トヨタ・カムリ《写真提供 トヨタ自動車》

◆乗用車7社のうち5社が通期予想を改善へ修正

日本の乗用車メーカー(上場7社)の2021年3月期・第3四半期(4〜12月)の連結決算が10日までに出揃い、コロナ禍による逆境からの業績回復が鮮明になった。

足元では世界的な半導体需給のひっ迫が影を落としているが、この影響も限定的であり総じて来期にはもち越されない見通しとなっている。第3四半期の実績とともに公表された各社の通期業績予想は、上方修正が相次いだ。7社のうち、据え置いたスズキ、半導体不足の影響が大きく出て下方修正したSUBARU(スバル)を除き、5社が大幅と言ってよい上方修正としたのだ。

乗用車7社の通期営業利益の修正状況
企業 営業利益(増減率) 今回修正額
トヨタ 2兆円(▲17%) 7000億円上方
ホンダ 5200億円(▲18%) 1000億円上方
日産 ▲2050億円(−) 1350億円上方
スズキ 1600億円(▲26%) 据え置き
スバル 1000億円(▲53%) 100億円下方
マツダ イーブン(−) 400億円上方
三菱自 ▲1000億円(−) 400億円上方
▲は減少または赤字

このうち販売の回復が顕著なトヨタは、営業利益を一気に7000億円もの上方修正とし、2兆円の大台乗せとした。達成すれば2兆円突破は2018年3月期から4期連続となる。大幅修正につながったのが第3四半期(10〜12月)の業績だ。この3か月のトヨタおよびレクサスブランドのグローバル販売は261万6000台で、前年同期を7%上回った。

◆リーンな固定費で稼働し、四半期では最高益になったトヨタの10〜12月

いち早く市場が回復して過去最高ペースの販売が続く中国に加え、連結販売ベースでは北米が13%増、日本と欧州は15%増といずれも2ケタの伸びになった。一方で、コロナ禍への対処として固定費の圧縮や原価改善への取り組み強化も進んでいたため「下期(10月〜)に販売が回復した時に、固定費がリーン(筋肉質)ななかで稼働ができた」(近健太執行役員)ことが収益に貢献した。第3四半期のみの営業利益は9879億円(54%増)と、実に四半期での過去最高に達したのだ。

上方修正した各社の要因は、トヨタ以外でも原価改善や固定費など費用圧縮と販売回復の相乗効果という点で一致している。ホンダは、第4四半期(1〜3月)で半導体不足による販売への影響を10万台見込んだものの、第3四半期までの堅調な回復を背景に、通期営業利益予想は1000億円上方修正した。

ホンダの倉石誠司副社長は「半導体の供給不足がなければ、コロナの影響を吸収し、為替影響を除けば咋年度を上回る(営業利益の)報告となっていたので残念」と口惜しがった。ただ今回、通期純利益は750億円増額の4650億円(2%増)へと上方修正している。持分法による投資利益が増大した一過性の要因はあるものの、7社では唯一、今期の純利益が増益になる。

◆マツダは赤字予想からイーブンに修正

第1四半期の発表時点から今期決算の赤字を予想してきた日産自動車、マツダ、三菱自動車工業の3社も今回、通期予想を大幅に上方修正した。日産は、北米での販売の質の改善、全社での固定費削減への取り組みなどにより、第3四半期単体の営業利益は271億円と、黒字に転じた。通期予想では半導体不足などによりグローバル販売を15万台下方修正したものの、営業利益は1350億円上方修正した。内田誠社長は、23年度までの再建計画は「着実に進捗している。このモメンタムを、21年度での営業利益率2%(比例連結ベース)の達成につなげたい」と来期の黒字転換に手ごたえを示した。

マツダも第3四半期の営業損益が209億円の黒字に転じた。同期までの累計では広告宣伝費や研究開発費の抑制・効率化などによる「固定費・その他」の圧縮で610億円の営業増益を確保している。通期の営業損益は従来比で400億円上方修正のイーブン(前期は436億円の黒字)に見直し、赤字脱却が見えてきた。

自動車産業にとって来期も依然としてコロナ禍の影響は免れず、半導体不足も不安材料だ。台当たりの半導体使用量が比較的多く、影響を受けやすいスバルの岡田稔明専務執行役員は、来期にも「確実にひっ迫の影響が残る」と、対応を急いでいる。もっとも、ホンダは「(来期への影響は)基本ゼロだと見ている」(倉石副社長)という。トヨタは卓越した調達部門とサプライヤーの連携で、これまでも減産を回避している。総じて半導体の影響の長期化は避けられそうだ。

ホンダCR-V(中国仕様)《photo by Honda》 MAZDA MX-30 EVモデル《写真撮影 中野英幸》 トヨタ自動車の近健太執行役員《写真提供 トヨタ自動車》