日産ノート e-POWER《写真提供 日産自動車》

新型日産『ノート』の進化ポイントはいくつかあるが、そのひとつに雪道での走行性能がある。とくに新型の4WDはリアモーターが大幅に出力アップされ、トルク配分もほぼ全速度域で細かく制御されるという。

一般的なハイブリッド系の4WDは、メイン駆動輪の反対側に独立したモーターを搭載し、スリップ時など限られた条件でトルクを発生させるアシスト的な存在のものが多い。機構としては4WDだが、常時4輪が働いているわけではない。もちろん通常走行で、常時4WDにする必然もないといえばないのだが、独立したパワーソースで常に4輪(前後)を協調動作させることは簡単ではない。結果として、片側のみスリップ、高速での直線巡航のような制御しやすいところでのアシストがメインとなる。

新型ノートは、全輪モーター駆動の強みを生かし、4WDでのトルク配分と走行範囲を広げている。発進、坂道、高速道路、コーナリング、低ミューなどの状況によってフロントとリアのトルク配分を52:48から70:30まで細かく制御する。このような制御は、1つのパワーソースからセンターデフを介して前後に配分する場合は、難しいものではないが、独立したパワーソースでは簡単ではない。

過去にフォルクスワーゲンがツインエンジンゴルフを競技用に開発していたが、実践投入はされなかった。パイクスピークでモンスタースポーツがツインエンジンカルタスを投入し実績を残している。そしてその制御はツインモーターのEVに受け継がれた。

日産のEVおよびe-POWERの電子制御は、1/10,000秒の単位で行われており、インバーターによるモーター制御はそのスピードに対応できる。この技術は発売予定のアリアにも投入されているもので、新型ノートe-POWERは本格的電動4WDだといえる。

北海道出身の開発メンバーは、雪道の性能にもこだわったといい、凍結路面、新雪、圧雪の坂道発進やコーナリングでも適切なトルク制御を行っている。雪のスタック脱出にも自信があるという。

片輪だけ氷に乗ったり、新雪にスタックしたりしたら、さすがに前後のトルク配分制御だけでは難しいのではないかと思ったので、ブレーキベクタリングや左右のトルク制御は行っているのか聞いてみた。左右のトルク配分については検討しているが、ミリ秒以下で瞬間のトルク制御でかなりの状況に対応できたので、今回は左右の制御は入れなかったそうだ。

スタック脱出とは直接関係ないが、FF、4WDともに回生ブレーキの協調制御が進化している。低速時のクリープを再現するようにしたので駐車や微速運転がやりやすくなっている。速度やモーメント、ペダル操作だけでなく、タイヤのスリップ率を計測し、路面のミュー(摩擦係数)も判定することで、加減速時の回生協調の介入感、違和感を減らしている。4WDでは減速時の姿勢も考えてリアの回生ブレーキを制御している。

乗り味や走行性能の追求は、モーターや回生ブレーキのようなEVとしての制御だけで行っていない。フロントサスのキャスターは前モデルより大きくし直進安定性を高める。コーナリング等での応答性向上のため、フロントサスペンションのロアアームの支持位置をホイールセンターに近づけるようにしたり、サブフレームをフロントメンバーに結合させる井桁構造としたり、ブッシュ類を含めた全体の剛性を上げている。フロントのストラットタワーバーは、単にリンクでつなげるだけでなく、競技車両のようにアッパーマウント周辺を補強するような部品を使っている。

リアのトーションビームは断面形状を変更し、せん断中心を上に移動させ、インデュースドステアを向上させている。ロール時の反対側のタイヤの接地性やコーナリングフォースをアシストするものだ。さらにリアのダンパーは前モデルより大径化されストロークも改善されている。

各ダンパーのバンプラバーはゴムからウレタンに変更され、入力初期をソフトに、中盤からフルバンプまでをしっかり受け止めるようにして、走りの質感を高めている。ステアリングの応答性が上がり、修正操舵が減ったり、体が変にゆすられることがなくなった半面、乗り味を少し硬いと感じる人はいるかもしれない。

しかし、ステアリングのギア比を18.5から15と、よりクイックにすると(通常ハンドルが重くなる)同時にEPSのサーボモーターを強力なものにしている。EPSの制御もよりアクティブなものとなり、ハンドルの切り込みや戻し(セルフアラインメント)が自然にできるようになっている。

新型ノート4WD《画像提供 日産自動車》 新型ノート4WD《画像提供 日産自動車》 新型ノート4WD《画像提供 日産自動車》 日産ノート新型《写真撮影 中野英幸》 日産ノート新型《写真撮影 中野英幸》 日産ノート新型《写真撮影 中野英幸》 日産ノート新型《写真撮影 中野英幸》