第一印象は「なんて爽快なクルマなのだろう」だった。試乗グレードはシリーズきっての高性能モデル「M235i xDrive グランクーペ」。トップモデルということで車両本体価格は税込み665万円と張るが、こと走りのレベルにかけては、不満はまずないはずだ。
◆3シリーズより軽快で若々しいピュアな振るまい
搭載エンジンは直列4気筒の2リットルターボで306ps/45.9kgmの性能を発揮、これが『1シリーズ』などFFモデルと共通で横置きで搭載される。ただしモデル名に「xDrive」とあるとおり、駆動力は適宜4輪に分散される。しかも「M」ということだから、さぞTo muchなパワフルさに手を焼くのでは……と予測していたのだが、実際には呆気ないほどサラリとした走りを見せた。
もちろん然るべき場所で、気合いを入れて走らせれば手応えはひとしおだろうが、一般道を走らせている限り「普通の乗用車感覚」でのドライブが可能。ただしコンパクトな部類のボディと、緻密にコントロールされているであろうトラクション、シュアーなハンドリングにより、コーナーをひとつ抜けるだけでも、シャープだけれど意のままの感覚の身のこなしが味わえる。
ハンドリングはBMWの十八番でもあるが、たとえば上級の『3シリーズ』はしっとりとしたコクを感じるのに対し、このクルマは、ヒタッと路面にクルマを安定させながらも、軽快でより若々しいピュアな振るまいが特徴といったところか。
◆後席は外観から想像するよりも余裕の空間
乗り心地はごく低速で硬さはあるものの、走り出してしまえばスムースに感じる。乗用車としてもちろん実用になる。後席は外観から想像するよりスペースがあり、足元は十分で、天井も巧みに頭上を窪ますなど形状が工夫され、空間を稼いでいる。
ドライバーズシートはバケット風で、座ると、決して束縛感を感じることなく、1度決めた姿勢をしっかり保持し続けてくれるタイプ。メーターは最新のBMWの慣わしどおりのデジタル式だが、シフトまわり(パドルシフトも付く)やモード切り替え、空調関係などの物理スイッチが案外と残されており、初対面でも操作にまごつかないのがいい。
トランクは独立式で、床部分を見ると床板を1枚置けそうな形状にも思えるが、高さ、幅、奥行きとも十分に実用的な大きさが確保されている。より手ごろな他グレードの走りっぷりも気になるところ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
【BMW 2シリーズグランクーペ 新型試乗】3シリーズより軽快でピュアな走り…島崎七生人
2020年11月10日(火) 12時00分
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