マツダ CX-30《撮影 中野英幸》

◆あくまでも前席を優先したSUV

『CX-30』は、エンジンやプラットフォームを『マツダ3』と共通化している。SUVに分類され、最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)も175mmを確保したが、全高は立体駐車場を使いやすい1540mmに抑えた。マツダ3のファストバックをベースに、室内を少し拡大した印象を受けた。


ファミリーカーとしても使えるが、身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ1つ半だ。着座位置が高めで窮屈ではないが、広々とした印象も受けない。あくまでも前席を優先させている。

エンジンは直列4気筒2リットルガソリン、1.8リットルクリーンディーゼルターボ、2リットル SKYACTIV-X(スカイアクティブX)を選べる。今回はガソリンとディーゼルを試乗した。

◆ガソリン&ディーゼルのフィーリング


ガソリンはパワフルではないが、2000回転前後でも駆動力の落ち込みが抑えられて運転しやすい。4000回転を超えると吹き上がりが少し活発になり、エンジンを回す楽しさも味わえる。

前輪側の荷重はディーゼルに比べて50〜60kg軽く、操舵した時の動きに軽快感が伴う。カーブを曲がっている最中に危険を避ける操作をしても、挙動の乱れが少ない。乗り心地は、街中を時速40km以下で走ると少し硬めに感じるが、不快感はない。

ディーゼルは実用回転域の駆動力が高く、吹き上がりも相応に良い。峠道などを走ると、4500回転付近まで回ることもある。1400回転以下では駆動力が落ち込むが、ATはこの回転域を使わないようにシフトしている。



◆運転の好きなユーザーに適したSUVだ

ディーゼルの走行安定性は、ガソリンに比べて少し下がる。滑らかに良く曲がるが、後輪の接地性が若干下がりやすい。しかし峠道ではアクセル操作で車両の向きを適度に変えられて、運転を楽しめた。このあたりは走りを熟成させたSUVの特徴で、重心の高さを上手に活用している。

CX-30はSUVと呼ぶには野性味と個性が乏しいが、マツダ3に比べると視界が良く、開放感があって運転感覚も馴染みやすい。運転の好きなユーザーに適したSUVだ。

またマツダ3の走りは好きだが、閉鎖感の伴う車内や個性的な外観が好みに合わない場合、CX-30を試乗すると良いだろう。幅広いユーザーがマツダ車の良さを味わえる手頃なクルマに仕上げている。



■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

渡辺陽一郎|カーライフ・ジャーナリスト
1961年に生まれ、1985年に自動車雑誌を扱う出版社に入社。編集者として購入ガイド誌、4WD誌、キャンピングカー誌などを手掛け、10年ほど編集長を務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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