プジョー SUV 2008 GTライン《写真撮影 中村孝仁》

プジョー『SUV 2008』が、ぐっと都会派になって戻ってきた。以前のモデルは個人的にSW(ステーションワゴン)の市場を引き継ぐものだから、SUVってのはどうよ?と思っていた。そんな空気を察したのか、メーカーは新たに4ケタの数字の前にわざわざSUVと付けた。にもかかわらず、クルマはぐっと都会的になった印象である。

先代は2016年に大掛かりなマイナーチェンジが施され、その時外観だけでなく性能面でも大きく手を入れられて、今に通じるアイシン製のフルオートマチック(当時は6速だった)が採用され、「ピュアテック」にはターボが付いて性能が俄然引き上げられ、さらにグリップコントロールなる、悪路に入った時でもしっかりとしたトラクションが得られる機構を装備。そして決定的だったのは、グッドイヤー製 ベクター4シーズンズというオールシーズンタイヤが装着されていたことだ。

ここまで来るとかなりオフロードを意識した仕様だということがお分かりいただけると思うが、当時のメーカーが作成したビデオを見てもかなりのオフロードを平然と走り抜ける姿が映し出されて、結構オフの意識が強かったことを想像させた。

しかし今回フルチェンジを果たしたモデルはグリップコントロールこそ従来通り「GTライン」に残されているものの、タイヤはオールシーズンからミシュランのプライマシー4に変更されて、ドライ、オンロード中心に改められている。グリップコントロールのスイッチも従来の仰々しいものから、コンパクトなスイッチに変更されて、その存在はごく控え目だ。

◆「アリュール」と「GTライン」の違い


先代モデルにおけるアリュールとGTライン最大の違いは、やはりこのグリップコントロールの有無。しかし、SUV全般にいえることは近年のモデルは一様に都会派が主流であって、敢えてオフロード仕様に拘るモデルが少なくなっている。だから、2008の変化もまさに時流に乗ったものと解釈してよいと思うわけである。

メカニズムを共有する『208』に試乗した時、アリュールとGTラインではその走りの違いを顕著に感じた。理由はタイヤサイズの違い。より小さなタイヤを装備するアリュールが明確に乗り心地が良く、GTラインはどしっとした力強さを感じたものだが、SUV 2008はどちらも同じミシュランプライマシー215/60R17のタイヤを装着していて、乗り味の違いはほぼ皆無。ただ、試乗してみるとホントにわずかながら、GTラインの方がよりハードなサスチューンとなっている印象を受けたが、単なる気のせいかもしれないレベルの違いである。

それでもグリップコントロール以外に、内装ではグリーンのアンビエントライトがダッシュボード全域でひかり、シートの素材も異なるし、ステアリングもGTの文字が入る革巻きステアリングとされているのがGTライン。エクステリアでも独特なサーベルライトの先に同じような斜めに入った3本のLEDラインが光るGTラインのフロントデザインは、それだけでカッコいいと感じさせるもの。明らかな違いがある。



◆どこを取っても破綻のない性能を持ちあわせている

208の時にも感じられた走りの印象だが、どこを取ってもこれといった非常に印象に残るという性能は持ち合わせていないのだが、レーダーチャートに関数を5つ取ってその点を結べば見事な五角形が完成しそうな、どこを取っても破綻のない性能を持ちあわせているのがこのクルマの特徴である。

勿論重心の低い208と比べたら、ロール剛性は低いしロール角も大きいが、それは当たり前で初めから織り込んで走る必要がある。恐らくオールシーズンタイヤからサマータイヤに変わったことで、オフロードの性能や雪道では少し性能劣化が見られると思う。何しろ、グッドイヤー・ベクターは東京の雪なら何の問題もなく走るほどのグリップ力を見せていたのは実体験済み。あの性能をドライタイヤで実現するのは無理だ。


インテリアのデザインと質感もまさに208そのもので、例の3D i-Cockpitのメーターはライバルの中でもとても先進的に映る。先代と比べほぼ一回り拡大したボディサイズによって、前後の居住性並びにラゲッジスペースには大きなゆとりが出来て、ファミリーでのアウトドアドライブなどには都合が良いはずだ。

ボンネットがほぼほぼ平らに前に伸びて、意図的に大顔を作り出すデザインとした結果、印象的にはとてもBセグメントのモデルには見えない。そんなところも日本人には受けるかもしれない。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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