三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》

今回試乗した『eKクロススペース』は、ターボエンジンを搭載する「T」グレードの2WD。車両価格は185万9000円で、「先進安全パッケージ」や「先進快適パッケージ」などメーカーオプションが計50万6000円、ディーラーオプションがカーナビゲーションをはじめ計34万8898円という仕様。合計すると実に271万3898円だ。

最近ではあまり珍しい話でもなくなってきたものの、軽自動車で270万円超と聞くと、やはり気にならないわけはない。はたしてどんなクルマなのか…?

◆インパクト満点のルックス


約1年前に登場した『eKクロス』もなかなか存在感のある印象的なルックスだったが、eKクロススペースも同じく見た目のインパクトは満点だ。兄弟車である日産版の『ルークス』にはない「ナチュラルアイボリー×サンシャインオレンジメタリック」のボディカラーも、このデザインによく似合う。

いかにも車内が広そうに見える天地方向に長いフォルムながらも、ウインドウ形状やキャラクターラインが工夫されていてあまり間延びして見えることもない、スキのないデザインだと思う。

フロントフェイスもeKクロスと似ているが、ヘッドライトが『デリカD:5』のような低い位置ではなく一般的な位置とされたほか、アダプティブLEDヘッドライトが新たに設定されたことをお伝えしておこう。

◆650mmの大開口スライドドアと、脅威の320mm後席スライド


肝心の両側スライドドアは、開口幅が従来比で95mmも拡大されて650mmとなり、加えて運転席側にもプラス5万5000円でハンズフリー機構が設定されたのが新しい。車内は本当に広々としていて、後席スライド量が320mmとクラストップに達したおかげで、よりその恩恵を享受できる。最後端にすると大人が乗っても驚かずにいられないほどの広さとなり、最前端にすると子どものケアがよりしやすくなった。

インパネまわりの収納スペースも非常に充実していて便利に使えそうだ。軽自動車ながら合成皮革やソフトパッドを多用した「プレミアムインテリアパッケージ」の質感の高さも、これまたインパクトがある。5万5000円のプラスでこの仕上がりなら、選ばない手はない。

前席はセパレートシートとベンチシートが選べるというのもユニークだ(※組み合わせの制約あり)。さらに4万4000円の「後席パッケージ」を装着すると、後席の快適性や荷室の積載性が向上する。ナノイーからプラズマクラスターになった後席用サーキュレーターがコンパクトになり、従来よりも出っ張りが小さくなったのもありがたい。

また、従来型より採用しているデジタルルームミラーの表示機能が増えたり、タッチパネル式のオートエアコンコントローラーが使いやすくなったのも新型の進化点だ。




◆「よくぞここまでまとめた」一体感のある走り


内外装デザインや装備の充実ぶりを見るにつけ、さすがはちょっと高いだけのことはあると感じた次第なのだが、ドライブしてもその印象が変わることはなかった。乗り心地は十分な快適性が確保されていながらも、15インチタイヤやチューニングにこだわったという電動パワステも効いてか操舵応答性がよく、走りにはほどよい一体感がある。

ステアリングをやや素早く切り返したり、横Gのかかりそうなコーナリングをあえて試しても、適度にロールしながらクルマのほうで内輪側と外輪側のバランスを巧くとってくれるような感覚で、危なっかしい動き方をすることもなくスイスイと曲がっていく。重心が高くトレッドの狭い、一見するといかにも走りに不利なパッケージングながら、よくぞここまでまとめたものだと感心させられる。

最高出力64ps/5600rpm、最大トルク100Nm/2400〜4000rpmを発生するターボエンジンは、期待どおりのパワフルな走りを体感させてくれる。やや飛び出し感があることと、アクセルのオンオフで微妙にカクカクするのが気にならなくもないのだが、やはり絶対的な加速の力強さは魅力。瞬時にシフトチェンジをこなすパドルシフトを操る楽しさもある。さらには、全車に搭載されたマイルドハイブリッドも、縁の下の力持ちとして効率のよい走りに寄与していることに違いない。

◆ひときわ異彩を放つ軽スーパーハイト


余裕のある動力性能のおかげで、高速巡行でもストレスを感じることはない。パワートレイン系の透過音も抑えられていて静粛性もまずまず。そして「マイパイロット」をONにすると車線を維持して走れるよう支援してくれるので、疲労も小さくてすむ。ACCが全車速域に対応しているのも助かる。

再発進がもう少し俊敏だとなおありがたいところだが、ある程度車速がのってしまえば問題ない。前走車との車間距離を保つ機能についても心なしか既出車よりも改善されたようで、あまりもたつきを感じさせなくなっている。

十分すぎる広さと利便性はもちろん、個性的なスタイリングや他社がまだやっていないいくつもの装備までも身につけた、いわゆる「全部載せ」の1台。人気が高く強力なライバルの居並ぶ軽スーパーハイトワゴンの世界でも、eKクロススペースはひときわ異彩を放つ存在である。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》