『EQC』よりも約26%容量を増やしているという。1回の充電での航続は、最大770km(WLTP計測)としている。
◆EVと内燃エンジン車を同じラインで生産
メルセデスベンツは、このEQSの生産を、ドイツ・ジンデルフィンゲンの新世代工場、ファクトリー56で開始した。ファクトリー56において、新型Sクラスとともに組み立てられている。
ファクトリー56は近代的な生産施設で、革新的な技術とプロセスを導入するのが特長になる。メルセデスベンツによると、ファクトリー56はCO2ニュートラルで、高い生産品質を実現するために、必要なすべてのテクノロジーを備えているという。例えば、工場の屋上の太陽光発電システムによって、年間電力需要の約30%をまかなう。
ファクトリー56では最大限の柔軟性が追求されており、EQSや新型Sクラスなどのさまざまな車種や、EVや内燃エンジン車などの異なるパワートレイン搭載車を、同じラインに組み立てることができる。パワートレインをボディに組み付ける「フルフレックスマリッジ」工程では、異なるパワートレインを同じラインを流れる車体に組み込むことを可能にしている。
また、「MO360」と呼ばれるデジタルシステムの導入によって、生産の効率も大幅に向上した、としている。
メルセデスベンツ『EQS』の生産開始…Sクラス のEVバージョン
2021年05月14日(金) 06時45分
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