トライアンフ トライデント660《写真撮影 雪岡直樹》

ビギナーだけでなく、ベテランに対しても手放しにオススメできる大型バイクとは何だろう?そう考えた時に候補に挙がるマシンはいくつかあるものの、様々な要素を考えるとそれは一握りに絞られる。

そんなスペシャルな1台に今年名乗りを上げたのがトライアンフの『トライデント660』である。


その理由はいくつもあるが、まずは最初にふるいにかけられる価格設定で合格印が与えられる。テストする身としても、気分的に気楽に接することが出来るのが良い。そして跨ってみれば、車格のちょうど良さ。体格に恵まれているライダーであったとしても、とくに経験の少ないうちはこのコンパクトさに恩恵を感じるはずだ。

◆これぞトライアンフの3気筒と思えるフレキシブルなエンジン


トライアンフのマシンであり、心臓部は3気筒エンジンを搭載しているということもアピールポイントとなるかもしれない。ブランドだけでおすすめするなんてことはしない。やはりその走りが評価出来るからである。660ccという、大型免許で乗るにはちょっと控えめな排気量ではあるが「本当にそれだけ?」と思うほど、公道でのパワフルさは意外でもある。

信号からのスタート時。油断してラフに開ければオオッと仰け反る加速力。そのまま開け続ければ、パワフルに高回転まで回り切る。トライアンフの3気筒らしい官能的さはやや薄味ともいえるかもしれないものの、低回転域から高回転域までストレスなく回るフレキシブルさは2気筒でもなく、4気筒でもない「これぞ3気筒!」である。

そして、その回転上昇は程よいところで終焉を迎える。狂ったように回り続けるエンジンもそれはそれで魅力的かもしれないが、手に余ることない出力とパワー特性が使い勝手の良さに繋がっている。

◆トランクションコントロールもライディングモードも標準装備


トラクションコントロールがマストなほどのパワフルさではないとはいえ、それを標準装備していることも評価出来るポイントであるし、ライディングモードも備えている。もちろん価格設定(97万9000円)から言って妥協点がないわけではない。個人的にはサスペンションの動きにもう少ししなやかさがあればと感じるのであるが、これもバランスとしては不満はなく、ただ、もう少ししなやかだったらな、と思う程度。

逆にカスタムとして手が出しやすい場所だけに、比較的イージーにその不満を解消できるはず。これもベースとなる価格が低いからこそ、考えられる楽しみの延長である。コンパクトな車体とともにヒラヒラと自由度の高いハンドリング。荷重配分もニュートラルで、その気になればスポーティに攻めに転じることも受け入れてくれる。

ハードに攻め込むとややフロントエンドが高くも感じられるものの、あえて日常ユースでの使い勝手を第一に考えたからであろう。その設定が懐の深さにつながっている。2021年モデル、おすすめマシンの筆頭である。



■5つ星評価
パワーソース:★★★★
ハンドリング:★★★★
扱いやすさ:★★★★
快適性:★★★
オススメ度:★★★★

鈴木大五郎|モーターサイクルジャーナリスト
AMAスーパーバイクや鈴鹿8耐参戦など、レース畑のバックボーンをもつモーターサイクルジャーナリスト。1998年よりテスター業を開始し、これまで数百台に渡るマシンをテスト。現在はBMWモトラッドの公認インストラクターをはじめ、様々なメーカーやイベントでスクールを行なう。スポーツライディングの基礎の習得を目指すBKライディングスクール、ダートトラックの技術をベースにスキルアップを目指すBKスライディングスクールを主宰。

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