初代ローレル マル中デザイントーク/プリンスの丘パレード嶽宮 三郎

東京都武蔵村山市にある東京日産自動車販売・新車のひろば村山店で4月18日、「初代ローレル マル中デザイントーク/プリンスの丘パレード」が開かれ、『ローレル』4台のほか関連のある『ブルーバード』や『フェアレディZ』などが集まった。

2018年に発売から50周年となるのを機に初代「C30」型のオーナーズクラブを結成して以来、毎年ミーティングを開いている。ローレルが当時の生産拠点だった日産村山工場跡地にある同店が協力し、全日本ダットサン会のブルーバード510クラブがバックアップするのも恒例化。今回はC30のエクステリアデザイナーを担当した澁谷邦夫氏を迎えてのトークコーナーが目玉となった。

マル中とは、当時日産社内で使われていた「プロジェクト マル中」の略称で、小型車の『ブルーバード』と中型車の『セドリック』の間を埋めるハイオーナーカー開発の呼称だった。結果、初代ローレルは1968年にデビュー。直線基調のエレガントなボディに、4輪独立懸架やラック&ピニオン式のステアリング、プリンス自動車直系のG型1.8リットル直列4気筒SOHCエンジンなど、優れたメカニズムを搭載していた。

澁谷氏は千葉大学工学部工業意匠学科卒業後、1963年に日産自動車に入社。設計部造形課に配属されて間もなく初代『プレジデント』のエクステリア全部品のデザインを担当。65年には(後の)ローレルのエクステリアデザインを担当することになった。このころの日産は若手をどんどん起用していく気風があったという。

コンセプトは「格調」「気品」「スポーティ」。造形手法としては、フロントウインドウの思い切った傾斜、三角窓を無くしたクリーンなサイドヴュー、張りのある面構成にアクセントとして堀の深いダイキャストとステンレスによる部品の配置などで、シーケンシャルリアコンビネーションランプ(いわゆる”流れるウインカー”=内から外に向けてランプが連続的に点灯する方向指示器)も澁谷氏のアイデアだったという。また、それまで1/4だったクレイモデルを1/1のフルサイズにしたり、FRPによるプロトタイプを制作するなど、新しい手法も盛り込んだ。

しかし1966年、日産とプリンスの合併という青天の霹靂。ローレルを生産する予定だった横須賀の追浜工場にはセドリックと車種統合した『グロリア』が入ることとなって、ローレルはエンジンを日産のL型からプリンスのG型搭載に変更され、旧プリンスの村山工場で生産されることになった。

その前の1965年、『ブルーバード』(410)がライバルのトヨタ『コロナ』(RT40)に販売台数を抜かれ、次期510型は発売を前倒して1967年にデビューさせることに。一方で発表寸前だったローレルはゼロから生産準備をすることになって遅れに遅れた発売となった。もともとローレルのスタジオの隣には510ブルのスタジオがあったという。先行するローレルの部品図は510スタジオへ移されるなどがなされた。後年、ローレルが510ブルに似ていると言われたが逆の話なのである。

1968年4月のローレル発表会で「もし1年半早く発売されていたら、トヨタはかなり慌てた」と当時のトヨタ自動車販売初代社長・神谷正太郎氏が語ったという。この年の9月、トヨタは『コロナ・マークII』を発売し、ローレルを猛追することになる。

さて、この日は4台のC30が集まった。最初期でまだ”ケンカワイパー”だった頃の1968年式、その改良型である1969年式、車高調を組み込んだ1969年式、1970年式のハードトップ2000GX。「足立5」のシングルナンバー2台が並んだのは驚きであった。その後は恒例となっている”プリンスの丘”周辺のプチドライブも満喫。ローレルにゆかりのある510ブルや310ブル、『オースチンA50』『フェアレディZ』も集まって彩を添えた。

御年81歳の澁谷氏は現在も北海道で「北のデザイン研究所」を主宰するなどの現役デザイナー。現在の愛車はシトロエン『C3』だが、教え子が見つけてきたC30も手元にあり、たまにドライブに持ち出すという。「まだ20代だった若い頃に自由にデザインができて楽しかったですね。こうして今もローレルを好きな人がいてくれて嬉しい限りです」と終始笑顔だった。

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