1850mm。どこのイケメンモデルですかと尋ねたい背の高さに、心はときめくばかりである。運転席に座るときもハンドグリップを握ってよじ登らないといけないなんて、アトラクションはもうここから始まっているのだ。
◆常識の枠に収まっているんだか、はみ出しているんだか
車内を見渡すとロールバーが入っているかのようにクルマの骨格があって武骨なくせに、シートは優しさ満載のふかふか。ギャップ萌えだ。
運転席に座って前を見ると、フロントウィンドーはすごい横長比率。ゆえにこんなに背が高いクルマのくせに、印象は“広い”というよりむしろ“狭い”。期待を裏切りまくるアンバランスが好奇心をそそるったらないのである。
前方に見えるのは、ほぼ水平に伸びたボンネットフード。でもその先に黒いバンパーが異常なほど出っ張っていることを忘れてはならない。油断をするとガリガリとこすることになるのだが、いや、元々バンパーとはその名の通りぶつけるためにあるのではなかったか。ガリガリやってくれたまえと言わんばかりの存在感に心温まる思いだ。
一方、後ろはバックビューモニターがあるため、安心して車庫入れができる……と思いきや、こちらもバックビューモニターには映らない背中にタイヤをしょっているため、壁状の駐車場ならタイヤをぶつけかねない。常識の枠(この場合、駐車場の枠と言うべきか)に収まっているんだか、はみ出しているんだか、よくわからない天然ぶりである。
◆一日乗れば、ゆるさ加減に体のリズムがあってくる
背の高さとワイルドなデザイン、荒れた道を走るというコンセプトから、さぞやハンドルはゆるゆるな反応かと思いきや(実際、先代まではそうだった)、思いのほかちゃんと向きを変えてくれる。ハンドルをきると頭がしっかりついてきて、ぐいぐいコーナーをクリアするのである。
今回、試乗したルビコンは、3.6リットルエンジンなのだが、このもりもりトルクがなんとも頼もしい。8ATと合わさって、滑らかというか、生々しいというか、リアルというか。
柔らかいサスペンション、柔らかいシート、ルビコンはキャラメルみたいなパターンのオフロードタイヤなので、ぐにゃぐにゃな乗り心地。ついでに、ボディはその柔らかさをいなすがごとく、常にギシギシ音をたてていて、なんともはや。でも、それらをまとめてぐいぐいと前に押し出していくエンジンが、やっぱり惚れ惚れするほどいいのである。
オリコウなクルマに慣らされた身には、この感覚は、違和感でしかない。けれど、一日も乗っていると、ゆるさ加減に体のリズムがあってくる。それはものすごく楽しい感覚で、はまったら抜けられない魅力なのである。
★はどうしても、減らせませんでした!
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。
【ジープ ラングラー 新型試乗】期待を裏切りまくるアンバランスがたまらない…岩貞るみこ
2020年08月31日(月) 12時00分
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